帝塚山大学出版会
書籍の紹介
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これまで、憲法学において、結婚、家族、子どもの権利等については議論されてきましたが、結婚以外の親密な人間関係となると、それがどこまで憲法上保護されているのか、そのような人間関係にある者達に保障されるのはどのような行為か、という点については十分な議論がなされてきませんでした。本書では、これらの行為が日本国憲法上どのように位置づけられるのかについて、以下のとおり、検討を重ねていきます。
■ アメリカにおける「性的プライバシーの権利」に関する検討(第1章)
親密な人間関係にある者達が行う行為である性行為について
・保護されるためにどのような要件が求められるのか
・いかなる人間関係にある者達までが保護されるのか
■ アメリカにおける「親密な結合の自由」に関する裁判例、学説の検討(第2章)
親密な人間関係そのものの保護、すなわち、親密な人間関係に入り、維持することの保障について
・どの程度の人間関係にまで及ぶのか
・日本国憲法下においてはそれがどのように位置づけられるのか
■ アメリカにおける「同性婚」の問題(第3章)
親密な人間関係そのものの保護について
・同性愛者にも及ぶのか
・日本国憲法下においてはそれがどのように位置づけられるのか
■ 日本国憲法13条に位置づけられる「プライバシーの権利」についての検討(第4章)
・「プライバシーの権利」とはいかなる権利であるのか、それによって何が保障されるのか
・親密な人間関係にある者達のいかなる行為が保障されることになるのか
■ 日本国憲法13条に位置づけられる「自己決定権」と呼ばれる権利についての検討(第5章)
・「自己決定権」とはいかなる権利であるのか
・「自己決定権」に分類される権利にはどのような権利があるのか
・親密な人間関係にある者達のいかなる行為がここに分類されることになるのか
以上の検討を通じて、憲法によって保護されている親密な人間関係とはいかなる関係か、そのような人間関係にある者達に対して保障されているのはどのような行為か、それらは日本国憲法上のどの条項に位置づけられるのかについて明らかにします。それと同時に、これまで必ずしも憲法上の位置づけが明らかではなかった「性行為の自由」や「同性婚」、また様々な意味で用いられることの多い「プライバシーの権利」や「自己決定権」の概念など、個別的論点についても明らかにします。
はしがき
はじめに
第1章 性的プライバシーの権利
第1節 Bowers v. Hardwick 以前の状況
1 連邦最高裁
2 下級審の対応
第2節 Bowers v. Hardwick とその後の状況
1 Bowers v. Hardwick
2 下級審の対応
第3節 憲法上保護される性的プライバシー
1 親密性
2 非公然性
第4節 小括
第2章 親密な結合の自由
第1節 連邦最高裁
1 私的クラブに関する判決
2 その他の判決
3 評価
第2節 連邦控訴裁
1 結婚に関する判決
2 その他の判決
3 評価
第3節 学説の状況
1 Karst の見解―「親密な結合の自由」論の生成
2 Udell の見解―「ハイブリッドな権利」説
3 Skinner の見解―修正1条説
4 若干の検討
第4節 日本法への示唆
第5節 小括
第3章 同性婚
第1節 定義的アプローチ
1 1970 年代の3 つの判決
2 評価
第2節 実体的アプローチ
1 同性婚に否定的な判決
2 同性婚に好意的な判決
3 評価
第3節 若干の検討
1 同性婚の憲法上の位置づけ
2 日本法への示唆
第4節 小括
第4章 プライバシーの権利
第1節 問題の所在
1 1964 年の2つの判決
2 最高裁と「プライバシーの権利」
3 本章の目的
第2節 最高裁判例の射程
1 最高裁判例の軌跡
2 評価
第3節 「プライバシーの権利」の定義
1 学説の状況
2 下級審裁判例の傾向
3 若干の検討
第4節 保護される情報の内容
1 私生活情報
2 人権関連情報
3 その他の個人情報
第5節 小括
第5章 自己決定権
第1節 人格的利益説
1 佐藤幸治教授の見解
2 芦部信喜教授の見解
3 評価
第2節 一般的自由説
1 戸波江二教授の見解
2 阪本昌成教授の見解
3 評価
第3節 「自己決定権」に批判的な学説
1 松井茂記教授の見解
2 棟居快行教授の見解
3 抱喜久雄教授の見解
4 評価
第4節 若干の検討
1 問題の所在
2 1つの権利としての特定性・明確性・同質性
3 「自己決定権」とは何か
第5節 小括
おわりに