妖怪社会心理学

序
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 「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という川柳があります。これは怖い怖いと思っていると、枯れたススキの穂さえオバケに見える、と解釈されることが多いのですが、理屈っぽく考えると、まずは尾花を見る人が「怖いことが起きそうだ」という心理状態になっていることが前提となります。でなければ、枯れた尾花は秋の深まりを感じさせる、お月見をしたくなるような風情のある景色に見えることでしょう。

  この「怖いことが起きそうだ」という心の有り様=「不安な気持ち」が、人に幽霊という幻影を見させる要因となっているといえるのです。

 そもそも妖怪伝承の誕生にしても、日本妖怪探訪ページで記しているように、その昔、誰かが説明のつかない現象に遭遇し、何か得体の知れない存在がいるのではないか、奇怪な出来事はその存在が起こしたのではと思った、そのたった一人の人間の心の揺らぎ=不安感が、村という共同体の中での「共同幻想・共同幻覚・共同幻聴」となり、よりリアルな妖怪遭遇話に醸成され、さらにより広い地域における「共同幻想・共同幻覚・共同幻聴」=妖怪伝承に成長していったと考えられます。

 このプロセスの根底には、万人が共通して持つ心理学的な要因があるはずです。その「心理学的な要因」とは何なのか?を知る、これが妖怪社会心理学という仮想心理学とお考えください。

 古き時代の妖怪伝承から現代の都市伝説まで、摩訶不思議な伝承が生まれる「心の有り様」をみていくことで、今を生きる私たちにも共通した人の心の本質が、思いがけなく顔を見せてくれるかもしれません。

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