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2025年12月3日(水)

「特殊講義(実践的中小企業経営)」で製薬会社の5代目の専務取締役にご講義いただき ました

11月28日の「特殊講義(実践的中小企業経営)」では、至誠堂製薬株式会社5代目で専務取締役を務める冨士浩祐氏をお迎えし、「マネー or フィロソフィー」をテーマにご講義いただきました。

至誠堂製薬は、創業108年を誇る老舗企業です。「至誠の心で尽くします」を社是として掲げ、医薬品から健康食品まで幅広く製造・販売してきました。その販売ネットワークは日本国内にとどまらず、台湾・カザフスタン・ベトナムなど12か国へと拡大し、国際的にも高い評価を得ています。

冨士氏は大学卒業後、いったん一般企業に就職し、6年後に家業である至誠堂製薬へ入社しました。当初は「周囲に認められたい」という思いが強く、業績向上だけを追い求めるあまり、社員を人件費として捉えるようになったといいます。数字こそがすべてだと考えていたのです。

しかし、奈良県中小企業家同友会への入会をきっかけに、仲間から理念経営の重要性を学び、考え方が次第に変化していきました。承認欲求から得た成果には心が動かず、また先代である父親との対話を重ねる中で、「会社は自分一人ではつくれない」という当たり前の事実に気づき、理念が腑に落ちたといいます。これは、冨士氏自身の矢印が“自分”か
ら“他者”へと向いた瞬間でもありました。

以降は、理念と戦略を結びつけて考えるようになり、「ここで働いてよかった」と思ってもらえる会社づくりを目指すとともに、海外事業部の強化にも力を注ぎました。冨士氏にとって経営とは、「理念(想い)×戦略」の掛け合わせであるという信念が確立されたのです。

講話の最後には、事業承継に必要な覚悟として「掲げたことを最後までやりきること」と「自らの器を広げ続けること」を挙げ、マネーとフィロソフィーの“バランス”こそが経営の鍵であると締めくくられました。

講話後は、「あなたにとっての豊かさとは何か」をテーマに、経営者を交えたグループディスカッションを実施しました。学生からは、「時間・お金・家族・仕事のいずれも欠けては豊かとはいえない」「余裕が大切。やりたいことにお金と時間を使える状態が心の満足につながる」といった意見が挙がり、各グループがその内容を発表しました。

今回も、履修学生数と同数に近い多くの経営者の方々が参加してくださいました。このように贅沢な学びの機会から、学生が一つでも多くの気づきを得てくれることを願っています。