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2018年5月31日(木)

【日本文化学科】リレー講義「日本文化への多角的アプローチ」第6回

 

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歴史や文学など様々な分野を学習できる、日本文化学科の特色を活かしたリレー講義「日本文化への多角的アプローチ」は、5月24日(木)に惠阪悟講師(中世芸能)による第6回の講義が行われました。

惠阪先生は、「和歌」文化が日本文学史の中を貫く潮流であることから話を始められ、中世文学の「能」においても和歌の伝統が重要な基盤になっていることを説明しました。

『古今和歌集』によって和歌文化が再興し、歌道が成立します。藤原為家が歌の家としての権威を確立し、二条家、京極家、冷泉家で歌道伝授の流れが受け継がれていきました。

その歌道の流れの中で傍流であった為顕は、歌の表現の意味を考察していく歌学において、説話を多く盛り込みました。為顕流の『古今和歌集序聞書』(三流抄)では、『古今和歌集』仮名序の表現について、どういうことをきっかけにそういう言葉が生まれたのかという観点から説話が紹介されています。

惠阪先生は、このような説話が「能」の素材として多く使われていたことに注目されました。三流抄では、「女郎花のひとときをくねる」という表現について、小野頼風の女房が身投げし、その形見の衣から女郎花が咲いたという説話が紹介されています。能「女郎花」はこの説話をもとに創出されました。旅の僧の前に小野頼風と妻の霊が現れ、恋の妄執に縛られて責め苦を受けていることを訴え、供養を求めるという構成です。このように、能「女郎花」において、和歌説話の内容が深められ、後日譚として展開されている点が重要であると指摘されました。

最後に、能「女郎花」の文芸としての特色をまとめられ、「中世文学」は前代の文芸を享受しながら、それを展開させることで新たな文芸を創造していったと位置づけられました。