[105頁]−論  説−

         婚姻の解消と住居の利用関係(一)

          ―財産分与的処理のドイツ法を契機とした再吟味―

                         常   岡  史  子

          

         目   次

       一 問題の所在       

       二 居住用不動産の利用権限に関するわが国の判例・学説の状況 

        1 判例に現れた居住用不動産の利用権限

         (1)婚姻の破綻と居住の継続

         (2)財産分与における居住用不動産の処理

        2 離婚時の居住用不動産の扱いに関する学説の見解(以上・本号)

       三 ドイツにおける婚姻住居の利用権限

        1 婚姻継続中の利用関係

        2 別居時における婚姻住居の利用

        3 離婚後における居住関係の調整

       四 結   語 

 

 

  [106頁]  問題の所在                               目次に戻る

 婚姻生活において夫婦の居住する不動産が法律上一方配偶者に帰属する場合に、他方配偶者の当該不動産での居住をいかにして保護するか。この問題が、家族法上の重要な課題であることは、つとに指摘されてきた。たとえば法制審議会の民法改正論議においては、昭和五〇年の民法部会身分法小委員会の「『相続人・相続分、夫婦財産制、寄与分』に関する中間報告」(1)が、「第二 夫婦財産制に関する審議内容及び問題点」の中で、婚姻生活の継続に必要な居住家屋について、名義人である配偶者による単独処分を制限すること、及び、婚姻解消後の妻の居住権を保護することに言及し、さらに、同小委員会の平成四年の「婚姻及び離婚制度の見直し審議に関する中間報告(論点整理)」(2)では、この居住保護についての積極見解として、「婚姻中に夫婦の一方がその名義で共同生活のために取得し、現に他方が居住している家屋若しくはその敷地又はそれらの賃借権若しくは敷地についての地上権について、その名義を有する者が居住している配偶者の同意を得ずに譲渡その他の処分をした場合には、その配偶者は、これを取り消すことができ、取消しをもって第三者に対抗することができるものとするのが相当である」という意見を示すに到っていた。しかし、居住用不動産に関する処分制限規定の導入については、その具体的内容及び効果についてさらに検討すべき法律上の問題点が数多く存在するため(3)平成六年の「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」の段階では、離婚及び相続の場合の配偶者の居住の保護とあわせて今後の課題とされるにとどまり(4)、特別な法的措置は取られなかった。しかしながら身分法小委員会では、「居住用不動産の名義人でない配偶者の居住を保護するため、今後何らかの措置を講ずる必要があるという意見が大勢を占めた」と言われており(5)、この問題は依然として立法政策上の重要な課題として生き続けている。

[107頁]このように居住用不動産(6)への非権利者たる配偶者の居住の保護は、長年にわたる立法課題であるが、近年、同じく民法改正論議の中で審議されている離婚原因における破綻主義の明確化の動きとも相俟って、特に離婚に際しての婚姻住居の扱いについて関心が高まっている。すなわち、裁判離婚における離婚原因として一定期間の別居による離婚を認めるべきことは、従来より議論されてきたところであるが(7)、その場合離婚後の配偶者の生活や居住の保護について十分な手当のないまま、このように継続的別居を理由とする離婚を認めると、生活能力のない配偶者にとって苛酷な結果になるのではないかという問題が生じるからである(8)。そして、この点について身分法小委員会では、他の法律や規定との関係の調整の困難さから「離婚原因の問題と離婚後の後始末の問題は切り離して、前者をまず通し、後者については、引き続いて検討を進めること」になったと言われているが(9)、居住用不動産に関する離婚時の特別な扱いの問題については、学説が、すでに現行の財産分与手続の中で取り組んでいる。すなわち、少なからぬ夫婦にとってその財産の重要部分を占める居住用不動産がしばしば夫の名義になっており、実務においては多くの場合、財産分与手続の中でこのような不動産がその他の財産と特に区別されることなくその市場価格に応じて処理されているという実情に鑑みて、離婚に際し当該不動産に対する居住の価値を重視した取扱いをする必要性が、そこでは強調されてきた(10)

 その目的として掲げられているものは、子供の生育環境への配慮とその子を監護養育する親の生活保障ないし、離婚後に別途新たに住居を見つけることの困難な収入獲得能力の低い中高齢女性の生活保障である(11)。これは、法制審議会における配偶者の居住の保護の必要性を説く議論と軌を一にする。しかし、学説において注目すべきは、現行法の枠内において居住の保護を実現するために、財産分与における清算・扶養の各要素、また場合によっては慰謝料的要素までを考慮した上で、分与の方法として、所有者ではない配偶者に可能であれば当該不動産の所有権[108頁]を、そして財産分与額がこれに達しない場合には居住のための利用権を与えるという具体的方策を示し、さらに後者の場合には、利用権の種類として賃借権を上げている点である(12)。特に、財産分与の清算・扶養・慰謝料の諸要素を総合しても、分与額が不動産の所有権の分与を可能とするに十分ではないとき、非所有者たる配偶者の従来の住居への居住の確保という目的を達成するためには、居住用不動産の所有権の帰属とは切り離して、利用のための独立した権利を付与する措置が重要な意味を持つ。そして諸説が、そのような利用権として、賃借権付与という財産法的措置を取ることの意義として上げるのは、このような賃借権は登記可能であり、離婚後に所有者たる配偶者が不動産を第三者に処分した場合にも、分与を受けた配偶者の居住の確保が可能になる(13)という点である。また、離婚後における居住用不動産の所有関係と利用関係を区別することにより、当該不動産のローンが未済の場合にも、清算のためにこれを換金等することなく継続して居住することができるようになるとも言われている(14)

 しかしながら、このように財産分与手続における配偶者のための賃借権設定は、従来の住居への居住の継続を可能にするという点でこの配偶者に資するものの、他方においては、元の夫婦間に離婚後も賃貸人・賃借人という継続的関係を発生させる点、また、諸説の言うように居住継続確保の目的が、子供を養育する母親や収入獲得能力の低い離婚女性の生活保障であるとした場合、賃料支払い義務を伴う賃借権という有償の利用権の設定がこの目的にとって適切な方法なのかという点で、問題なしとしない。たとえば、鈴木眞次助教授は、「優先居住の要請は離婚給付の方法の配慮を促すにとどまり、その額を増すものではない」として、「具体的には、@清算・扶養・慰謝料の性格に基づき算定される額の金銭の支払と賃借権の設定とを離婚給付として夫に命じ、その賃借権の内容として妻の支払う賃料を月いくらと定めておく方法や、A清算・扶養・慰謝料の性格に基づき算定される額から期間中の賃料相当額をあらかじめ差し引いた金銭の支払と、賃借権の設定とを夫に命じる方法が考えられる」とされる(15)[109頁]しかし、このような方法によると、妻に離婚前と同じ住居への居住を可能にしたとしても、妻が現実に財産分与によって取得する金銭額は賃料相当分だけ減少することになる。妻子の居住環境の維持という目的は達せられるとしても、低額の収入しか得られない妻の生活保障という目的を含め、財産分与全体として見た場合にこのような措置が妥当であるかは別論である。もっとも、この点について、本沢巳代子教授は、居住用不動産が一方配偶者の単独所有又は両配偶者の共有である場合において、離婚後他方配偶者に当該不動産の利用の継続を認めたときに、その使用の価値を財産分与にあたっての一切の事情として考慮すべきことを指摘しつつ、この「居住の価値は、基本的には、当該住居を賃貸した場合の家賃を基準に算定することになろうが、場合によっては当該住居が夫婦の他の一方の単独使用には大きすぎることもありうるから、当該住居の単独使用を認めた諸事情によっては、一般の市場価格をかなり下回ることもありえるものと思われる」とし、具体的事情に応じて、居住の継続を認めたことにより他方配偶者の残余の財産分与額が過剰に減少するのを防ぐ可能性について言及されている(16)

 他方、判例においては、婚姻中に夫婦が居住していた不動産が財産分与の対象となる場合、当該不動産取得の経緯における夫婦の協力の清算に加えて、財産分与の相手方たる配偶者に対する扶養的要素、慰謝料的要素を考慮するか、あるいは居住の利益を重視して、当該不動産の所有権もしくはその持分をこの配偶者に付与するという方法が一般的である(17)。しかし、近時の下級審の中には、財産分与に際して当該不動産についての賃借権を与えたものが見られ(18)、また、不動産取得に際しての諸事情と他方配偶者に認めるべき財産分与額の相当性とを考慮して、財産分与の方法として不動産の所有権ではなく利用権の分与が適切であるという判断を行い、関連する不動産に対する賃借権や使用借権を付与した判決も存在する(19)

 ところで離婚後における従来の住居への居住の利益の保護を重視するならば、認定された財産分与の額如何にか[110頁]かわらず、また当該不動産が夫婦の実質的共有財産であるか一方配偶者の特有財産であるかを問わず、当該不動産に対する他方配偶者の居住の継続を認めることが必要となる。問題はその法的手段であるが、欧米諸国では、離婚後の処理として、子を養育する配偶者に多くの場合優先的に家族の居住用不動産の占有を与えるという扱いがなされており、この配偶者が当該不動産の非所有者であるときには、その方法として賃借権ないし用益権を設定するという措置が法律で明示されている場合もある(20)。そこでは、夫婦間の衡平と並んで子の福祉も重視され、当該不動産が夫婦の共同財産か、夫婦の一方の特有財産か、あるいは賃借家屋であるかを問わず、離婚配偶者が従来生活を営んできた場所に離婚後も継続して居住することが可能となるように、居住用不動産に利用権が設定されるのである(21)。そして、このような状況は、わが国において居住用不動産に賃借権を設定することにより離婚した配偶者の居住の継続を確保するという方向への加勢となるように見える。しかしながら、ここでさらなる検討を要する点は、このような措置が、財産分与における清算的・扶養的・慰謝料的要素の範囲で決定される分与額の給付の一方法として、不動産の使用価値のみの付与の手段という役割にとどまるのか、それとも従来の財産分与制度の枠組みを越えた、配偶者の居住の利益の保護のための積極的手段として把握されているのかである。さらに、婚姻住居に離婚後も継続して居住を認める場合、婚姻に端を発する利用関係を離婚以後に賃貸借という有償の利用関係として継続させることの意味も、明確にする必要があろう。

 また、婚姻住居に関しては前述のように、婚姻関係消滅のもう一つの場面である相続についても、生存配偶者のための特別な配慮の必要性が認識されている(22)。すなわちこの点について、昭和五四年の「相続に関する民法改正要綱試案とその説明」は、生存配偶者に婚姻住居に対する法定の居住権を与えるといった優遇措置を取ることはせず、民法九〇〇条の配偶者相続分の引き上げ及び同九〇六条に規定された遺産分割の基準において「各相続人の年[111頁]齢、心身の状態及び生活の状況」を考慮すべきことを明示することによって対処が可能であると述べていたが(23)、昭和五五年の民法改正でこの両条の改正が実現されたことによって、一応の対応がなされた。しかしながら、非嫡出子の相続分の引き上げを提案した平成六年の試案との関係において、被相続人の唯一の財産が居住用不動産である場合に、非嫡出子の相続分の増加により遺産分割に際して生存配偶者がこの居住用不動産を維持できなくなるといった事態にどう対応するかという観点から、生存配偶者の居住の保護の必要性が、再び指摘されている(24)。また相続については、内縁関係に関しても、被相続人の内縁の相手方の居住の保護が従来より論じられてきた(25)。そして、この問題に関し、平成一〇年二月二六日の最高裁判決は、内縁夫婦が共有していた家屋について夫の死亡後、内縁中の利用状況に基づく夫婦の意思の推定を根拠として、妻の全家屋に対する単独使用を認め、夫の相続人が相続により取得した共有持分に基づいて行った妻に対する賃料相当分の不当利得の支払い請求を斥けるに到っている(26)。婚姻住居をめぐるこのような流れは、配偶者の居住が婚姻に基因するという特性を重視し、婚姻関係消滅にあたっても他の財産と異なる基準に従った措置がとられるべき必要性を、我々に示していると考えられる。そしてこれは、離婚時の婚姻住居の扱いにも共通する。

 ところでドイツでは、離婚に際しての財産的処理として、夫婦財産制の終了による夫婦財産の清算(法定財産制たる附加利得共通制では、婚姻中は別産制原理に従い、離婚によって発生する夫婦の一方から他方に対する附加利得均分清算債権(Zugewinnausgleichsforderung)の行使)、一定の要件のもとで発生する離婚後の扶養請求(Unterhaltsanspruch)、将来の年金権の清算(Versorgungsausgleich)が行われる。したがって、附加利得の均分清算に際して、場合によっては家庭裁判所への申立てにより金銭給付に代えて特定物の引渡しが命じられることはあるが、婚姻住居が一方配偶者の単独所有もしくは両配偶者の共有である場合に、その所有関係自体が離婚手続の中[112頁]で当然に調整の対象になることはない。しかしながら婚姻住居については、このような離婚時の財産的諸給付とは別に、その「利用関係」自体について夫婦間の合意が成立しない場合の調整措置が置かれている。それが、一九四四年の家具令(27)であり、その三条一項は、婚姻住居が、たとえ一方配偶者の単独所有であるかまたは一方配偶者と第三者との共有であっても、離婚に際して他方配偶者が当該住居の継続使用を認められる場合について規定し、同五条二項では、裁判官が、そのような使用関係として離婚した夫婦の間に賃貸借関係を設定できることを定めている。すなわちそこでは、離婚後の婚姻住居利用の問題は、婚姻に基因する夫婦の住居共同関係の分割問題であり、婚姻住居の利用関係にのみ係わるものとして処理され、裁判官は当該住居の所有権の帰属にまで関与することはできないと考えられているのである(28)。そして、家具令の現代的意義は、離婚配偶者の保護とともにその者によって離婚後監護される子供の福祉にあることも認められている(29)。これは、わが国におけるこれまでの財産分与制度の枠内での議論とは、かなり性格を異にする側面を含むものと言えよう。

 そこで本稿では、婚姻住居が一方配偶者の所有財産である場合に的を絞って、他方配偶者による婚姻中の当該不動産利用の法的性質をまず吟味し、その考察の上に、そのような利用関係の解消をもたらす離婚時の処理に際して、他方配偶者の居住の保護を目的として当該不動産に賃借権を付与することの意味を、ドイツ法における議論を手掛かりとして検討したい(30)。賃借権の設定により具体的にいかなる問題がドイツで生じ、それが判例においてどのように解決されているのか等を明らかにすることは、次章で概観するわが国における婚姻住居の利用権限に関する判例・学説の現状に対して、新たな視点を提示するところが多いと考えられるからである。

 

[113頁] (1)法務省民事局参事官室「法制審議会民法部会身分法小委員会中間報告について」ジュリスト五九六号(昭和五〇年)八五頁。

(2)法務省民事局参事官室「婚姻及び離婚制度の見直し審議に関する中間報告(論点整理)」戸籍時報四一九号(平成五年)九頁以下。

(3)法務省民事局参事官室「『婚姻及び離婚制度の見直し審議に関する中間報告(論点整理)』に対する意見の概要について(下)」ジュリスト一〇三五号(平成五年)一〇三頁以下、法務省民事局参事官室「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案の説明」ジュリスト一〇五〇号(平成六年)二四二頁以下。なお筆者は、ドイツ法における一方配偶者の財産の処分制限制度について不動産の場合に関し、拙稿「一方配偶者の有する不動産の処分の制限 ―ドイツ法における議論を中心として―」民商法雑誌一一三巻六号(平成八年)一頁以下で紹介したことがある。

(4)法務省民事局参事官室「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案 第三 夫婦財産制 二 法定財産制(後注)」ジュリスト一〇五〇号(平成六年)二一六頁。

(5)法務省民事局参事官室前掲注(3)ジュリスト一〇五〇号二四三頁。

(6)日本においては、土地と建物が別個の不動産であるため、当初「居住家屋」という語句を用いていた身分法小委員会等で、最近では両者を表す概念として「居住用不動産」という用語が使用されている。しかし、本稿が検討対象とするドイツ法では、建物は原則として土地の構成部分であり、家具令(後掲注(20)参照)でも、”Ehewohnung”という語句を使用している。したがって本稿では、原則としてドイツ法に関しては「婚姻住居」と記述することとし、日本法に関しては「居住用不動産」とともに、広く住居とその敷地を含めた婚姻生活のための不動産という意味において、「婚姻住居」と記述する場合もある。

(7)従来からの婚姻制度等の見直し審議を受けて平成八年に法務大臣に答申された「民法の一部を改正する法律案要綱」では、現行民法七七〇条一項の改正として、裁判離婚の離婚原因につき「夫婦が五年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき」という条項を追加することとなった。これは夫婦間の協力・扶助関係がない状態で五年以上別居が続いている場合には、客観的に見て婚姻が破綻し回復の見込みがないとしてよいだろうという見地から、破綻主義を離婚原因においてより明確化したものである。小池信行「『民法の一部を改正する法律案要綱』の概要」法律のひろば四九巻六号(平成八年)一三頁。

(8)星野英一「家族法改正問題」法学教室一八四号(平成八年)四六頁以下。その他右近健男「婚姻・離婚制度中間報告――離婚を中心として――」ジュリスト一〇一九号(平成五年)六八頁。

[114頁] (9)星野前掲注(8)法学教室一八四号注四七頁。
法制審議会の身分法小委員会でも、配偶者の居住の保護は、夫婦の離婚や当該不動産の名義人の死亡による相続の場面でも必要であり、むしろこの場面での保護の必要性がより高いという意見も多かったとされている。法務省民事局参事官室前掲注(3)ジュリスト一〇五〇号二四三頁。また、山崎潮氏は、「民事立法の今後の課題」NBL六〇〇号(平成八年)三六頁において、法務大臣官房審議官の立場から、民法改正における今後の検討課題の一つに「夫婦の一方が所有し、または賃借している不動産につき、離婚した場合の他方配偶者の居住権の確保、内縁配偶者の居住の確保」を上げている。

(10)本沢巳代子「離婚による財産分与」『家族法改正への課題』(日本加除出版、平成五年)二一六頁、同『離婚給付の研究』(一粒社、平成一〇年)二四七頁、鈴木眞次『離婚給付の決定基準』(弘文堂、平成四年)三〇八頁以下。

(11)本沢前掲注(10)『家族法改正への課題』二一六頁、同『離婚給付の研究』二四八頁以下、鈴木前掲注(10)『離婚給付の決定基準』三〇八頁以下。

(12)佐藤義彦「財産分与としての賃借権設定」判例タイムズ五五八号(昭和六〇年)二三二頁以下、右近健男「財産分与の一部として敷地利用権を設定した例」法律時報六一巻一〇号(平成元年)一二五頁、同「離婚・別居と婚姻住居 ―ドイツ法の紹介―」岡山大学法学会雑誌四六巻三=四号(平成九年)五二頁、本沢前掲注(10)『家族法改正への課題』二一六頁、同『離婚給付の研究』二五一頁以下、鈴木前掲注(10)『離婚給付の決定基準』三一二、三一八頁。

(13)同様のことは、居住用不動産が夫婦の共有財産であり、離婚後一方が継続して居住している場合に他方がその持分を第三者に処分したというケースにも当てはまる、本沢前掲注(10)『離婚給付の研究』二五一頁以下、同『家族法改正への課題』二一六頁、右近前掲注(12)岡山大学法学会雑誌四六巻三=四号五二頁。なお高木積夫「財産分与に関する若干の立法論的考察」家族〈社会と法〉九号(平成五年)一二頁では、夫所有の居住用不動産を離婚後も妻や子に無償で使用させた場合、何年か経過した後所有者たる夫から居住者である妻に対して所有権に基づく妨害排除として明渡しを求める民事訴訟が起こされるケースがあり、そこでは当該権利関係を使用貸借と解して目的終了の有無により結局明渡しが認められる事案も多いことなどから、財産分与において居住権のみを付与する場合についてその保護につき立法的検討を要すると提言されている。

(14)本沢前掲注(10)『家族法改正への課題』二一五頁。

(15)鈴木前掲注(10)『離婚給付の決定基準』三一二頁。

[115頁] (16) 本澤前掲注(10)『離婚給付の研究』二五二頁。

(17) 横浜地裁昭和五五年八月一日判決判例時報一〇〇一号(昭和五六年)九四頁、浦和地裁昭和六〇年一一月二九日判例タイムズ五九六号(昭和六一年)七〇頁、東京地裁昭和六一年一二月二二日判例時報一二四九号(昭和六二年)八六頁。居住用兼営業用不動産を分与したものとして、大阪地裁昭和五九年三月二九日判決判例タイムズ五二八号(昭和五九年)二九六頁、最高裁昭和四一年七月一五日判決民集二〇巻六号(昭和四一年)一一九七頁、高松高裁昭和三六年一二月一五日決定家裁月報一四巻四号(昭和三七年)二〇四頁、秋田家裁角館出張所昭和三九年二月一四日審判家裁月報一六巻八号(昭和三九年)一〇五頁、鳥取家裁昭和三九年三月二五日審判家裁月報一六巻一〇号(昭和三九年)一〇六頁。判例における居住用不動産の扱いについては、鈴木眞次前掲注(10)『離婚給付の決定基準』七〇頁以下、同「東京地裁離婚判決(昭和五五年から平成元年まで)にみる離婚給付の額・方法と決定基準」判例タイムズ七八八号(平成四年)一八頁以下に詳しい。

(18) 浦和地裁昭和五九年一一月二七日判決判例タイムズ五四八号(昭和六〇年)二六〇頁。

(19) 東京高裁昭和六三年一二月二二日判決判例時報一三〇一号(平成元年)九七頁。

(20) ドイツでは、一九四四年の婚姻法第六施行令である「婚姻住居及び家具の取扱いに関する命令」("Verordnung über die Behandlung der Ehewohnung und des Hausrats"(以下「家具令」"HausratsVO"と記述する))三条以下において、離婚に際しての婚姻住居の処理は、その所有権の移転ではなく賃借権ないし用益権の設定によって行われるべきことが規定されている。本命令の詳細については、右近前掲注(12)岡山大学法学会雑誌四六巻三=四号三三頁以下、宮本ともみ「離婚後の婚姻住居利用問題への対処 ―ドイツ家具令(HausratsVO)の沿革を拠り所にして―(一)〜(三・完)」法学新報一〇二巻一号(平成七年)一四五頁以下、二号(平成七年)一二九頁以下、五=六号(平成八年)八九頁以下参照。また、フランス民法典二八五条一項も、居住用不動産が一方配偶者の個人財産であるとき、他方配偶者のために当該不動産に賃借権を設定できる場合について規定する。その他、諸外国における別居ないし離婚時の居住用不動産の取扱いについては、犬伏由子、本澤巳代子、棚村政行、南方暁、坂本オロフソン優子「離婚原因と離婚給付」家族〈社会と法〉五号(平成元年)二一頁以下、野村豊弘「フランス法における家族の住宅について」学習院大学法学部研究年報一四号(昭和五四年)二四一頁以下、松浦千誉「居住用不動産の処分制限について ―イタリア法を参考にして―」判例タイムズ八一三号(平成五年)五五頁以下、鈴木眞次「英米における離婚時の家族の住宅の処理について」広島法学一七巻四号(平成六年)二一一頁以下等参照。

[116頁] (21) 本澤巳代子「離婚給付の新展開」法学セミナー四一〇号(平成元年)四一頁は、欧米では一般に、離婚に際しての居住用不動産の処理は、所有権の帰属の問題としてではなく賃借権や利用権の設定もしくは変更の問題として扱われると指摘する。

(22) 前掲注(9)参照。

(23) 法務省民事局参事官室ジュリスト六九九号(昭和五四年)四四頁以下。

(24) 法務省民事局参事官室前掲注(3)ジュリスト一〇五〇号二五五頁、星野前掲注(8)法学教室一八四号四六頁、石川稔「婚姻法・離婚法改正の意義と課題」法律時報六六巻一二号(平成六年)四頁、加藤朋寛「『婚姻制度等に関する民法改正要綱試案』の概要 ―夫婦間の財産に関する問題点について―」金融法務事情一三九五号(平成六年)四六頁。

(25) 太田武男「日本の内縁」『事実婚の比較法的研究』(有斐閣、昭和六一年)一頁以下参照。

(26) 最高裁平成一〇年二月二六日判決、http://courtdomino.courts.go.jp/judge.nsf.参照。

(27) 前掲注(20)参照。

(28) 宮本前掲注(20)法学新報一〇二巻二号一三〇頁以下。

(29) 宮本前掲注(20)法学新報一〇二巻五=六号九〇頁以下。

(30) なお、離婚後における居住用不動産の利用については、当該不動産が借地もしくは借家である場合についても検討が必要であり、また、平成三年の借地借家法改正時には、婚姻住居の保護に関し議論されつつも見送られた経緯がある(星野前掲注(8)法学教室一八四号四七頁)。これについては、配偶者に限らず広く賃借人の同居家族の利用権も含め、当該借地もしくは借家の所有者との関係等、借地権、借家権固有の問題についての考察を要するため、今後の課題としたいが、本稿により一定の方向性は示せると考えている。

 

 

        居住用不動産の利用権限に関するわが国の判例・学説の状況      目次に戻る

 婚姻生活における共同の住居への居住に関し、民法は七五二条に「夫婦は同居し、互に協力し扶助しなければならない」と規定を置くのみである。この同居義務について明治民法七八九条では、「(一項)妻ハ夫ト同居スル義務[117頁]ヲ負フ(二項)夫ハ妻ヲシテ同居ヲ為サシムルコトヲ要ス」と規定されていた。同条は、「夫は夫婦共同の居所も決定する権利義務を有し、妻はこれに追従する権利義務を有するということを意味」するものと言われ(1)、一項で妻の同居義務を規定したのに対応して、二項で夫にも妻を同居させる義務を負わせてはいるものの(2)、婚姻生活における夫の主導を明示しており、現代の両性の本質的平等という理念とは相容れないものであった。

 現行の七五二条は、旧規定の婚姻生活における夫優位の原則を排し、夫婦の独立と協調に基づいた共同生活の一般的かつ基本的な法律効果に関して規定する。そこに言う同居・協力・扶助は、精神的・肉体的・経済的な終生にわたる協同体たる婚姻の本質に由来するものであって倫理的色彩が強く、そこから生じる法律的効果もこの倫理的本質に根差すものであると言われており(3)、さらに進んで本条の意義を積極的に評価する場合にも、「(七五二条は)夫婦間の平等原理と共同原理とを端的に示すことによって、夫婦間の身分的効果の限界を明らかにし、夫婦関係をば、法律的というよりは、むしろ、道徳的・宗教的・愛情的なものに委ねることによって、法と倫理の融合を所期し、いわば身分法における信義誠実の原則を明らかにするもの」であるとされた(4)。従って本条では婚姻の効果としての夫婦の協同体の実現である「同居」が注視され、婚姻中における夫婦の共同生活のための住居への居住自体の権利性は、前面には出ていないといえる(5)

 さらにわが国では法定財産制が別産制を採っていることから、夫婦財産制においても婚姻中の居住用不動産は当然には夫婦の共有とはならない(6)。したがって、一方配偶者が婚姻前から有しまたは婚姻中に自己の名で取得した不動産は、この配偶者の特有財産であって夫婦の共有財産ではない。そこで学説においては、当該不動産に夫婦が居住する場合、他方配偶者がこのような一方配偶者の所有不動産上に当然に居住できる法的根拠は何かという観点から、その利用関係の法的性質が論じられてきた(7)。諸学説の法律構成自体は、婚姻中の居住用不動産の共同使用[118頁]について権限のある占有があり、その使用が適法であって不当利得ないし不法行為にはならないことを認めるためのものであり、その限りで各構成間に大きな相違は存しないとも言われている(8)。しかしながら離婚時の居住用不動産の扱いにおいて、諸説は、往々にして婚姻中の利用関係の解消としての性格を有するものという見地からの分析を行い(9)、婚姻中の利用関係の法的性質のとらえ方に応じて、離婚後の利用関係の処理についても論拠に相違が見られる(10)。また学説は一般に、居住用不動産の所有者ではない配偶者の居住の継続のための手段として、賃貸借の設定を肯定的にとらえているが、この場合、当該配偶者の負担する賃料の支払いが財産分与との関係でいかなる意味を持つのか、すなわち賃借権設定は財産分与における清算の一方法なのか、それとも扶養的要素を持つものなのか、あるいは配偶者の居住の保護を目的とした全く独自のものと扱うべきなのか等について、すべての学説が言及しているわけではない。そこで以下においては、これまでのわが国の判例・学説における居住用不動産の利用関係に関する議論を、婚姻継続中から離婚の際の財産分与にかけて概観し、離婚時の当該利用関係の処理に関する現在の議論の到達点を確認しておきたい。

1 判例に現れた居住用不動産の利用権限

 婚姻生活において夫婦の居住する不動産が一方配偶者の所有に属する場合でも、その生活が円満に営まれている限り、通常は、当該不動産に対する他方配偶者の利用の法律関係が意識されることはない。このような利用関係が法律問題として表面化するのは、婚姻が破綻して場合によっては夫婦が別居状態に入ったとき、あるいはさらに離婚により従来の居住用不動産の利用関係を処理する必要が生じたときであり、判例で争われるのも、主としてこのような事例である。そこで、婚姻は継続しているが破綻状態にある場合と離婚の場合を区別し、各々の事例におい[119頁]て判例が、所有者ではない配偶者の居住用不動産の利用を法律的にどのようにとらえ、いかなる判断に基づいて紛争の解決を図っているかについて分析することにする(11)

 

(1)婚姻の破綻と居住の継続

 婚姻が破綻している場合においては、居住用不動産について所有者たる一方配偶者が当該不動産から退去し、所有者ではない他方配偶者が居住しているというケースで紛争がしばしば表面化する。すなわち所有者たる一方配偶者は、自己の所有権に基づいて他方配偶者に当該不動産の明渡しを求めることができるのか、あるいは他方配偶者はこのような請求を拒んで当該不動産への居住を継続できるのかという形で、夫婦の一方の所有に属する居住用不動産に関する利用関係が争われるのである。この問題について数は多くはないが下級審の判決が存在し、いずれも七五二条を拠り所として理論構成している点で共通である。

 そこにはまず、婚姻生活が破綻しているとしても、七五二条の規定する夫婦の同居・協力・扶助義務を根拠として、婚姻関係が継続している以上、一方配偶者は所有者ではない他方配偶者にこの者が現に居住している不動産の明渡しを請求することはできないとする判決がある(12)。しかしながら、婚姻継続中の夫婦であっても、同居を拒絶する正当な事由が存在する場合には同条の同居義務の履行を拒むことができ、この拒絶について同居義務違反の責任は生じないことが一般に認められていることから(13)、七五二条の同居義務から直ちに一方配偶者による不動産の明渡請求を否定するこのような判決の立場には、学説の批判が強い(14)

 そこで判例には、不動産の所有者たる一方配偶者に他方配偶者との同居を拒む正当事由が存在する場合には前者に同居拒絶権を認め、この同居拒絶権を根拠に他方配偶者の当該不動産に対する占有権限が消滅したとして、一方[120頁]配偶者の明渡請求を認めたものがある(15)。しかし、このような立場に対しては、正当事由の存在による同居拒絶権の行使は、一方配偶者が他方配偶者と別居することが七五二条の同居義務違反にならないということを意味するにとどまるのであって、一方配偶者が同居拒絶権を有することが直ちに他方配偶者の当該不動産に対する占有権限の消滅をもたらすのかという疑問が提起されている(16)

 ところで下級審判決の中には、このように七五二条の同居義務そのものから一方配偶者の明渡請求の許否を論じるもののみではなく、同条を根拠としてより積極的に居住権という他方配偶者の居住用不動産に対する権利を導き出すものがある(17)。すなわち夫婦の同居協力扶助義務により他方配偶者は、特段の事情のない限り(18)、あるいは居住権の行使が権利の濫用にあたるような事情のない限り(19)、一方配偶者の所有する居住用不動産に当然に居住権を有し、それに基づいて当該不動産に居住することができると構成するのである。ただし、これらとは対照的に、そもそも民法七五二条の同居義務は、倫理的、道徳的な側面を有し、夫婦が同居、協力、扶助して共同生活の実をあげることをその趣旨とするもので、特定の場所についての占有権限を直接に根拠づけるものではないとして、同条に基づいて他方配偶者の居住用不動産に対する占有を根拠づけることを否定しつつ、一方配偶者の所有権に基づく明渡請求については、婚姻関係が存続している以上、この請求を正当とする特段の事情のない限り、他方配偶者は同居義務を根拠として明渡しを拒むことができるという、他方配偶者の抗弁権として理論構成する裁判例も存する(20)

 このように裁判例は、七五二条を根拠としつつも、その理由づけは一様ではない。同条を根拠に他方配偶者の居住権を認める判決も、その法的性質や効力、たとえばこのような他方配偶者の居住権が所有者たる一方配偶者の所有権との関係でいかなる内容を持つのか、という点についてまでは明らかにしていない(21)。そしてこれらの判決はすべて、居住用不動産の所有者たる一方配偶者が、他方配偶者に対して所有権に基づき当該不動産の明渡しを請求[121頁]した事例である。そこでは別居を望んでいるのは所有者である一方配偶者であり、その所有権に基づく明渡請求に対して他方配偶者が継続して居住を認められるか否かを、同居協力扶助義務に基づく居住権を根拠として論じている。また裁判所は、そのような利用関係を、夫婦の同居協力扶助義務を根拠とすることから当然と考えたのか、従来どおりの無償の利用ととらえている。

 しかし、このように他方配偶者による居住用不動産の利用を居住の「権利」ととらえるときには(22)、問題を夫婦間に限ったとしてもさらに進んでこの権利に基づいて、他方配偶者の側から居住用不動産について一方配偶者に対する妨害排除をなし、又は他方配偶者が、退去した後に自らその占有を回復することも可能であるかという問題が生じる(23)。具体的にはたとえば、すでに他方配偶者が一方配偶者の所有する従来の居住用不動産より自ら退去して別居した後に、再び当該住居への居住を希望するとき、その形態として再度一方配偶者と同居するという場合のみならず(これは七五二条の同居義務から導かれよう)、一方配偶者との同居は拒絶して、この者を当該不動産から退去させるという請求をするケースが考えられる。しかしながら諸判決は、居住権の内容についてここまでは言及していない(24)

 

(2)財産分与における居住用不動産の処理

 婚姻中に認められていた一方配偶者の所有する居住用不動産に対する他方配偶者の利用関係は、離婚という事態に直面していかなる状態に到るのであろうか。この点については、他方配偶者の婚姻中の利用が同居義務に由来する権利に基づくものと明言するか否かを問わず、このような利用関係は原則として婚姻の解消とともに消滅するとするのが、判例の立場である(25)。それでは、このように離婚によって消滅すると考えられる一方配偶者の所有不動[122頁]産に対する他方配偶者の利用関係は、財産分与の中での処理等により、離婚後の継続使用のために何らかの法的手段が取られうるのであろうか。これに関しては「問題の所在」で述べたように、離婚の際には従来、居住用不動産も夫婦のその他の財産の一部として扱われることが多く、所有者ではない配偶者の居住の必要性に配慮する場合にも、主に財産分与の中で当該不動産の所有権もしくは持分を付与するという形で処理されている。

 財産分与において配偶者に居住用不動産の利用権を付与した裁判例としては、夫婦の居住する土地及び建物を婚姻中に夫が取得したが、その購入資金は、夫を債務者とする住宅ローン(約一四二〇万円)と妻の父の出資(二〇〇万円以上)によるものであり、妻がピアノ教師としての収入で数年間にわたり家族の生計を支えてきたという事案についての浦和地裁昭和五九年一一月二七日判決(26)がある。そこでは、妻のこのような寄与に対して清算の意味で夫に四〇〇万円の支払いを命じ、さらに「無責の原告(27)の今後の生活のためには当分の間本件建物の利用を不可欠と認め」て、建物についての賃借権(月額六万円、期間は妻が親権者となっている九歳の子が成人に達する日まで)を設定分与している。したがって本件においては、妻が婚姻中にピアノ教室として当該建物を使用して収入を得ており、従来概ねその収入で家族の生計を立てていたことに鑑みて、離婚後もその生活のためにはこの建物を引き続き利用する必要性が高いことから、そのような利用を確保する目的で賃借権を付与したものと言える。ただし、約一一五平方メートルの宅地上の住居について昭和五九年当時月額六万円の賃料は、市場価格よりやや低いと考えられるものの、夫に離婚後本件建物を自ら使用する意思がなく、妻が継続して居住するならば、妻の両親は、夫に対して有する三〇〇万円以上の債権の返済を求めない意思を表示しているという事情に鑑みれば、いわゆる財産分与の中での離婚後の妻の居住の確保の事例と位置づけることは性急であろう。すなわち、当該不動産が離婚前より妻の収入獲得のための営業の場として使用されていたことを重視して、離婚後は他人どうしである夫から妻へのその[123頁]ような職業活動の場の提供という意味において、この場合の離婚配偶者間の利用関係を賃貸借という対価的な財産法上の使用関係として構成した、と考えることもできるのである。もっとも判決は、この点につき、婚姻中は無償の使用であったものを財産分与において賃貸借という財産法的な有償の使用関係として離婚後も存続させることの法的意味について、それが夫婦財産の清算なのか、妻への扶養か、あるいは慰謝料か、それとも利用の継続自体に別個独自の意味があるのかについて明らかにしていない。

 この判決後に出された東京高裁昭和六三年一二月二二日判決(28)では、離婚後の妻の扶養を考慮して、住居の所有権とその敷地の使用借権、及び店舗の所有権とその敷地の賃借権(月額三万円、期間二〇年)を妻に付与している。そこでは、財産分与の金額的相当性という観点から、建物と敷地両方の所有権を妻に与えるのは適当ではないという考慮のもと、敷地については利用権のみの設定で十分という判断がなされた。このような利用権の付与により、妻は婚姻中より使用している夫所有の不動産について離婚後も利用を認められることとなったが、住居の敷地については無償の使用借権であり、賃借権が設定されたのは、妻が離婚前から所得活動を行っていた店舗の敷地であった。但し財産分与額の相当性確保のための調整という考慮が入っていることによるのであろうか、そこでは約二三八平方メートルの土地に対する賃料が月額三万円と、市場価格よりもはるかに低く設定されている。

 

2 離婚時の居住用不動産の扱いに関する学説の見解

 婚姻中の夫婦間の財産利用関係に関する諸学説は、所有者ではない配偶者による居住用不動産の利用を、婚姻共同生活に由来する家族法上の権利(29)もしくは広義の扶養関係(30)と構成し、または使用貸借という財産法的視点に基づいた解釈を行い(31)、さらには配偶者による不動産の利用に関し独自の権利を認めて(32)、それを婚姻中における当該[124頁]配偶者による居住用不動産利用の法律上の根拠として用いている。これらの法律構成は、いずれも婚姻中の配偶者による居住を正権原あるものとする上で意味を有するが、離婚時における居住用不動産の取り扱いに関しては、各説はいかなる対応をしているのであろうか。

 この問題については、まず、夫婦財産制における夫婦の財産の帰属の問題をも視野に入れて、離婚時の財産分与における居住用不動産の利用関係の決定について論じる学説がある。すなわち加藤永一教授は(33)、夫婦財産を、名実ともに一方配偶者に属する特有財産、共有財産、名義は夫婦の一方に属するが実質的には共有である財産の三つに分類する種類別帰属説の立場を取り、そのうち第二、第三の共有財産及び実質的共有財産については、共有であることによって夫婦のいずれもが当然に使用権を有し、「非権利者のものを使用するという意味の、いわば本来の意味の夫婦財産の利用」の問題は生ぜず、財産分与に際してもこれらの財産は当然に分与の対象となり、協議ないし処分において使用関係が調整されると説かれる。これに対して第一の名実ともに一方配偶者に帰属する特有財産の使用については、婚姻継続中は婚姻法上の義務という外皮によって包摂された使用貸借関係であると構成する。そして継続的な利用でありかつ生活の基礎をなしている不動産利用の場合のように、婚姻共同生活に不可欠であったものは、この利用関係が扶養の問題として財産分与における調整の対象となる。その場合の方法として「家庭裁判所は、離婚の責任などを含め一切の事情を考慮して、あらためて土地使用の関係を決定しなければなら」ず、「そのさい、当事者で新たに賃貸借契約を締結させる方法(34)や、期限を定め、あるいは一定の解約条項を附した使用貸借をみとめる方法」、また「建物所有のための土地利用ならば、どちらか一方にすべての権利を帰属させ、他方には価格補償をするという方法」等を取ることができ、いずれにしても「裁判官が具体的事情に応じて判断しなければならない」とする。

[125頁]ところでこの学説は、法定財産制について現行民法の条文の所得共有制的解釈を行うことによる、夫婦間の実質的な経済的平等の実現が、学界の耳目を集めていた時期のものであり(35)、そのような時代背景のもとで、夫婦相互の財産利用関係について夫婦財産制との関連において論じたものである(36)。一方配偶者の特有財産たる居住用不動産に対する他方配偶者の利用関係を、財産分与における扶養的要素として処理しうることを述べられる点で、現代への示唆をも含む。しかしながら、一方で裁判官による自由な裁量を認め複数の選択肢を示されてはいるものの、選択にあたっての具体的基準にまでは言及されていない。

 他方、学説には、現行法定財産制について別産制という通説の理解に立った上で、夫婦間の財産利用関係について考察するものもある。すなわち佐藤義彦教授は(37)、婚姻共同生活遂行のために一方配偶者によって調達された婚姻財産について、他方配偶者に七五二条に基づく婚姻法上の利用権を認められる。この利用権は、原則として婚姻の継続する間存在し、別居中も当該財産が婚姻財産として観念される以上は存続するが、婚姻が解消されるとともに消滅する。そしてそこから、財産分与における「清算」は、本来ならば婚姻の解消とともに当然消滅するこのような婚姻法上の利用権の「事後処理=補償」を意味するものであるという構成を導かれる。すなわち離婚の場合に、何らの処理をすることなく他方配偶者から婚姻中には認められた利用権を剥奪してしまうことは、利用権の供与が同居・協力・扶助義務の履行として行われていたことを考えると、不当であると主張する。他方配偶者が居住の継続を必要とする場合には、離婚後の扶養や離婚慰謝料の給付が必要でない場合でも、所有者でないこの配偶者に利用権を付与することは認められるべきであり、その利用権に対し対価を支払うのが相当である場合には、右利用権を賃借権と定めても財産分与の「清算的性質」に反することにはならないとする。その結果、財産分与において当該不動産の利用権を与えること自体に意味がある場合には、婚姻中の利用の清算という位置づけによって賃借権と[126頁]いう手段を肯定される。

 これに対して、一方配偶者の所有する不動産に対する他方配偶者の利用権自体に注目して、「居住権限」を単なる「占有権限」ではなく特定の婚姻住居に対する積極的な「使用収益しうる権限」として構成しようとする説もある。すなわち岡本詔治教授(38)は、一方配偶者による婚姻住居の提供を、夫婦であることを前提とした「婚姻という身分関係・権利義務関係にある夫婦相互が、その義務を具現するためになさざるを得ない財産的処分行為(合意)」によって根拠づけ、このような「合意」に基づく利用行為は他方配偶者の独自の利用権であり、その効力・内容は、質的には所有配偶者のそれと同質の「所有権的利用」であるとして、「生涯無償利用権」という概念を提唱される。そしてこのような利用権は、非所有配偶者の責めに帰すべき事由によって婚姻が破綻したときには婚姻中でも消滅するが、そのような事情がない限り、婚姻の解消によって当然には無償利用関係は消滅しないとされる。したがってこのような利用権は、「少なくとも財産分与手続までは存続するし、分与請求の期間を徒過したときや、または分与手続のなかで非所有配偶者の居住利益について格別の配慮がなされなかったときでも、独自の利用権の解約問題として、居住継続の必要性等の諸事情を勘案して判断すべきであ」るとする。そして、その判断にあたっては、配偶者の居住の利益に財産分与における清算的要素、扶養的要素、慰謝料的要素が加味されて、不動産の所有権を付与するという方法(39)とともに利用権の付与も認められることになるのである。その際、利用権の付与は、婚姻中の無償利用権に依拠するものであるが、「原則として確定期限付(たとえば未成年子が成年に達するまで)であり、また必ずしも無償利用権を原則となしえ」ず、「婚姻年数、非所有配偶者の年齢、破綻の原因、離婚後の生活の方途、居住の必要性等の諸事情を勘案して生涯権を分与するのがよいかどうか、個別的に判断するしかな」いとして、婚姻中の無償利用権が、離婚後に当事者間に有償利用関係としても存続しうると述べる。そして、このように財産[127頁]分与で賃借権が設定されたとしても、賃料等の条件についての裁定の存在や、他方配偶者が従来の住居に継続して居住できる利益に着目して、そのような措置を居住の利益の保護の一方法として肯定する。

 以上の概観から、わが国において、離婚時の財産分与の中で他方配偶者に一方配偶者所有の居住用不動産に対する賃借権を付与すること自体については、諸説が肯定的な態度を取っていることがわかる。しかしながらその法的根拠及び理論構成は、学説ごとに多様であり、ときには各説が相互に十分にはかみ合っていない。そして、賃借権の設定は、離婚後の居住が可能になるという一事をもって非所有者たる配偶者の利益になるととらえられ、具体的状況に応じて財産分与額とのバランスの中で配偶者に離婚後も居住を可能にするための一手段としてのみ考えられているような印象を受ける。しかし、そもそも財産分与における賃借権の付与は、このような消極的意味にとどまるのか、賃貸借という形態での利用の継続は、真に離婚配偶者やその養育する子の保護に資するのか、具体的場面をも念頭に置いたより詳しい分析が必要である。

 

(1)林信雄「夫婦の同居協力義務」『家族法大系U』(有斐閣、昭和三四年)一七四頁。

(2)民法修正案理由書では本条について、「第二項ハ夫ニモ妻ヲシテ同居ヲ為サシムル義務ヲ負ハシメタルモノナリ既ニ妻ニハ夫ト同居スル義務ヲ負ハシメタリ而シテ夫ハ妻ヲシテ独居セシムルモ可ナリトスルトキハ二者ノ間ニ権衡ヲ得サルヲ以テ必ラス夫ニモ同居ノ義務ヲ負ハシメサルヘカラス」と説明されている。『日本立法資料全集 別巻三二』(信山社、平成五年)七〇頁。

(3)我妻栄『親族法』(有斐閣、昭和三六年)八〇頁以下。

(4)前掲 二 注(1)林『家族法大系U』一七二頁。

(5)本条の同居義務は、法律上の実体的な権利・義務であり、本条が強行規定であることも認められているが、そこでは夫婦の同居そのものが権利義務の内容であり、それが強行法規性の考察対象となっている。黒木三郎「同居・扶助の義務」『新版注釈民法(21)親族(1)』(有斐閣、平成元年)三五八頁以下。

[128頁](6)学説には、法定財産制を所得共有制的に解釈することにより、実質的共有財産の存在を認め、これに関しては夫婦の共有物としての利用関係を考える立場もあるが、このような見解においても、居住用不動産が一方配偶者の純然たる特有財産と認められる場合には、所有者ではない他方配偶者の利用の法的性質が問題となる。加藤永一「夫婦の財産関係について ―夫婦財産の利用関係を契機として ―(一)(二―完)」民商法雑誌四六巻一号(昭和三七年)三頁以下、三号(昭和三七年)八二頁以下。

(7)夫婦間における不動産利用関係は、居住用以外の不動産についても認められるが、本稿では、婚姻締結を契機とする居住用不動産の利用と、離婚後の当該不動産に関する居住の保護の問題についてのみ考察する。広く夫婦を含む親族間における居住用不動産及びその他の不動産に関する利用関係については、田村精一「親族間の不動産利用関係」『契約法大系V』(有斐閣、昭和三七年)二九三頁以下、樋口哲夫「夫婦・親子間の不動産利用関係」民事研修二五六号(昭和五三年)、田口文夫「不動産の無償利用契約と利用者の地位 ―親族間における利用関係を中心に―」専修法学論集四〇号(昭和五九年)九頁以下、新垣進「家族共用財産使用権原の試論」琉大法学五二号(平成六年)二八五頁、岡本詔治「親子間の不動産無償利用関係について ―使用貸借法の再構築―(上)(中)(中の2)(下)」島根法学三九巻一号(平成七年)一頁以下、二号(平成七年)一頁以下、三号(平成七年)四五頁以下、四号(平成八年)一一一頁以下等参照。

(8)加藤前掲 二 注(6)民商法雑誌四六巻一号一四頁以下。但し、岡本詔治「夫婦間における不動産無償利用関係(上)」島根法学三六巻四号四頁以下では、離婚に至る前の事実上の婚姻破綻の段階において、各法律構成のいずれを取るかによって重要な相違があると指摘されている。

(9)加藤前掲 二 注(6)民商法雑誌四六巻三号九二頁以下、岡本前掲 二 注(8)島根法学三六巻四号一九頁。

(10)婚姻中の利用関係の法的性質のとらえ方の相違から、離婚によって配偶者による利用関係は当然に終了するのか、それともこの利用関係は財産分与の対象として事後処理されるのか、あるいは財産分与請求権の行使期間内に利用関係についての処理がなされなければ居住用不動産の所有者とその元配偶者の間の当該不動産に対する法律関係はどうなるのか等の問題も生じる。これに関しては、加藤前掲 二 注(6)民商法雑誌前掲四六巻三号九三頁以下、佐藤義彦「婚姻財産の帰属・利用・分配についての一考察」同志社法学一一五号(昭和四五年)一三頁以下、玉田弘毅「被相続人の内縁の妻の居住権―― 相続人の承継家屋をめぐって―」法律論叢三八巻四号(昭和三九年)六六頁以下参照。

[129頁](11)夫婦間の不動産利用関係に関する判例の分析については、岡本前掲 二 注(8)島根法学三六巻四号一頁以下、同「夫婦間における不動産無償利用関係(下)」三七巻一号(平成五年)三三頁以下に詳しい。

(12)東京地裁昭和四七年九月二一日判決判例時報六九三号(昭和四八年)五一頁、東京地裁平成元年六月一三日判決判例時報一三四七号(平成二年)五八頁。

(13)黒木前掲 二 注(5)『新版注釈民法(21)親族(1)』三六一頁。

(14)岡本前掲 二 注(8)島根法学三六巻四号三一頁以下、宮本ともみ「所有権にもとづく夫婦間での建物明渡し請求」法学新報一〇一巻一=二号(平成六年)一四一頁。

(15)東京地裁昭和六一年一二月一一日判決判例時報一二五三号(昭和六三年)八〇頁。

(16)これに関して、宮本前掲 二 注(14)法学新報一〇一巻一=二号(平成六年)一四二頁以下は、婚姻住居の明渡しを許すことは他方配偶者を積極的に婚姻住居から追い出すことであるが、婚姻住居は夫婦各々の生活基盤であり、その利用は他方配偶者にとっても重大問題であって、しかも婚姻関係は依然として継続中であることに鑑みて、別居中の婚姻住居の利用は建物所有関係のみならず夫婦間のその他の諸事情を考慮して決する必要があるとする。

(17)ただし、東京地裁昭和六二年二月二四日判決判例タイムズ六五〇号(昭和六三年)一九一頁は、配偶者の居住できる権利の法的根拠を、民法七五二条ではなく夫婦の明示または黙示の合意に求める。

(18)東京地裁昭和四五年九月八日判決判例時報六一八号(昭和四六年)七三頁

(19)東京地裁平成三年三月六日判決判例タイムズ七六八号(平成三年)二二四頁。

(20)徳島地裁昭和六二年六月二三日判決判例タイムズ六五三号(昭和六三年)一五六頁。このような抗弁的構成に対する批判として、岡本前掲 二 注(8)島根法学三六巻四号二六頁。

(21)岡本前掲 二 注(8)島根法学三六巻四号二七頁以下は、東京地裁平成三年判決(前掲 二 注(19))によれば所有者の物権的請求権は、婚姻中は「居住権」によって完全に排斥されることになるという。

(22)判例のように居住権を七五二条に由来する他方配偶者の独自の権利と考えるとしても、その公示方法が現行法上は存在しないことから、第三者に対してはこの居住権を対抗する手段がないことになる。他方配偶者の居住の第三者に対する関係については、岡本前掲 二 注(11)三七巻一号四八頁以下、佐藤前掲 二 注(10)同志社法学一六頁以下。

[130頁](23)岡本前掲 二 注(8)島根法学三六巻四号二七頁は、東京地裁平成三年判決(前掲 二 注(19))の立場によれば、理論的にはこのような権利の行使も可能であるとする。なお占有訴権による他方配偶者の保護については、同前掲 二 注(11)島根法学三七巻一号五六頁以下参照。

(24)これに関連して、民法は制度上別居というものを規定しておらず、婚姻が破綻して夫婦が別居状態にある場合の財産関係の処理は、家庭裁判所の審判事項となってはいないため、現行法のもとでは他方配偶者は、別居中に家庭裁判所に対して居住用不動産の利用についての審判を求める手段を有していないという問題が指摘されている。宮本前掲 二 注(14)法学新報一〇一巻一=二号一五三頁。協議離婚制度の改革の面から別居中についてのこのような手続きの必要性を説くものに、上野雅和「協議離婚の改善策について」岡山大学法学会雑誌四二巻二号(平成五年)一頁以下、同「離婚の効果 ―立法論― 離婚法の改革(その2)―」家族〈社会と法〉九号(平成五年)四六頁以下。

(25)東京地裁昭和二八年四月三〇日判決下民集四巻四号(昭和二八年)六四一頁。内縁の夫婦間の利用関係に関するものとして、最高裁昭和三五年一一月一〇日判決民集一四巻一三号(昭和三五年)二八一三頁。

(26)前掲 一 注(18)。本判決の判例評釈として、佐藤前掲 一 注(12)判例タイムズ五五八号二三二頁以下。

(27)判決が「無責の原告」と述べていることが、この賃借権設定に慰謝料的要素を加味したものかどうかについて、佐藤前掲 一 注(12)判例タイムズ五五八号二三四頁以下は否定的にとらえる。

(28)前掲 一 注(19)。本判決の判例評釈として、右近前掲 一 注(12)法律時報六一巻一〇号一二二頁以下。

(29)鈴木潔「内縁関係の解消と内縁の妻の所有土地に対する夫の占有権限」法曹時報一三巻二号(昭和三六年)七四頁以下、立石芳枝「夫婦の財産関係」ジュリスト五〇〇号一九六頁以下、同「妻の居住権」民事研修二五〇号(昭和五三年)五一頁以下、佐藤義彦前掲 二 注(10)同志社法学一一五号一頁以下、宮本前掲 二 注(14)法学新報一〇一巻一=二号一三五頁。

(30)田村前掲 二 注(7)『契約法大系V』二九四頁、高島良一『判例借地借家法 上巻』(判例タイムズ社、昭和三七年)一五二頁。

(31)玉田前掲 二 注(10)法律論叢三八巻四号二九頁以下、加藤永一、鈴木ハツヨ「内縁関係の解消と内縁の妻の所有土地に対する夫の占有権限」民商法雑誌四四巻六号(昭和三六年)五五頁以下、加藤前掲 二 注(6)民商法雑誌四六巻一号一四頁以下。

(32)岡本前掲 二 注(8)島根法学三六巻四号一頁以下、同前掲 二 注(11)島根法学三七巻一号三三頁以下。

[131頁](33)加藤前掲 二 注(6)民商法雑誌四六巻一号三頁以下、三号八二頁以下。

(34)加藤教授は、これを裁判上の賃貸借とされる。前掲 二 注(6)民商法雑誌四六巻三号九二頁。

(35)夫婦財産制に関する学説の変遷については、犬伏由子「夫婦財産制」『民法講座7』(有斐閣、昭和五九年)九七頁以下、高倉良一「夫婦財産制の理念と課題 ―アメリカ合衆国の動向を手がかりとして―」『現代家族法の諸問題』(弘文堂、平成二年)一三七頁以下参照。

(36)夫婦財産制の解釈と居住の利益を結びつけて論じる近時のものとしては、南方暁「夫婦財産制と妻の居住の利益」『現代民法学の基本問題 下』(第一法規、昭和五八年)一二七頁以下。

(37)佐藤前掲 一 注(12)判例タイムズ五五八号二三六頁、同前掲 二 注(10)同志社法学一一五号一九頁以下。

(38)岡本前掲 二 注(8)島根法学三六巻四号一頁以下、同前掲 二 注(11)島根法学三七巻一号三三頁以下、同「財産分与・遺産分割と生涯無償利用権」『谷口知平先生追悼論文集第一巻家族法』(信山社、平成四年)三九一頁以下。

(39)この場合には、非所有配偶者の「所有権的利用」が婚姻継続中に強化され、所有権に高められたと考える。岡本前掲 二 注(38)『谷口知平先生追悼論文集第一巻家族法』三九七頁。

 

婚姻の解消と住居の利用関係(一)

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