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2018年7月5日(木)

【日本文化学科】リレー講義「日本文化への多角的アプローチ」第12回

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歴史や文学など様々な分野を学習できる、日本文化学科の特色を活かしたリレー講義「日本文化への多角的アプローチ」は、7月5日(木)に西尾元伸准教授(近現代文学)による第12回の講義が行われました。共通テーマは「花」です。

西尾准教授は、「〈花〉と近代文学-「植物学」を視座として-」と題して、日本の近代化の所産の一つである科学、特に「植物学」の知識を用いて描かれた近代文学作品二点を取り上げて、近代文学の展開の一端をたどりました。

一つ目は泉鏡花の幻想文学作品『黒百合』。明治三十五年に初版が刊行された同作には、『絵本太閤記』などに見える黒百合の伝承(戦国武将佐々成政が愛妾早百合を惨殺し、その怨みにより滅亡したとする)が構想の中で大きな役割を果たしているものの、作中の花の描写には、最先端の植物学的知識の投影が見られることを、本文に即して解説しました。

二つ目は詩人であり童話作家としても著名な宮沢賢治の作品『水仙月の四日』。大正十三年発行の作品集に収められた本作は、賢治のふるさと岩手の気候がモチーフとなっています。本作中に見える「カシオピイア」「アンドロメダ」などの語が、天文学的知識によるばかりでなく、高等農林学校卒の賢治が身に付けていた植物学的知識(植物の学名にも用いられた)とも関わっていることを紹介しました。