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2011年10月31日(月)

お知らせ

人文学部日本文化学科学生・院生が滋賀県甲賀市甲賀町櫟野で民俗調査を行いました

 

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人文学部 日本文化学科学生8名及び大学院人文科学研究科 日本伝統文化専攻院生2名が、10月22日から23日の2日間にわたって、赤田光男教授(滋賀県文化財保護審議会委員)の指導のもと、滋賀県甲賀市甲賀町櫟野の民俗調査を実施しました。今回の民俗調査は、「滋賀県民俗行事まるごと調査」の取組の一環として滋賀県教育委員会教育長の依頼により実現したものです。(滋賀県教育委員会では従前から県内各地の民俗調査を行い、記録作成を行っており、「滋賀県民俗行事まるごと調査」では、昭和52、53 年に調査した場所を再び調査し、現在の状況を記録し、民俗文化の変容の実態を明らかにしようとしています。)

 

初日の22日は、櫟野区長や地元の方々の案内のもと、住民の生活や文化と密接な関わりがあるグリーンハウス櫟野と櫟野川砂防ダムの視察を皮切りに、農事組合法人甲賀エコファームいちのの施設見学を行いました。開帳中の秘仏十一面観世音(重要文化財)や、田村毘沙門天(重要文化財)など数多の平安時代の仏像を有する櫟野寺、櫟野区の旦那寺であり両墓制の習俗が色濃く残る阿弥陀寺、そして山での作業の無事安全を祈る山の神など集落内を歩いてまわりました。

その後、古くから朝廷の崇敬が厚く、甲賀の総社と敬われ、油の火の神として信仰も厚い油日神社や、竹竿の先端に付けた造花(=花鉾)を奪い合う大原祗園で有名な大鳥神社の2社の氏神を見学。そして夜には、「神と仏をまつるしきたり」と題して、赤田教授が大原祗園会や油日祭りなど具体例を挙げながらこの地域にまつわる神々や仏について講演し、翌日からの聞き取り調査に備えました。 

長老からの聞き取り調査DSC01929.JPG2日目の23日には、櫟野区の長老にお集まりいただき、いよいよ聞き取り調査を実施しました。

まず初めに赤田教授が「聞き取り調査」のお手本を披露し、住宅地図をもとに、上、中、下と地区の境界線を確認した上で、村落組織や、正月行事や中秋の名月に関わる行事など年中行事について、昭和53年の調査結果にもとづきながら聞き取り調査を行いました。そしてその後、学生らが「年中行事」「人生儀礼」「民間信仰」について3班に分かれて、聞き取り調査を実施しました。

聞き取り調査を振り返り、これまでに何度も民俗調査を行っている人文科学研究科日本伝統文化専攻1年の大森拓也さんは、「いつもの調査と違い、学部生をリードする立場での参加は新鮮。両墓制についての知識はあったが、埋め墓を実際に見たのは初めてで、驚きと畏怖を感じた。」、現在、南河内地域の民間信仰について研究をしている日本文化学科3年の春田千尋さんは、「大阪や奈良とは異なる山の神信仰について聞くことでき、山の神の祭りを中心に地域の強い絆を感じた。ここの民間信仰は自然信仰が多いので、仏教の影響が強い南河内地域の信仰と比較してまとめたい。」と話していました。

今回の調査結果は、大学でまとめたあと、滋賀県教育委員会に提出されます。民俗学を指導する赤田教授は、「民俗学はフィールドワークなくしてありえない。フィールドワークを行うたびに地域の新しい文化を知ることが出来る。今回の調査を通して、古老の伝承を論文化する力を身につけてもらいたい」、滋賀県教育委員会事務局 文化財保護課の矢田主任技師は、「滋賀県民俗行事まるごと調査では、若い人の視点をということで、今回大学生に調査を依頼した。実際に現地に入って地元の人からお話を聞くという機会はなかなかないと思うので、この機会を最大限に活かしてもらえれば」と期待を寄せていました。 

人文学部では、このほかにも学外実習他様々な取組を行っています。詳しくは、こちらから。

※両墓制(りょうぼせい)とは、遺体の埋葬地と墓参のための地を分ける日本の墓制習俗の一つである。

調査に向かう

「山の神」にまつわる信仰について学ぶ

年中行事についての聞き取り調査の様子。「雑煮の材料は何か?」「高灯籠はいつたてるか?」と地域の行事を一つひとつ確認していきます。

冠婚葬祭についての聞き取り調査の様子。大正、昭和、平成と3つの時代を生きた長老から語られる思い出話を交えたエピソードに、思わず笑みがこぼれる一幕も。