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2024年4月2日(火)

プレスリリース

【プレスリリース】「古都華」「珠姫」など奈良県産のイチゴの特徴を AIが正確に判別  官能評価や新品種開発支援でのAI活用に可能性

帝塚山大学(学長:奥村由美子 所在地:奈良市帝塚山7-1-1)現代生活学部食物栄養学科の藤村太一郎教授(専門:食品科学)が、AI学習型分析機器を用いて、「アスカルビー」「古都華」「珠姫」「奈乃華」「ならあかり」の5種類の奈良県産イチゴについて官能評価を行い、その分析値がヒトによる官能評価と同等の結果を示すことを明らかにしました。((株)野村事務所との共同研究により実施)

【本件のポイント】
■AIにより奈良県産イチゴ5種類の官能評価モデルを作成。パネリストの官能評価の結果と同等の結果を示した。
■パネリスト個人の能力に左右されやすい官能評価にAIを活用できる可能性、およびイチゴの新品種開発や育種改良に分析データを活用できる可能性が示唆された。

【本件の背景】
 イチゴの品種改良、品質、嗜好性の評価において、パネリストによる官能評価は重要な検査法として認知されています。しかし、実際に食品を試食し、味や香り、食感などを数値化するこの方法は、評価者自身の経験知の影響が大きいこともあり、より正確で効率的な評価方法が求められている状況です。
 スライスした中心部のイチゴ,潰したイチゴ,ミキサーにかけたイチゴ( 1~2個ずつ) およびミキサーにかけたイチゴ( 1パック 500 g)の4種類をAI学習型分析機器ProfilePrint(図1,ProfilePrint Pte. Ltd.,シンガポール)で分析し、17人のパネリストによる官能評価の結果と比較。95.8%という、もっとも高い正確性を示したスライスしたイチゴ(表1)について、再度測定と解析を行いました。
 その結果、これらのプロセスで構築できたモデルは、AIに学習させていない「古都華」のデータを「古都華」であると100%認識し判定できました。また、学習させていない「古都華」のデータから予測したイチゴの官能プロファイリングと、ヒトによる官能評価が総じて近い値を示すこともわかりました。
 本研究により、奈良県産の5種類のイチゴについて、AIを用いた官能評価が可能であることが示唆されました。今後、AIをさらに学習させ、データの再現性を検証することで、官能評価におけるパネリストの負担軽減のほか、データをもとにした新品種の開発、育種改良などにAIを活用できる可能性が高まりました。

報道発表全文はこちら

※本研究の成果は、2023年の8月、日本食品工学会第24回年次大会(東京)で発表し、4月には、「帝塚山大学現代生活学部紀要」(第20号)に原著論文として大学HP上に公表される予定です。(ヒトによる官能評価は、帝塚山大学研究倫理委員会の審査にて承認を得て、成果公表に至りました)なお、奈良県産イチゴは、奈良県農業研究開発センター育種科からご提供いただきました。

【本件に関するお問い合わせ】入試広報課 Tel 0742-48-9149

図1 ProfilePrint

表1 AIにより分析した種類ごとのイチゴのデータ