2023年11月6日(月)
イベント・講座
正倉院展特別公開講座「正倉院展を深く味わう2023」を開催しました
毎年、正倉院展の開催期間に合わせて本学が実施する正倉院展特別公開講座。奈良に立地する大学として2006年から始めた本講座は、今年で18回目を迎えます。
11月2日(木)、東大寺総合文化センター金鐘ホールにおいて、今年の正倉院展特別公開講座「正倉院展を深く味わう2023」を実施し、本学客員教授の西山厚先生が講演を行いました。講座では、正倉院宝物の概要に続き、今年の出品物からピックアップされた宝物が豊富な写真資料とともに紹介されました。
数多くの宝物の中から紹介されたのは、「国家珍宝帳」で最初に掲載されている宝物「九条刺納樹皮色袈裟(くじょうしのうじゅひしょくのけさ)」。天皇として初めて出家した聖武天皇が愛用していたものです。民人が着古した着物のボロ布を縫い合わせて作った衣をまとって修行する僧侶にならい、その風合いを表現するために、絹布に青や緑の絹の断片がパッチワークのように縫い付けられています。
「楓蘇芳染螺鈿槽琵琶(かえですおうぞめらでんのそうのびわ)」は紫檀に似せた楓で作られた四弦の琵琶。螺鈿装飾にはアワビが使われており、文様の中央には「東大寺」の刻印があります。西山先生は「日本独特の美意識である、余白の美がこの琵琶にはある」と指摘し、「一方で、平螺鈿背円鏡(へいらでんはいのえんきょう)には一面に細工が施されている。この華麗さが中国の美意識」と解説しました。
出陳される宝物の詳しい解説だけでなく、奈良国立博物館で30年以上にわたり正倉院展に携わった西山先生ならではの宝物の秘話が次々に披露されました。柔らかな口調で語られる正倉院宝物の知られざる物語に、150人を超える参加者が聞き入りました。