帝塚山大学出版会
書籍の紹介
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「寺院」という言葉を耳にしたとき、「・・・派」というように宗派などの区分けを思い浮かべることが多いかもしれません。
わが国では、仏教の伝来により寺院の建立がはじまりました。七世紀に営まれた寺跡の中には、二つの寺が近接して営まれたものも認められ、おそらく僧寺と尼寺という一組で建立されたものと考えられます。
日本の古代寺院の僧尼は、西洋の修道院の僧とは異なる精神性や文化をもち、わが国の僧寺と尼寺は、それぞれが、それぞれにしかできない方法で国や人々を守ってきたのです。
本書は、わが国に仏教が入ってきた当初からの寺院、僧尼の存在と、古代寺院の内なる面に視点を投じるとともに、僧寺と尼寺の違いとは何なのか?という疑問を解明しながら、日本人の根底にある寺院や僧尼に対する尊敬のまなざしを見つめます。
まえがき
第一章 仏教導入の諸事情
一 朝鮮半島への仏教伝来
高句麗 百済 新羅
二 日本への仏教伝来
仏教伝来前後 わが国古代における仏教観
第二章 飛鳥時代の尼寺
一 初期の僧寺と尼寺
飛鳥寺 法隆寺 豊浦寺 中宮寺
二 その後の尼寺
坂田寺 橘寺 法起寺 葛城尼寺 奥山廃寺 某尼寺
第三章 近接した二寺
一 尼寺廃寺
北廃寺 南廃寺
二 加守廃寺
北遺跡 南遺跡 官の関わり
第四章 盛んな寺院建立
一 寺院造営の奨励
鎮護国家思想の高まり
二 四系統の軒瓦の分布
三 各地での寺院建立
近江 河内 播磨・摂津・讃岐 その他の国々
四 女性の関わった寺院
坂田寺 興福寺 岡寺 粟原寺 夏見廃寺 新薬師寺 観世音寺
第五章 国分寺造営
一 国分寺造営詔
天平という時代 国分寺造営の詔 詔に見られる矛盾 聖武天皇の心情 拠った経典
二 盧舎那仏造像
造像の契機 黄金産出
三 造営の技術
基壇築成 掘込地業 基壇外装
四 国司の立場と責任
督促の詔 山背国司 尾張国司 三河国司 遠江国司 駿河国司 陸奥国司
越中国司 佐渡国司 伯耆国司
五 国分寺の伽藍
伽藍配置 塔をもたない寺 金堂 塔
六 瓦から見た国分寺
尾張国分寺 三河国分寺 遠江国分寺 駿河国分寺 相模国分寺 武蔵国分寺
上総国分寺 上野国分寺 下野国分寺 陸奥国分寺 信濃国分寺 伯耆国分寺
美作国分寺 備中国分寺 安芸国分寺 紀伊国分寺 淡路国分寺
七 国分寺における問題点
郡司階層の関わり 国分寺の完成時期 国分寺図の頒布
第六章 聖武天皇の東大寺
一 盧舎那仏造像
平城還都 東大寺前身寺院
二 東大寺造営
大仏殿建立 塔・講堂 東大寺の瓦
第七章 光明皇后の法華寺
一 藤原不比等邸
皇后宮から宮寺へ 法華寺の造営 塔の建立
二 光明皇后の慈善行為
悲田院・施薬院の設置 仏教への帰依
第八章 称徳天皇の西大寺
一 恵美押勝の乱
寵臣藤原仲麻呂と道鏡の台頭 仲麻呂の謀反
二 西大寺造営
造西大寺長官佐伯今毛人 堂塔の建立 随所に見られる特殊な要素 木造百萬塔の製造
第九章 称徳天皇の西隆寺
一 西隆寺の造営
造西隆寺長官の任命 軍事機構の関わり
二 西隆寺跡の発掘調査
金堂 塔・回廊 伽藍配置
第十章 行基建立の僧寺と尼寺
一 土塔の造営
土塔の文字瓦 土塔造営
二 寺の造営
尼院の建立 隆福寺と隆福尼院
第十一章 女帝・皇后の尼としての心
一 推古天皇・皇極天皇の仏心とけじめ
推古天皇 皇極天皇 持統天皇の慈悲
二 平城京時代を担った女帝の仏心
元明天皇 元正天皇 光明皇后の真のほとけ心 孝謙天皇の純粋と世俗のはざま
あとがき