学長、帝塚山大学

2021年7月28日

第11回 教育学部こども教育学科 ~子育て支援センターの遊具と絵本たち

子ども時代に遊んでいたおもちゃや親が読んでくれた絵本はいつまでも覚えていますね。小さい頃から馴染んでいる遊び道具や人形たち、さらには親しんだ絵本の数々を、大人になっても大切に保存している方も多いと思います。
遊具(遊びに利用される道具や設備)は、体を動かすことで運動機能を向上させ、心と体の成育を助けてくれます。自然の中での遊び体験はリスクを伴うため、つねに大人による安全確保が求められますが、よく考えられた遊具は、子どもの安全に配慮して開発されてきましたので、子どもたちが比較的自由に遊べるという長所があります。子どもたちは一人であるいは他の子どもたちや親、先生方と一緒に遊ぶことを通して、心身を成長させていきます。
また、幼いころ、まわりの大人たちが読んでくれた絵本で、私たちは少しずつ世界の成り立ちを理解していきました。ときには、主人公の気持ちになって、物語で出会う不思議な動物や人間と触れ合ったり、ときには怪物に驚いたりして、いつしか成長することができました。
「小学校教諭」「幼稚園教諭」「保育士」の3資格の取得、さらには教員の養成をめざしている教育学部こども教育学科は、他の大学施設とは道を挟んだ建物(学園前キャンパス18号館)で多くの授業を行っています。その一階にある「子育て支援センター(通称:まつぼっくり)」は、地域住民の子育て支援を推進するとともに、教員、学生の子育て支援に関する教育・研究の場として、多くの遊具や絵本を備えています。遊具や絵本の専門アドバイザーを、教育学部こども教育学科の清水益治教授(学部長:2021年時点)と徳永加代准教授にお願いしました。
図1は子育て支援センターにある円形に設置された遊具のコーナーです。子どもが安心して遊べるように、色々な遊具が集められています。左奥の丸が8つ並んでいるのは、SUZUKIミュージックパッドMP-8(鈴木楽器製作所)です。パッドを踏むとドレミの音が出ます。その下の椅子のように見えるのは「コアラ」と呼ばれる遊具で、座る、乗る、トンネルのようにくぐる、などさまざまに工夫を凝らして遊ぶことができます。製造元であるデンマークのGONGE社では、子どもたちが室内でもより活発に体を動かすことを目的に各種の遊具を開発して、高い評価を受けています。その手前にあるのが木製のトンネル(こどものとも社)、その右のワニの背のようなものはウェイブバランス平均台(都村製作所)です。都村製作所は香川県のスポーツ機器と遊具を手がけるメーカーですが、室内・室外を問わず、多種多様な遊具を開発販売しています。また、滑り台が2つありますが、奥が1~2歳児用(マスセット社)、手前は更に低年齢児用の木製すべり台(こどものとも社)です。
子育て支援センターには、そのほかにも個性的な遊具をたくさん揃えていますので、その一部を紹介しましょう。図2の上がデュシマ社の床置きのピラミッド型のおもちゃです。各面に小さな子どもが興味を持つような素材がたくさんついており、回したり、音を鳴らしたり、眺めたり、手を突っ込んだりと、発達段階に応じて子どもたちの触覚・視覚・聴覚を刺激してくれます。また、数人の子どもが同時に遊べるので、楽しそうです。図2下がクネクネバーン/トレインカースロープ(ベック社)の木製のおもちゃ。駆け下りるトレインを子どもが追視するのを促してくれます。
乳幼児期の環境にダイバーシティ(多様性)を組み入れる必要性は、世界で認識されています。世界中で使われている保育環境評価スケール(ハームスら)でも、「多様性の受容」という評価項目が取り上げられています。この項目では図3の写真のような人種の多様性を示す人形などが利用されています。多様な文化を示す民族衣装、色々な民族の調理や食事の道具が保育室にあることで評価が高くなります。教育学部こども教育学科においては、保育士や幼稚園教諭、さらに小学校教諭養成機関としての教育環境を向上させるためにも重要です。
センターでは絵本を用いた実習にも力を入れています。図4は学生たちによる手作り絵本の例です。図4上は絵本に付けられたキュウリなどの野菜を取ることができます。子どもたちも喜びそうです。図4下は絵本が丸くくり抜かれていて、顔を出して遊べます。
大型絵本も充実しています。図5上は大型絵本の収納スペースです。大型絵本の読み聞かせは大勢の子どもたちに対して行う保育活動ですので、発声のみならず、話のテンポや園児の観察などのスキル向上のために、充分な訓練が求められます。教育学部こども教育学科の学生が実施している実際の読み聞かせの場面を紹介しておきます(図5下)。
いかがでしたか。「子育て支援センター」の施設と遊具の一部を紹介しましたが、私たちは、子どもの安全を確保しつつ、成長を促す遊具や絵本が日本中で活用されていくことを願っています。さらに、「教育学部こども教育学科」を卒業された皆さんが保育園や幼稚園、小学校など様々な現場やご家庭で、遊具や絵本を用いて子どもの成長を促してくれることを期待しています。
参考文献
ハームス,T他(著);埋橋玲子(訳)(2016)『新・保育環境評価スケール①(3歳以上)』,(2018)『新・保育環境評価スケール②(0・1・2歳)』,(2018)『新・保育環境評価スケール③(考える力)』,法律文化社
杉上佐智枝(著)(2020)『絵本専門士アナウンサーが教える心をはぐくむ読み聞かせ』,小学館
児玉ひろ美(著)(2016)『よくわかる!絵本の選び方・読み方 0~5歳 子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』,小学館
絵本と読み聞かせの情報誌『この本読んで!』(季刊誌),メディアパル
宮里曉美(編)(2020)『触れて感じて人とかかわる 思いをつなぐ 保育の環境構成 0・1歳児クラス編』,中央法規出版

子ども時代に遊んでいたおもちゃや親が読んでくれた絵本はいつまでも覚えていますね。小さい頃から馴染んでいる遊び道具や人形たち、さらには親しんだ絵本の数々を、大人になっても大切に保存している方も多いと思います。

遊具(遊びに利用される道具や設備)は、体を動かすことで運動機能を向上させ、心と体の成育を助けてくれます。自然の中での遊び体験はリスクを伴うため、つねに大人による安全確保が求められますが、よく考えられた遊具は、子どもの安全に配慮して開発されてきましたので、子どもたちが比較的自由に遊べるという長所があります。子どもたちは一人であるいは他の子どもたちや親、先生方と一緒に遊ぶことを通して、心身を成長させていきます。

また、幼いころ、まわりの大人たちが読んでくれた絵本で、私たちは少しずつ世界の成り立ちを理解していきました。ときには、主人公の気持ちになって、物語で出会う不思議な動物や人間と触れ合ったり、ときには怪物に驚いたりして、いつしか成長することができました。

「小学校教諭」「幼稚園教諭」「保育士」の3資格の取得、さらには教員の養成をめざしている教育学部こども教育学科は、他の大学施設とは道を挟んだ建物(学園前キャンパス18号館)で多くの授業を行っています。その一階にある「子育て支援センター(通称:まつぼっくり)」は、地域住民の子育て支援を推進するとともに、教員、学生の子育て支援に関する教育・研究の場として、多くの遊具や絵本を備えています。遊具や絵本の専門アドバイザーを、教育学部こども教育学科の清水益治教授(学部長:2021年時点)と徳永加代准教授にお願いしました。

図1は子育て支援センターにある円形に設置された遊具のコーナーです。子どもが安心して遊べるように、色々な遊具が集められています。左奥の丸が8つ並んでいるのは、SUZUKIミュージックパッドMP-8(鈴木楽器製作所)です。パッドを踏むとドレミの音が出ます。その下の椅子のように見えるのは「コアラ」と呼ばれる遊具で、座る、乗る、トンネルのようにくぐる、などさまざまに工夫を凝らして遊ぶことができます。製造元であるデンマークのGONGE社では、子どもたちが室内でもより活発に体を動かすことを目的に各種の遊具を開発して、高い評価を受けています。その手前にあるのが木製のトンネル(こどものとも社)、その右のワニの背のようなものはウェイブバランス平均台(都村製作所)です。都村製作所は香川県のスポーツ機器と遊具を手がけるメーカーですが、室内・室外を問わず、多種多様な遊具を開発販売しています。また、滑り台が2つありますが、奥が1~2歳児用(マスセット社)、手前は更に低年齢児用の木製すべり台(こどものとも社)です。

子育て支援センターには、そのほかにも個性的な遊具をたくさん揃えていますので、その一部を紹介しましょう。図2の上がデュシマ社の床置きのピラミッド型のおもちゃです。各面に小さな子どもが興味を持つような素材がたくさんついており、回したり、音を鳴らしたり、眺めたり、手を突っ込んだりと、発達段階に応じて子どもたちの触覚・視覚・聴覚を刺激してくれます。また、数人の子どもが同時に遊べるので、楽しそうです。図2下がクネクネバーン/トレインカースロープ(ベック社)の木製のおもちゃ。駆け下りるトレインを子どもが追視するのを促してくれます。

乳幼児期の環境にダイバーシティ(多様性)を組み入れる必要性は、世界で認識されています。世界中で使われている保育環境評価スケール(ハームスら)でも、「多様性の受容」という評価項目が取り上げられています。この項目では図3の写真のような人種の多様性を示す人形などが利用されています。多様な文化を示す民族衣装、色々な民族の調理や食事の道具が保育室にあることで評価が高くなります。教育学部こども教育学科においては、保育士や幼稚園教諭、さらに小学校教諭養成機関としての教育環境を向上させるためにも重要です。

センターでは絵本を用いた実習にも力を入れています。図4は学生たちによる手作り絵本の例です。図4上は絵本に付けられたキュウリなどの野菜を取ることができます。子どもたちも喜びそうです。図4下は絵本が丸くくり抜かれていて、顔を出して遊べます。

大型絵本も充実しています。図5上は大型絵本の収納スペースです。大型絵本の読み聞かせは大勢の子どもたちに対して行う保育活動ですので、発声のみならず、話のテンポや園児の観察などのスキル向上のために、充分な訓練が求められます。教育学部こども教育学科の学生が実施している実際の読み聞かせの場面を紹介しておきます(図5下)。

いかがでしたか。「子育て支援センター」の施設と遊具の一部を紹介しましたが、私たちは、子どもの安全を確保しつつ、成長を促す遊具や絵本が日本中で活用されていくことを願っています。さらに、「教育学部こども教育学科」を卒業された皆さんが保育園や幼稚園、小学校など様々な現場やご家庭で、遊具や絵本を用いて子どもの成長を促してくれることを期待しています。

参考文献
ハームス,T他(著);埋橋玲子(訳)(2016)『新・保育環境評価スケール①(3歳以上)』,(2018)『新・保育環境評価スケール②(0・1・2歳)』,(2018)『新・保育環境評価スケール③(考える力)』,法律文化社
杉上佐智枝(著)(2020)『絵本専門士アナウンサーが教える心をはぐくむ読み聞かせ』,小学館
児玉ひろ美(著)(2016)『よくわかる!絵本の選び方・読み方 0~5歳 子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』,小学館
絵本と読み聞かせの情報誌『この本読んで!』(季刊誌),メディアパル
宮里曉美(編)(2020)『触れて感じて人とかかわる 思いをつなぐ 保育の環境構成 0・1歳児クラス編』,中央法規出版

 

 

図1 子育て支援センターの室内と遊具

図2 個性的な遊具たち(上:デュシマピラミッド、デュシマ社; 下:クネクネバーン/トレインカースロープ、ベック社

図3 ダイバーシティを考慮した人形

図4 学生たちの手作り絵本

図5 大型絵本の収納庫(上)と学生による読み聞かせ(下)