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2014年4月2日(水)

【日本文化学科】住田古瓦・考古学研究奨励賞受賞 清水昭博准教授にインタビュー

清水先生受賞.jpg

文学部日本文化学科の清水昭博准教授(考古学研究所長・附属博物館長)の著書『古代日韓造瓦技術の交流史』(清文堂、2012年)が、第2回住田古瓦・考古学研究奨励賞(公益財団法人交通研究協会)を受賞しました。本賞は、全国の国分寺を訪ねて古瓦を蒐集した故住田正一博士を記念して設立されたものです。平成26年3月19日、JR東日本本社ビルで授賞式が行われました。

本学考古学研究所で清水昭博准教授にインタビューしました。

─ご著書は10年にわたる研究成果をまとめたものと伺っています。受賞の感想をお聞かせください。

清水:2002年からですから、10年ですね。ずっと一貫して日本の古代と朝鮮半島との関係という視点で研究してきました。自分の作ったものを評価していただけてうれしいですし、励みになります。

─古代瓦の研究を始められたきっかけは何ですか。

『古代日韓造瓦技術の交流史』.jpg

清水:大学生のとき、人生で初めて考古学の本を買ったのですが、それが実は森郁夫先生(本学名誉教授)の『かわらのロマン』なんですよ。それでなんとなく瓦っていいのかなと思いました。その後、橿原考古学研究所に就職して、飛鳥のお寺の調査でたくさん瓦を掘ることになりました。瓦に興味を持ち始めたのはその頃からですね。附属博物館で自分が最初に企画した展示も、「蓮華百相━瓦からみた初期寺院の成立と展開━」でした。同じように見える瓦でも、百面相のようにいろいろな顔をしていて、その違いからそれぞれの関係性がわかるんです。

─先生には、人の顔のように、瓦の個性が見えるのですね。

清水:ぱっと見たら、どこの寺の瓦かとか、だいたいわかりますね。同じ型のものもありますが、作られたお寺によって違いがあります。たとえば、法隆寺(奈良)と四天王寺(大阪)は離れた場所にありますが、実は同じ職人によって同じ型の瓦が作られていました。作り手が同じなので技術の痕跡は一緒なのですが、それぞれの領地で焼くので、土や質は異なったものになっています。

─研究をふりかえられて、特に印象に残っていることは何ですか。

清水:韓国に交換研究員として派遣されていた2003年3月のことですね。日本と百済と中国という東アジアの中で、瓦を作る技術がつながっていたことを発見しました。韓国の中央博物館で中国の瓦を見せてもらっていたときに、瓦の後ろに残る技術の痕跡が、百済と日本のものとピタッと一致していることに気づきました。日本の飛鳥寺などの瓦に残る痕跡と、百済の大通寺の瓦の痕跡が同じであることは言われていたのですが、百済に仏教を伝えた中国の南朝の瓦にも同じ痕跡が確認できたことで、中国にまでつながるのかとワクワクしました。このときの成果をまとめた論文は、自分でも一番好きな論文です(著書第2部第2章「百済における「大通寺式」軒丸瓦の造瓦技術」)。

─これからの抱負をお聞かせください。

清水:自分の研究は、やはり古瓦の研究を進めていきたいですね。地域を広く、東アジアの交流の実態を解明していきたいです。教員としては、学生と一緒に地元に関わる調査を進めていこうと考えています。今、竹林寺(生駒市)の行基に関する調査にも学生を動員して取り組んでいます。地元の歴史を解明するのに、少しでも協力できたらと思います。

─大学でどのように学ぶか、学生にアドバイスをいただけますか。

清水:なんでもいいから、学生の間に経験をすることですね。本を読んだりとか、人と会ったりとか、どこか行ったりとか、いろんな物事を見て聞いて感じて、そして自分の好きなことを一つ見つければいいのかなと思います。それを自分のペースで追究していく、そういういいものが見つかれば、楽しいのではないですかね。

─先生の場合はそれが瓦だったのですね。

清水:最初から瓦ではなかったのですが、大学生のとき、タウンページで大阪市文化財協会の番号を見つけて電話したのがきっかけで、難波宮の遺跡発掘のアルバイトに行くことになりました。それがなかったら、何をしていたのだろうと思います。

清水准教授と古代瓦との初めての出会いは、大学生の頃のアルバイトだったそうです。難波宮の朝堂院の発掘現場で、多数の瓦が出土していた場所の上を普通に歩いてしまい、調査員に「どこだと思ってるの。下に何があるかわかってるの!」と怒られたのが、最初の思い出とのことでした。

 帝塚山大学図書館(奈良・東生駒キャンパス)では、本受賞を記念して、清水昭博准教授の著書や研究の軌跡を通して瓦のおもしろさを探る展示「百面相の瓦の世界へ」を、4月30日(水)まで行っています

なお、帝塚山大学考古学研究所(tel.0742-48-9700)の市民大学講座では、4月26日(土)に清水昭博准教授による「瓦の来た道─中国・朝鮮、そして日本へ─」(14時~15時半、帝塚山大学 奈良・東生駒キャンパス5号館5104教室)を開催します。