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2017年10月10日(火)

生駒市図書館との共催講座「明恵と善妙 ある愛の物語」を開催しました

帝塚山大学・生駒市図書館が共催する公開講座が10月4日(水)、生駒市図書館で開催されました。この講座は、本学と生駒市図書館が連携して開いている講座で、今年で29年目を迎えます。 今回は、本学文学部文化創造学科の西山厚教授が「明恵と善妙 ある愛の物語」と題した講演を行いました。

講演で、西山教授はまず、明恵上人の業績や人物像についてエピソードを交えながら説明しました。鎌倉時代の高僧である明恵上人は、1206年京都・栂尾(とがのお)に高山寺を創建し、華厳宗の興隆に力を尽くしました。明恵上人は8歳のときに両親を亡くし、仏教の修行を通して、釈迦を父、また、仏眼仏母を母として慕うようになりました。明恵上人のエピソードとして、釈迦に対する憧れの気持ちが高じて仏眼仏母像の前で右耳を切り落とそうとしたことや、釈迦を供養する涅槃会(ねはんえ)でその死の場面を想像し息が詰まるほど泣いたという逸話を紹介し、「明恵上人は、歴史上の人物が今そこにいるものとして想像することができる愛情深い人だったのだろう」と話しました。

続いて、明恵上人が制作した、高山寺に伝わる国宝の絵巻『華厳宗祖師絵伝』を紹介。絵巻には、中国・唐の時代、新羅(しらぎ)から仏教の勉強に来た義湘に一目で恋に落ちた善妙が、帰国する義湘との別れを惜しみ、竜や大きな石に姿を変えてどこまでも義湘を守り続ける物語が描かれているといいます。この物語の元になったのは中国で書かれた義湘の伝記ですが、善妙を主人公とした絵巻の構成には、善妙のひたむきな姿を慕った明恵上人の気持ちが反映されていると解説しました。

西山教授は、明恵上人が絵巻に書いた「愛心なきはすなわち法器にあらざる人なり(愛の心のない人には仏法を受け入れる素質はない)」という詞書を紹介し、「本来、仏教で愛は執着の心とされるが、明恵上人は愛の心を持つ善妙こそ真の仏法がわかる人だとたたえた。釈迦への思慕の先に仏法の道を見た明恵上人は、身を変えて好きな人を守り続ける善妙に自分自身を重ね、愛したのだろう」と千年の時を超える愛の物語について語りました。

今回の講座は、約190人に受講いただきました。受講者からは、「明恵上人の人柄がわかり、善妙への愛の心を感じることができました」など、さまざまなご感想を頂きました。

約190人に受講いただきました

「明恵の横顔に似ていると言われます」と、ユーモアのある語り口で受講者を魅了

『華厳宗祖師絵伝』に描かれている善妙

善妙が竜に変わり義湘の航海を守る様子を解説する西山教授