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2023年12月15日(金)

プレスリリース

【プレスリリース】絵馬から浮かび上がる源義経と今井兼平の因縁!? 今井堂天満神社の最古の絵馬から図像を復元 附属博物館特別展示で12日から限定公開

 帝塚山大学(学長:奥村由美子 所在地:奈良市帝塚山7-1-1)考古学研究所(所長:清水昭博)と本学の文学部の学生および人文科学研究科の大学院生が、2022年度に実施した今井堂天満神社(奈良市日笠町710)での古絵馬調査で発見された同社最古の絵馬(寛政6/1794年)の図像を復元し、本学の附属博物館で開催中の第41回特別展示『田原の絵馬 -奈良市日笠町今井堂天満神社の絵馬-』で12月12日(火)から限定公開しています。(同展示は23日(土)まで)
 また、同社における古絵馬調査と奉納絵馬の制作、および寛政6年銘絵馬の図像復元に関する成果報告を、12月16日(土)、第506回市民大学講座 「田原の絵馬-奈良市日笠フシンダ遺跡と今井堂天満神社-」(清水昭博 帝塚山大学考古学研究所所長・附属博物館館長)において実施します。

今井堂天満神社所蔵「安宅の関」図絵馬関連展示&講座
第41回特別展示『田原の絵馬 -奈良市日笠町今井堂天満神社の絵馬-』
開催期間:~12月23日(土) 午前9時30分~午後 4時30分
休館日:日・祝 場所:帝塚山大学付属博物館 入館料:無料

第506回市民大学講座
「田原の絵馬-奈良市日笠フシンダ遺跡と今井堂天満神社-」

講師:清水 昭博 (帝塚山大学考古学研究所長・附属博物館長)
日時:2023年12月16日(土)14:00~15:30
会場:帝塚山大学 東生駒キャンパス 1号館1301教室(奈良市帝塚山7-1-1)
受講料:無料

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今井堂天満神社の最古の絵馬を発見
わずかな凹凸を手がかりに線画を作成

 帝塚山大学考古学研究所が2022年度に実施した今井堂天満神社(奈良市日笠町710)が所蔵する184点の古絵馬調査において、同社でこれまで最も古いとされていた文政元(1818)年の絵馬よりも古い寛政6(1794)年銘絵馬が見つかりました。
 この寛政6(1794)年銘絵馬は風化が進み、下地の白色顔料やベンガラと思われる赤色顔料がわずかに残っているのみで、赤外線撮影でも図像が読み取ることができませんでした。そのため、部屋を真っ暗にした状態で絵馬に強い斜光線を当て、かすかに残る線や図像の細かな凹凸を確認しつつ図化を試みました。

描かれているのは「安宅の関」
類似絵画などから図像の推定を行うも謎が深まる

 絵馬に描かれているのは、中央に地面に伏した人物とその人物を棒で叩く人物、さらにその光景を見守る人であることが判明。歌舞伎の『勧進帳』などに登場する武蔵坊弁慶と源義経による「安宅の関」の場面であると推測できました。その後、線画を起こし、「安宅の関」をモチーフに描かれたほかの絵も参考にしながら復元図像の彩色を行いました。

最後まで不明だった人物は?
浮かび上がる源義経との因縁

 「安宅の関」を描いたシーンとして、役割が比較的わかりやすい人1~人7(右:描き起こし図)に対し、絵馬の左端に配置された人(右図内の人?)と思しき図像については謎が残っていました。
 足の向きから、打ち据えられる義経に目を向けていないと想定され、能や歌舞伎などの舞台で観客向きに立つ亡霊のような存在を登場させたと考え、左端の人は今井堂天満神社にまつられる木曽義仲の乳兄弟、今井兼平の亡霊であると推測。伝承では奈良で義経を討とうとしたとされる今井兼平。その因縁の深さを示すかのように、奥州に逃れんとする義経一行を眺める亡霊として奉納絵馬に描かれた可能性が高いと結論づけました。

 本復元絵図は、本物の「安宅の関」図絵馬(寛政6(1794)年(横147.7×縦80.0㎝)の約3分の1スケールで再現。アクリルガッシュを使用し色鮮やかに当時の図像が表現されています。この復元図は、特別展示での限定公開後は、今井堂天満神社への奉納を予定しています。

「安宅の関」図 絵馬(寛政6/1794年)

書き起こし図