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2021年6月16日(水)

帝塚山大学と心理学(3) 人間文化学科の理念と特色

今回は、人文科学部人間文化学科の理念と特色についてみていきましょう。

当時の社会はIT化が急速に進み、21世紀を目前に迎え大きく変化していきました。価値観も多様化し、そのような時代を生き抜く人材を育てることは社会的な急務だったと言えます。人文科学部は、深く広い教養と豊かな人間性を持った人材の養成に、「個性の尊重と社会的積極性の育成」も強調した「こころの通った教育」を目標として設立されました。

 ちなみに、人文科学部が設立される3年前の平成8(1996)年には、教養学部の「日本文化コース」を基礎に大学院人文科学研究科日本伝統文化専攻が開設され(2年後には博士後期課程も開設)、それ以外のコースも将来的には大学院の開設を目指していたようです。なお、心理学系は平成18(2006)年に人文科学研究科内に「臨床社会心理学専攻」を開設しています。

 本題に戻りますが、人間文化学科は、教養学部の「都市社会コース」の理念を拡大・充実し、「人間性の重視という観点から、21世紀の社会的課題に対応すべく、心理行動・福祉・環境といったキー・ポイントを捉え、積極的に地域社会にかかわっていく人材を養成」することを目指しました。この精神は、人間社会の抱える諸問題を解決する能力を持つ人材を養成するという、現在の心理学部の人材養成目的にも継承されています。

学科のカリキュラムは基礎科目、行動・心理科目、社会・福祉科目、環境・情報科目、さらに演習科目ならびに関連科目から構成されました。行動・心理科目はのちの心理学部のベースとなる科目群ですが、「現代社会に生きる人間の行動原理と意識構造を実証科学的手法によって客観的に把握し、都市に生きる現代人特有の行動を、対人行動、環境心理、産業心理、臨床心理などの諸側面から具体的に探究する」ものでした。環境・情報科目や演習科目は情報処理技能や実習・フィールドワークに重点を置いたものですが、心理学ではデータ解析などの情報処理技能が求められ、また、問題解決能力を養成するためには単に座学だけではなく、実体験を重視するため、これらの科目が開講されたのでしょう。もちろん、これらもまた、現在の心理学部に引き継がれています。

最後に、卒業後の進路については、社会福祉問題に取り組む人材の養成、コンピュータ操作能力を活かした職種への展開、販売・広告・宣伝などの業界や人材派遣業、住宅・不動産業、地域と密着した地場産業への進出などを想定していたようです。この時点では、まだ「心理カウンセラーの養成」は出てきていませんが、むしろそれが、次のステップへの原動力だったのかもしれません。

 

旧1号館跡地(東生駒キャンパス)。当時このあたりに9階建ての「旧1号館」があり、そこに人間文化学科の教室や研究室などが入っていました。

 

 

現在は「中央芝生広場」として、学生のみなさんの憩いの場となっています。 詳細はこちらをご覧ください。