学長、帝塚山大学

2022年3月14日

第28回 生駒山を臨むキャンパス ~生駒山・信貴山エリアでのプロジェクト活動

図1の写真をご覧下さい。帝塚山大学学園前キャンパスから撮影した生駒山の様子です。手前の丘陵が矢田丘陵で、その中の左方にある白っぽい建物が東生駒キャンパスとなります。

奈良市の西端に立地する東生駒キャンパスは、生駒市と境界を接しています。最寄りの駅は近鉄奈良線東生駒駅で、そこから徒歩または奈良交通バスで大学構内まで往復できます。生駒市は奈良県の北西部に位置しており、東が矢田丘陵、西が生駒山に挟まれた南北に細長い市域となっています。

生駒山の中腹には宝山寺があります。宝山寺は生駒聖天(いこましょうてん)とも呼ばれ、江戸時代から商売の神として、とくに大阪商人の信仰を集めてきました。参詣者が多いため、大正7(1918)年には日本最初のケーブルカーが敷設され、生駒市はその門前町として発展しました。近年は関西有数のベッドタウンとして、さらに「けいはんな学研都市」(正式名称:関西文化学術研究都市)の一角を担い、産業・研究面でも活発な施策を展開しており、令和3(2021)年に市制50周年を迎えました。

生駒市の南に位置する生駒郡には、平群町、三郷町、斑鳩町という歴史文化的にも重要な地域が並んでいます。この地には、飛鳥・奈良時代にかけて王権の中心となる寺社や施設が存在しており、今日に至るまで日本の歴史文化の宝庫と言えます。

さて、帝塚山大学は生駒市や三郷町等と地域連携包括協定を結んでおり、それ以外の自治体とも協力して、様々な地域連携活動を実施してきました。今回は、生駒市や三郷町との連携を中心とした成果の一部をご紹介しましょう。

帝塚山大学の学生が奈良県の政策提案のコンテストに提案して採択されたプロジェクトが「シギサン8」と命名されたノベルゲーム型観光アプリです(図2)。奈良県では平成24(2012年度)から「県内大学生が創るならの未来事業」が実施されており、その初回となる第1回の優秀賞に当時の経営情報学部(現在の経済経営学部)の学生が中心となって応募した「Meet 20s' 絆 プロジェクト-20歳の若者の出会いで絆をつくる」プロジェクトが選ばれました。これはスマホのアプリ(シギサン8)で奈良の観光を盛り上げようとするもので、舞台が信貴生駒地域となっています。

学生たちは実際に地域の神社や遺跡に赴いて作った資料をもとに、アプリのシナリオを企画しました。主人公は、由緒あるお寺の一人息子である宿禰(すくね)。異空間にとらわれてしまった親友のデジタル少年・道師(みちのし)を救い出すべく、11人の個性的な仲間と旅に出るという壮大な物語が信貴山生駒地域を舞台に繰り広げられます。この観光アプリはGPSが連動しており、実際に観光スポットを訪ねてクエストをクリアするとストーリーが次々と展開するという仕組み。物語を体感しながら観光も楽しめるという当時としては先進的で画期的なコンテンツでした。(http://shigisan8.com/)。

生駒にゆかりのお菓子や料理も、学生たちのプロジェクトで製作されてきました。その一つである「帝塚山ロール」というロールケーキは、平成27(2015年)に当時の経営学部(現経済経営学部)の学生たちが地元の企業と一緒に開発したものです(図3)。生駒産の米粉とはちみつ、卵にこだわったケーキで、学内の学生や教職員の憩いの場である東生駒キャンパスのForest Caféで食べることができます。今は、残念ながらコロナ禍でお休みとなっています(2022年3月時点)。

さらに、「ジューシーたつた」という「たつた揚げ」にも挑戦しました。生駒市、生駒商工会議所、生駒市観光協会と協働して、竜田川が由来といわれる「たつた揚げ」を生駒のご当地グルメとして全国に広め、 地域活性化につなげるプロジェクトです。本学の複数学部の教員と学生が一緒になり、平成30年(2018年)に「大学教授ご用達 帝塚山ジューシーたつた」として完成しました(図4)。生醤油とショウガを利かせた「たつた揚げ」は、白ご飯のおかずにぴったりの一品でしたが、これもコロナ禍で今はお休みです。

「たつた揚げ」の由来になった竜田川は、生駒信貴山系を北から南へと流れています。なんと言っても、百人一首にある「千早(ちはや)ぶる 神代(かみよ)もきかず 龍田川(たつたがは) からくれなゐに 水くくるとは」(在原業平)の歌で有名です。竜田川の紅葉の美しさを取り上げた一首であり、今でもこの地域では晩秋になると素晴らしい紅葉を見せてくれます。たつた揚げは下味に醤油を使うことによる紅い色が特徴で、前述の百人一首の歌のイメージを取り入れて名前を付けたと言われています(『日本大百科全書(ニッポニカ)』、小学館)。

そのほかにも、令和3(2021)年に1400回忌を迎えた聖徳太子に関連して、文部科学省平成29(2017)年度私立大学研究ブランディング事業の一環で、「聖徳太子関連遺跡の研究」に文学部の教員と学生、大学院生が取り組み、生駒市高山町および生駒郡三郷町において踏査や講演会を行いました。三郷町では、本学が所蔵する古代瓦の特別展示や学生による関連遺跡のウオーキングイベントも実施しました。

学生の皆さんは、大学が所在する地域の歴史や社会にも関心を持ち、時間を見つけて、各地の名所旧跡を訪れて、見識を深めて欲しいと思います。また、地域の活性化を目指したプロジェクト活動も本学では色々と行われていますので、皆さんの成長につながる機会として積極的に参加されることを期待しています。

参考文献
・ 奈良県高等学校教科書研究会歴史部会編、『奈良県の歴史散歩 ㊤奈良北部』(山川出版社、2007)
・ 大阪府みどり公社編/生駒山系歴史文化研究会著、『生駒山:歴史・文化・自然にふれる』(ナカニシヤ出版、2010)
・ 多田鉄之助「竜田揚げ」、『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館、1984)
・ 清水昭博.帝塚山大学考古学研究所.「聖徳太子関連遺跡の研究 : 法隆寺創建瓦生産窯の調査」,『平成 29 年度文部科学省私立大学研究ブランディング事業『帝塚山プラットフォーム』 の構築による学際的 「奈良学」 の研究』, 2020(http://id.nii.ac.jp/1288/00001359/)

図1 学園前キャンパスから臨む生駒山と矢田丘陵(2022年3月3日撮影)

図2 観光アプリ「シギサン8」のイメージイラスト 

図3 学生プロジェクトによる「帝塚山ロール」(写真の最下段)

図4 「たつた揚げ」プロジェクトののぼり)