学長、帝塚山大学

2021年6月10日

第5回 女子大と短大を偲ぶ

帝塚山大学は1964年(昭和39)4月に開学して以来、1987年(昭和62)に男女共学になるまで、23年間教養学部のみの女子単科大学でした。また、大学学園前キャンパスには、その前身とも言うべき帝塚山短期大学がありました。短期大学は大学に3年先立つ1961年(昭和36)4月に開学し、2000年(平成12)に大学短期大学部へと組織変更、2004年(平成16年)には募集停止となりましたが、主要な専攻は現代生活学部へと引き継がれています。

この期間、大学教養学部と短期大学は女子の高等教育機関として、約35000人もの多くの人材を社会に送り出しています。関西地域において、卒業生の女性社長のランキングで本学が上位を占めることが多いのも、こうした経緯が影響しています。

しかしながら、大学が共学になって今年(2021年)で34年、短期大学が募集停止してからも17年が過ぎてしまい、当時を知る教職員も少なくなりましたので、少しだけ女子大と短大を偲ぶために、両者の記憶を辿りましょう。

東生駒キャンパスのバス停を降りたところにある「歴史館」では、大学創設からの大学の流れが誰にも分かりやすく紹介されています(図1)。創設時の教員たちと教育の様子が理解できますが、ぜひ女子大時代の教育の様子や部活等での活躍を知ってください。女子アーチェリー部は当時の花形クラブであり、在学時にオリンピックに出場した選手もいました。現在、部室や合宿所になっている建物(第3クラブハウス、セミナーハウス三碓)は当時の女子寮(三碓寮)です(図2)。

短期大学については、学園前キャンパスの中で、短大当時とそれほど変わっていない建物がいくつかあり、短大の名残が所々にあります。10号館の1階と2階はかつての短期大学家庭生活学科(2001年より人間環境学科に名称変更)のスペースですし、14号館の学生ホール(図3)や食堂(図4)も改装されて新しくなりましたが、構造はそのままです。それでも短期大学開学当時の円型校舎(図5)が無くなったのは、やはり寂しく思います。

1981年にはNHKドラマ人間模様「万葉の娘たち」というタイトルのテレビドラマが、当時の有名な女優陣によって、短大キャンパス内の校舎を用いて撮影されたこともありました。

ハトの広場に面した小さな植え込みの一角に、短期大学を偲ぶモニュメント「待つ人」が置かれています(図6)。短期大学同窓会からの要望を受けた学園が2005年(平成17)に設置したもので、彫刻家の玉野勢三氏が制作されました。物思いにふけっているような女性の像ですね。何を待っているのでしょうか。

学生の皆さんも大学を散策する際には、かつて東生駒には女子大、学園前には短大があり、多くの学生達がこの地で学んでいたことに思いを巡らせていただければと思います。

図1 東生駒キャンパスの「歴史館」

図2 東生駒キャンパスの女子寮を改築したセミナーハウス「三碓」

図3 学園前キャンパス学生ホール(現在:2021年6月)

図4 学園前キャンパス学生食堂(短大当時と現在の様子)

図5 幼稚園側から短期大学円型校舎を臨む(1993年撮影)

図6 短期大学を偲ぶ彫像「待つ人」(学園前キャンパス「ハトの広場」)