[206頁]−論 説−
1994年の国際契約の準拠法に関する
米州条約について
高 杉 直
第一章 はじめに
第二章 条約の作成経緯
第三章 条約の概要
一 前文
二 条約の適用範囲
三 準拠法の決定
四 契約の成立および有効性
五 準拠法の適用範囲
六 その他の諸規定
第四章 若干の検討
一 lex mercatoria の準拠法適格性
二 特徴的給付の理論
三 その他の諸問題
第五章 おわりに
〔資料〕国際契約の準拠法に関する米州条約(英語条文)
第一章 はじめに 目次に戻る
本稿の目的は、米州機構(OAS;OEA)(1)の第5回米州国際私法専門会議(2)において採択された「国際契約の準拠法に関する米州条約」(3)(以下、メキシコ条約)について、簡単な紹介と若干の検討を行うことである。
メキシコ条約を取り上げる理由は、国際契約法に関する筆者の個人的関心
(4)の他に、メキシコ条約が取引実務上および法理論上の双方において一定の重要な意義を有すると考えたからである。まず、メキシコ条約の当事国で訴訟が行われる場合には、条約の適用要件を満たす限り、同条約が適用されることになる。したがって、特に米州で活動している企業や米州機構加盟国の企業と取引を行う日本企業などにとっては、リスク管理の観点から、メキシコ条約の内容の理解および検討が今後必要となり得るであろう
(5)。次に、メキシコ条約は、既に一定の成功を収めている「1980年の契約債務の準拠法に関するEU条約」
(6)(以下、ローマ条約)を基に、さらにローマ条約の欠点および最近の国際契約法の統一化動向をも考慮して、長期間にわたる慎重な考慮の末に各国の代表によって合意されたものである(7)。この意味で、現時点の南北アメリカ(しかも英米法系諸国と大陸法系諸国の双方を含む)において合意可能な最良の原則ないし理論を表明したものであるといえよう(8)。このメキシコ条約と、ヨーロッパにおいて合意できた原則・理論を表明するローマ条約や特に売買契約に関して世界的な規模(社会主義諸国や途上国をも含む)で合意できた原則・理論を表明する「1986年の国際物品売買契約の準拠法に関するハーグ条約」(9)(以下、新ハーグ条約)などとを比較検討することにより、普遍的に受容可能な最新の国際契約法理論の一端が浮かびあがるものと考える。これは、わが国の国際私法の立法論・解釈論にも一定の示唆を与えるものとなろう。[204頁]
以下では、まずメキシコ条約の作成経緯を概観し(第二章)、条約の内容についての簡単な紹介を行った後(第三章)、メキシコ条約が提起する問題点について若干の検討を加えて我が国際私法学への示唆を得ることとする(第四章)。 目次に戻る米州機構の枠組みの中で契約の国際私法規則の統一という考えが初めて検討されたのは、1979年にモンテビデオで開催された第2回米州国際私法専門会議(CIDIP-2)であった。この会議では特に重要な進展は見られなかったが、その後、契約問題が第4回米州国際私法専門会議(CIDIP-4)の議事日程に入れられたことで、契約に関する統一国際私法条約の作成へ向けての作業が大きく加速され始めた
(10)。1989年7月にモンテビデオで開催されたCIDIP-4では、Pereznieto博士による条約草案がメキシコ代表によって提出されたが、当事者自治の原則の受容についても米州諸国の法の間で相違が存在していることから未だ機が熟していないとして会議参加者からの抵抗に遭い、結局、条約として成立するには至らなかった(11)。ただ、ローマ条約の強い影響を受けた内容を持ち、当事者自治の原則をも広範に認める「今後の検討のための基本原則」が採択されたにとどまった(12)。その後、1989年11月18日の米州機構の総会において、第5回米州国際私法専門会議(CIDIP-5)を開催する旨の決議が承認され、これを受けて常設理事会(Permanent Council)は国際契約の準拠法に関する条約作成の準備作業を改めて開始することになった。しかし、ここで新たな問題が持ち上がった。すなわち、米州機構の枠組みで新たな条約を作成するよりも、米州諸国が新ハーグ条約に加盟することで契約に関する国際私法の統一が実現できるのではないかという主張である。というのは、CIDIP-4において、米州諸国に対し新ハーグ条約への加盟を勧告するという内容の決議が採択されていたからである。この問題は、CIDIP-5の準備書面である「質問状」の一項目として、米州諸国に照会された
(13)。これに対[203頁]する各国の回答は、他の条約をも考慮に入れた上で、地域的統一条約を作成することを指向するものが大多数であった。従って、結果的には、CIDIP-4で採択された「今後の検討のための基本原則」の方向と異なるものではなく、米州条約の作成作業は続行されることになった(14)。これと並行して、米州法律委員会(Inter-American Juridical Committee)は、「今後の検討のための基本原則」を考慮に入れた国際契約の準拠法に関する条約予備草案の起草を、メキシコのSiqueiros博士に委ねていた。Siqueiros 博士の手による予備草案はまもなく仕上がり、1991年7月31日には米州法律委員会によって承認された
(15)。この条約予備草案を検討した後、米州機構は、条約草案を起草するための専門家会議を招集した。この専門家会議は、Kozolschyk博士を議長として、1993年11月11日から14日まで米国アリゾナ州のTucsonで開催された(トゥーソン会議)。慎重な検討の後、予備草案にはいつくかの実質的な変更が加えられた。特に注目すべき変更点は、後述するlex mercatoria
(16)の準拠法適格性が認められたことである。最終的に、29カ条からなる条約草案(トゥーソン草案)が承認され、これがCIDIP-5における検討のたたき台とされた(17)。CIDIP-5 は、1994年3月14日から18日まで、メキシコ・シティにおいて開催された。メキシコ・シティ会議には、米州機構加盟国から19カ国
(18)が参加し、また、オブザーバーとして非加盟国4カ国(19)とハーグ国際私法会議などの国際組織が出席した。国際契約の準拠法に関する条約の検討は、ベネズエラのParra-Aranguren博士を議長とする第一委員会に付託された(20)。条約草案は、投票を必要とする程の見解の対立を生ずることなく(21)、また殆ど実質的な変更を受けず、最終的に、メキシコ条約は3月18日の総会で承認された(22)。その後、ベネズエラおよびメキシコの2カ国の批准により、メキシコ条約は、第28条に従い1996年12月15日から両国において発効している
(23)。第三章 条約の概要 目次に戻る
以上の経過を経て作成されたメキシコ条約は、前文と6章だての計30カ条の条文からなっている。第1章(第1条〜第6条)には条約の適用範囲、第2章(第7条〜第11条)には準拠法の決定、第3章(第12条・第13条)には契約の成立および有効性、第4章(第14条〜第18条)には準拠法の適用範囲、第5章(第19条〜第24条)には一般規定、第6章(第25条〜第30条)には最終条項、という表題がそれぞれ付されている
(24)。以下、条約内容につき概観する。メキシコ条約の前文は、同条約の理念を表明するものである。具体的には、米州機構の加盟国の間における契約に関する国際私法規則の統一とこれによる国際取引に対する法規整の調和、および、これらの結果としての国際契約の容易化とこれによる地域統合の促進である
(25)。1 契約類型および事項的適用範囲(26) (27)。第1条第1項は「この条約は、国際契約の準拠法を決定する」と定め、これを明確にしている。そこで問題となるのは、国際契約とは何か、すなわち契約の国際性の判断基準である。同条第2項によれば「当事者が異なる当事国に常居所もしくは営業所を有する場合、または、契約が複数の当事国に客観的な関連を有する場合」に、当該契約は国際契約と解されることになる(28)。
この意味における国際契約である限り、原則として、全ての契約類型にメキシコ条約は適用されることになる。いわゆる国家契約にも原則として適用される
(29)。[201頁]もっとも、各締約国は条約の署名、批准または加入の時に、国家契約の適用除外を宣言することができるし(30)、また、この宣言をしていない場合であっても、個別の国家契約において条約の適用排除を明示的に定めれば、条約は適用されないことになる。また、消費者契約などについても原則としてメキシコ条約は適用される。但し、第1条第4項
(31)によって、消費者契約や労働契約などの特別な考慮を必要とする一定の契約類型について、各締約国は適用除外の宣言を行うことができる。しかし、メキシコ条約の実質的意義を失わせるような適用除外宣言は許されない(32)。なお、消費者契約や労働契約などについては、締約国がたとえ適用除外の宣言をしなくとも、第11条の強行法規に関する規定および第18条の公序に関する規定によって弱者の保護が可能と考えられている(33)。従って、後述(第三章三)のように、各契約類型毎の特別な準拠法選択規則を置いていない。以上の基準によって条約の適用除外とされない契約類型であっても、全ての問題にメキシコ条約が適用されるわけではない。一定の事項については条約の適用範囲から除外されている。たとえば、自然人の身分および能力の問題、相続および遺言の問題、家族関係から発生する契約の問題、流通証券・有価証券上の債務およびこれらの証券の取引から生ずる債務の問題、仲裁合意および裁判管轄合意の問題、会社法上の問題などである
(34)。なお、ローマ条約や新ハーグ条約と異なり、代理権の問題については条約で扱われている(第15条を参照)。2 他の国際私法規則との関係
メキシコ条約は、ローマ条約や新ハーグ条約と同様に普遍主義を採用しているため(第2条)
(35)、メキシコ条約が適用される範囲において、締約国の従来の国家法たる国際私法規則は取って代わられることになる(36)。メキシコ条約の締約国が加盟している他の国際私法条約との関係については、若干複雑である。というのは、一方で「この条約の規定は、この条約の当事国間
[200頁]において効力を有する国際条約法上の自律的規定で規制されている契約には適用されない」(第6条)と定められているのに、他方で「この条約は、同一の事項に関する従来の条約について効力を維持するとの宣言が行われる場合には、この条約の当事国が現在もしくは今後当事国となる適切な範囲の他の国際条約、または、統合運動の関係で締結される他の国際条約の適用を妨げない」(第20条)と定められているからである(37)。例えば、第6条の規定によれば、新ハーグ条約の締約国においてはメキシコ条約の加盟によっても新ハーグ条約の適用は妨げられないことになる(38)が、そのために締約国は第20条の規定に基づき新ハーグ条約が依然として効力を有することを宣言しなければならないのかどうか。この問題は必ずしも明らかではないが、おそらく宣言が必要となるのであろうか(39)。また、モンテビデオ条約の締約国やブスタマンテ法典の採用国がメキシコ条約に加盟する場合には、特別な宣言をしない限り、メキシコ条約が優先することになろう(40)。1 当事者自治の原則
メキシコ条約の準拠法決定における指導原理は、当事者自治である。第7条第1項第1文は、「契約は当事者が選択した法律により規律される」と定め、当事者自治の原則を明確に承認する。これは、従来、モンテビデオ条約の影響下で当事者自治の原則を認めていなかった中南米のいくつかの国にとっては重大な変更をもたらし得る規定である
(41)。また、この当事者自治の原則はいわゆる量的制限が付されていない無制限のものであって(42)、統一商法典(43)や抵触法第二リステイトメント(44)で制限的なアプローチをとっていた米国が起草過程においてこの無制限な当事者自治を支持したことも注目に値する(45)。 (46)。「当事者双方の態度および契約条項から明らか」であればよい。「当事者双方の態度および契[199頁]約条項」という文言は、契約有効視の機能を果たすであろう(47)。当事者による準拠法指定の有効性の問題については、法廷地独自の立場から決定されるのではなく、メキシコ条約の定める準拠法に従って決定される
(48)。つまり、第一次的には当事者が指定した法によって準拠法指定の有効性が判断されることとなる(49)。なお、当事者による管轄合意が、必ずしも当該法廷地法を準拠法として指定したと理解されないことが、第7条第2項で明定されている(50)。当事者は国家法だけでなく、lex mercatoria を準拠法として指定することができる(後述・第三章三3)。
(51)および準拠法の事後的変更(52)も承認されている。2 客観的連結
メキシコ条約によれば、当事者による準拠法指定がない場合には、契約は、最も密接な関連を有する国家の法律により規律される
(53)。そこで問題となるのは、「最も密接な関連を有する国家の法律」とは何かである。この点につき、予備草案およびトゥーソン草案ではローマ条約と同様に、特徴的給付の理論を採用した規定を置いていた。しかし、メキシコ・シティ会議において、特徴的給付の規定は削除され、次の規定が置かれた。すなわち、「裁判所は、最も密接な関連を有する国家の法律を決定するために、すべての客観的および主観的な契約の要素を考慮するものとする」(第9条第2項第1文)という規定である。この規定によって、メキシコ条約は裁判官および仲裁人にローマ条約と比べて一層広い裁量を与えたのである(54)。また、「主観的要素」へ言及することによって、裁判官はいわゆる「仮定的意思」ないし「推定的意思」を考慮することが可能となり、その結果、事実上、契約を有効とする法を準拠法とすることになろう(契約有効視の機能)。というのは、当事者が契約を無効とする法を準拠法とするとは考えられないからである
(55)。さらに留意すべきは、第2項第2文として「裁判所は、国際的組織によって承
[198頁]認されている国際取引法の一般原則をも考慮するものとする」という規定が置かれていることである。この規定によって、客観的連結の場合にも、裁判所は lex mercatoria を適用することが認められることになる(後述・第三章三3)。なお、当事者による法選択がない場合にも、準拠法の分割が認められている
(56)。3 lex mercatoria の適用可能性
メキシコ条約の大きな特徴は、 lex mercatoria の適用可能性を広範に認めた点にある。
まず第一に、当事者は lex mercatoria を準拠法として指定することができる。すなわち、準拠法選択時において通用力を有する国家法だけではなく、国際条約や国際契約に関する国際的な原則を指定することもできるのである。
これに対して、Arroyo 教授は、第一に、「法のない契約(contrat sans loi)」はあり得ないこと、第二に、メキシコ条約第7条の文言(フランス語の条文)が「r
gle de droit」ではなく国家法を意味する「loi」であること、第三に、第17条が「法とはある国家において効力を有する法」と定めていること、第四に、第9条では当事者による法選択がない場合に lex mercatoria を考慮するとしており当事者による lex mercatoria の指定の可能性とは体系的に矛盾すること、などを理由として、lex mercatoria の指定の可能性を条約が認めているか疑問とする
第二に、当事者による準拠法指定がなされていない場合にも、「国際的組織によって承認されている国際取引法の一般原則をも考慮するものとする」(第9条第2項第2文)という規定に基づき、裁判所は lex mercatoria を適用することができる
(59)。メキシコ・シティ会議において米国によって当初提出された案は、むしろ一層野心的なもので、当事者による法選択がない場合には最も密接な関連を有[197頁]する国家の法律に依ることなく、直接に lex mercatoria を適用するという内容のものであった(60)。しかし、相当な議論の後に、結局、妥協案として採用されたのがこの規定である(61)。すなわち、第9条を全体として見れば、第1項によって従来の伝統的な法選択の方法を原則としつつも、第2項第2文によって lex mercatoria の適用の可能性を残しているのである。このように、第9条第2項第2文で lex mercatoria の適用可能性を認めた結果として、客観的連結についても、伝統的な準拠法選択的方法と実質法的方法とが混在することになる(62)。しかし、Juenger 教授によれば、この規定によって裁判所は法の相違点に関する厄介で無駄な調査を省略し、その代わりに1994年の「UNIDROIT国際商事契約原則」(63)などへの依拠を認められるのであって、実務上は上手く機能するであろう、とされる(64)。第三に、第10条によっても lex mercatoria の適用可能性が認められている。すなわち、「前三条の規定に加え、個別事案における正義および公平の要求を果たすために、国際取引法に関する規範、慣習および原則、並びに、一般に承認されている取引の慣習および慣行が適用される」(第10条)。この第10条の規定は、米国の提案に基づきトゥーソン会議において認められた規定で、メキシコ・シティ会議においては全く変更を受けなかった
(65)。「個別事案における正義および公平の要求を果たすため」という文言は、1970年の「国際私法の一般原則に関する米州条約」第9条で採用された考えを再言したものであって(66)、第10条は、この限定された目的のために適用が予定されているのである。この意味で、第9条とは機能が異なることに注意が必要である(67)。この第10条の規定は、「実質法的正義の重要性を強調」するものである(68)。これらの規定の背景にあるのは、「ローマ条約の lex mercatoria に対する意図的な軽視および国際契約の位置づけ(localizing)という機械的方法が国際通商および国際取引の要求に応えないことが明らかとなった」という認識である
(69)。[196頁]
4 強行法規および公序条項の介入法廷地および第三国の強行法規の扱いについて定める第11条は、トゥーソン会議において長時間にわたって議論された規定で、メキシコ・シティ会議にも二つの規定案が提出された。しかし、メキシコ・シティ会議ではたいした議論もなく、結局、ローマ条約と類似の規定が採択された
(70)。すなわち、第11条によれば、法廷地の強行法規については、当該法規が適用を要求する限り義務的に適用しなければならないのに対して、第三国の強行法規の適用については、裁判所の裁量に委ねられている。なお、ここでいう強行法規とは、単なる国内的強行法規ではなくいわゆる国際的強行法規であり(71)、具体的には為替管理法、不正競争防止法、独占禁止法、消費者保護法などが含まれる(72)。前述(第三章二1)したように、この規定によって、消費者や労働者の保護が図られることになる(73)。 (74)も、第11条と同様に、第7条から第10条までの規定に基づく条約の原則的な準拠法決定メカニズムを回避する機能をもつ規定である。米国の代表は、これらの規定の適用範囲を一層制限するよう要求したが、結局、他の諸国に受け容れられなかった(75)。契約の成立および実質的有効性を定める第12条、ならびに、契約の方式を定める第13条は、いずれもローマ条約および新ハーグ条約に倣ったものである。第12条によれば、契約の成立および実質的有効性の問題は、この条約の第2章の規定によることになるため、前述(第三章三3)のように、例えば lex mercatoria としての「UNIDROIT国際商事契約原則」の適用もあり得る
(76)。第13条は、方式について契約有効視の原則を表明するものである
(77)。この条約によって指定される契約の実質の準拠法、契約締結地法または契約履行地法のいずれかの方式を満たしておれば足りる(78)。 五 準拠法の適用範囲第14条は、準拠法の適用範囲について、例示列挙する。具体的には、契約の解釈の問題、当事者の権利・義務の問題、契約上の義務の履行および不履行の効果の問題(損害賠償を含む)、時効の問題、契約が有効とならない場合の効果の問題などである。
いわゆる代理の外部問題については、ローマ条約では条約の適用範囲から除外されていたが、メキシコ条約では第15条によって、lex mercatoria を考慮することが明示されている
(79)。これによって、国際取引実務の一層の調和が図られるであろう(80)。なお、準拠法の適用範囲だけでなく準拠法の決定の問題にも関係するが、第16条は、将来における国際契約についての登録・公示のためのデータ・ベースの創設の可能性をも視野に入れて、「国際契約が登録または公示されるべき国家の法律は、国際契約に関係する公示に関する全ての問題を規律する」と定める。この規定によって、当該データ・ベースの所在地国法が、署名、正本、登録などの概念を定めることになろう
(81)。メキシコ条約のこの他の規定としては、条約の解釈・適用に関する規定(第3条
(82)および第4条(83))、反致の排除を定める規定(第17条(84))、公序条項(第18条(85))、連邦国家に関する規定(第22条から第24条(86))などがある。 目次に戻る以上のように、メキシコ条約は、ローマ条約および新ハーグ条約と比べていくつかの斬新な考え方を採用している。理論的観点からいえば、特に、lex mercatoria の準拠法適格性を認めた点、および、特徴的給付の理論を採用しなかった点が、
[194頁]興味深いように思われる。以下では、この二点を中心に、ローマ条約および新ハーグ条約との比較によって若干の検討を進め、我が国への示唆を導き出したい。1 ローマ条約および新ハーグ条約との比較
ローマ条約においては、lex mercatoria を含む非国家法の準拠法適格性は認められていないと一般に解されている
(87)。例えば、Collins 教授は、当事者が非国家法を準拠法として指定することができないのは、ローマ条約第1条第1項の「異なる『国』の法の間の選択」という文言から明らかであると主張する(88)。また、ローマ条約のフランス語正文において「regle de droit」ではなく「loi」という文言が使用されていること、国際私法の目的が国家法相互間の抵触の解決にあること、なども非国家法の準拠法適格性を否定する理由として挙げられている(89)。さらに、ローマ条約起草当時における、lex mercatoria の存在に対する疑念および lex mercatoria の認識の困難性なども、準拠法適格性を否定する理由であったかもしれない(90)。従って、いずれにせよ、当事者がローマ条約第3条に基づいて lex mercatoria を準拠法として指定したとしても、この指定はいわゆる抵触法的指定とは認められず、第4条に従って客観的に準拠法決定がなされることになる。こうして選択された準拠法上許される範囲で、当事者が指定した lex mercatoria が適用されることになろう(いわゆる実質法的指定)(91)。次に、1985年の外交会議で採択された新ハーグ条約について見ると、特に当事者による抵触法的指定としての lex mercatoria の指定の可能性につき、起草過程においてかなり白熱した議論が行われた。結局、明示的な決着はつかなかったが、議論を詳細にみれば、準拠法適格性を認めることにやや否定的な雰囲気のようであった
(92)。これら二条約に対して、メキシコ条約は前述(第三章三3)のように、明示的
[193頁]に非国家法である lex mercatoria の準拠法適格性を承認する。これは、当事者による明示の指定がある場合はもちろん、裁判所による客観的連結の場合にも認められている。また、これ以外にも、準拠法選択条項の有効性の問題、契約の成立、有効性および方式の問題、代理の外部関係の問題などについても lex mercatoria の適用があり得る。2 メキシコ条約の相違の理由
では、どうしてメキシコ条約では lex mercatoria の準拠法適格性が認められるに至ったのだろうか。
まず第一に考えられる理由は、「時代の流れ」である。すなわち、最近において、国際取引一般に関する超国家的な規範が急速に明確な形をとり始めると同時に、国家の側でも国際取引保護のために当該超国家的規範の存在を認め、さらにはこれを受容しようとする傾向が進んだという事実である
(93)。超国家的規範の明確化の例としては、1980年の「国際物品売買契約に関する国際連合条約」(94)(ウィーン条約)の成立を挙げなければならないであろう。この条約はその後順調に加盟国を拡張し、現在では米国、ロシア、中国および西ヨーロッパの多くの国を含む約50カ国で発効しており、lex mercatoria の代表的存在となっている。また、このウィーン条約の成功を起爆剤として、より自覚的に lex mercatoria の成文化を図る事業がいくつか行われてきた。その中でもメキシコ条約にとって特に重要なのは、1994年に公刊された「UNIDROIT国際商事契約原則」(95)である。メキシコ・シティ会議においても、第9条第2項の「国際的組織によって承認されている国際取引法の一般原則」として「UNIDROIT国際商事契約原則」への言及がなされており(96)、「UNIDROIT国際商事契約原則」の成立がメキシコ条約における lex mercatoria の準拠法適格性の容認について強い影響を与えたといえよう。他方、国家による超国家的規範の受容の例としては、1981年のフランス新民事訴訟法(第1496条)や1986年のオランダ民事訴訟法(第1054条)などが挙げられる(97)。この[192頁]ような最近の各国の仲裁法における非国家法の適用可能性の承認という傾向とともに、多くの仲裁規則においても国際取引慣行を重視する姿勢が強化されている(98)。その結果、国際商事仲裁においては伝統的な国際私法規則によって国家法の間の法選択を行うという必要性は必ずしもなくなり、lex mercatoria の直接適用可能性が増大した(99)。これは、他方で伝統的な国際私法理論に固執する国家裁判所との間で事件処理の齟齬を顕著にするという効果をもたらすとともに、逆に国家裁判所が国家法に固執する理由は何かという問題提起としての役割を果たした(100)。この問題を検討した結果として、メキシコ条約は、必ずしも非国家法の適用を排除する理由はないという結論に達したといえよう(101)。すなわち、メキシコ条約が非国家法の準拠法適格性を認めたことは、「超国家的なグローバル・ルールがすでに存在し、その結果、国際契約においては、これまでのような国家法への依存の時代は終わりつつあるとの現実認識の強い発露にほかならない」(102)。第二の理由として挙げられ得るのは、メキシコ条約にかける米州諸国の意気込みである。従来、米州のいくつかの諸国では当事者自治の原則が認められておらず
(103)、契約に関する国際私法理論については後進国であるという印象を与えていた(104)。条約の起草者は、メキシコ条約の作成を機会に、一気に世界的に見ても進歩的な立場を示したいという気概を有していたのではなかろうか。第三の理由は、米国(米国代表としての Juenger 教授を含む)の影響力であろう。米国の代表団は、メキシコ条約の作成交渉に臨んで、予め、基本的方向性についての方針を確認していた。その方針の一項目として、すべての当事者の利益の均衡を図ることよりも予見可能性や取引慣行に優先的地位を与えるべきこと、当事者自治に最大限の支持が与えられるべきこと、が挙げられていた
(105)。実際に、米国はこの方針に従って、トゥーソン会議およびメキシコ・シティ会議において、lex mercatoria の適用可能性を認める案の提案者となり、最大の支持者としての役割を果たした。[191頁]
第四の理由は、メキシコ条約作成の際に念頭に置かれた主たる規律対象が商取引であったこと、である(106)。対等商人間の商取引に関しては、弱者保護の要請等の公権力による後見は必ずしも必要ではなく、一層広範に当事者ないし取引社会の自治に委ねることが可能となる(107)。3 小 結
メキシコ条約が lex mercatoria の準拠法適格性を認めた理由のいくつかは、我が国においてもかなりの程度妥当するのではなかろうか。とりわけ、我が国における国際取引の重要性に鑑みれば、「時代の流れ」に抗することは得策でなかろう。また、地域統合の度合いの低い東アジア地域に位置する我が国において、労働契約を別にすれば、国際契約問題の比重として商取引が高くなるように思われる
(108)。理論的にも、当事者自治の原則が契約自由の原則の論理的発展であると考え得るならば、非国家法であっても準拠法指定の適格対象から排除すべき理由はないともいえる
(109)。実際的にも、当事者による lex mercatoria の指定を抵触法的指定として認めることは、当事者の期待に沿い、取引の安全にも資するであろう(110)。法例第7条の解釈論はさておき(111)、少なくとも立法論としてはメキシコ条約の立場は十分参考になろう(112)。1 ローマ条約および新ハーグ条約との比較
ローマ条約は、当事者による準拠法選択がない場合には、「最も密接な関連を有する」国の法による(第4条第1項)としつつ、契約を特徴づける履行をなすべき当事者が契約当時に常居所を有する国に最も密接な関連を有するものと推定する(同条第2項)。この第2項は、特徴的給付の理論を採用した規定であり、この理論に基づく推定規定を置くことで予見可能性および法的安定性の確保が図られる、と説明されている
(113)。[190頁]
新ハーグ条約も、当事者による準拠法選択がない場合には、原則として売主の営業所所在地法によると定め(第8条第1項)、特徴的給付の理論を採用する。但し、製品の買主となることが多い途上国からの要求に基づき、買主の営業所所在地法を適用すべき場合の規定(第8条第2項)や、コモンロー諸国からの要求に基づき、例外的に、より密接な関連を有する国の法の適用を認める例外条項などが置かれている(114)。これら二条約とは異なり、メキシコ条約においては、前述(第三章三2)のとおり予備草案およびトゥーソン草案では特徴的給付の理論が採用されていたにもかかわらず、最終的には、メキシコ・シティ会議において特徴的給付の理論に基づく推定規定の採用を拒絶した
(115)。2 メキシコ条約の相違の理由
ローマ条約や新ハーグ条約と異なり、メキシコ条約が特徴的給付の理論を採用しなかった理由は何か。
まず、メキシコ条約の起草者が理由として挙げるのは、ローマ条約のような推定規定は混乱を招くとともに、必ずしも必要とは考えられなかったこと
(116)、特徴的給付の理論が明確な目的を有するものではないこと(117)、などである。具体的には、第一に、多くの場合にいずれの履行が特徴的なものであるかの判断が困難である。例えば、販売店契約、出版契約、交換取引などの比較的単純な契約であっても、いずれの履行が特徴的なものか必ずしも明らかであるとはいえず、さらに一層複雑な契約においてはなおさらである(118)。第二に、特徴的給付の理論によれば、物品や役務を供給する当事者の本拠地法を適用するという意味において当該当事者を有利な立場に置く。しかし、当該当事者は恒常的に国際取引に従事していることが多く、その顧客と比べてリスク評価をより上手に行うことができ、従って法選択条項や法廷地選択条項または仲裁条項の活用によって、種々のリスクの低減を図ることが可能である。にもかかわらず、このような当事者を有[189頁]利に立場に置くのは不当である(119)。「このような不明確で中途半端な規定こそが、不確実性を増大させ」(120)、混乱を招くと考えられたようである。次に、起草過程における米国ないし米国代表である Juenger 教授の影響力も理由の一つとして挙げなければならないであろう。米国としては、当初は特徴的給付の理論の採用に反対する方針は取っていなかったが、途中から反対の立場へ方向転換したようである
(121)。この理由として、各種事件への特徴的給付の理論の妥当性に対する疑問が挙げられている(122)が、この背景には、おそらく特徴的給付の理論を敵視する Juenger 教授の影響があったのであろう(123)。3 小 結
当事者による準拠法選択がない場合の準拠法決定方法につき、特徴的給付の理論に基づく推定規定を採用するか否かは、結局のところ、当該準拠法選択規則の柔軟性の問題である。
我が国の法例第7条の解釈として、近時の判例および学説の多くは、当事者による明示の準拠法指定がなくとも直ちに行為地法を適用するのではなく、当事者の黙示の意思を探求すべきであるとする(黙示意思探究の理論)。この理論は、実質的には「最も密接な関連を有する国家の法律」によるという規定(メキシコ条約第9条第1項)と同様の機能を果たすものである
(124)。しかし、この理論によれば具体的に妥当な結論の確保は可能であるが、他方で結果の予測可能性や法的安定性が損なわれると批判される(125)。そこで、いかにしてこの両者の調和を図るかが、現在の我が国の解釈論上の課題となっている。この課題に応える一つの方法が契約の類型毎に最密接関連法を提示する試みであるが、その試みの一つとして特徴的給付の理論を中心とした契約類型毎の連結規則を導入する解釈を提示する見解(126)などが提唱されている。また、立法論として、同様に、一定の契約類型に限って特徴的給付の理論に基づく規定を導入しようとする見解が提唱されている(127)。[188頁]
メキシコ条約では、特徴的給付の理論は拒絶された。これをどう受けとめるべきであろうか。我が国の裁判例の実証的な分析によっても、特徴的給付の理論の限界が示されているように(128)、特徴的給付の理論にすべての契約に通じる一般理論としての地位を与えることはできないであろう(129)。特徴的給付の理論の理論的根拠および実際的妥当性については、まだまだ納得できない点も多い。但し、最も密接な関連の原則の下で推定規定を置くという方法自体は、一応の指針を与えるものとして、予測可能性の確保の観点から積極的に評価されるべきではなかろうか。推定規定の内容は、むしろ立法例・裁判例や学説等の経験および知識の蓄積から形成していくべきであり、特徴的給付の理論はその際に考慮される一要素に過ぎないと考えるべきであろう(130)。1 当事者による準拠法指定の有効性の判断基準
当事者による準拠法指定の有効性の判断基準について、ローマ条約(第3条第4項)および新ハーグ条約(第10条)は、原則として当事者が指定した法によるという立場(指定実質法説)を採用した。これら二条約が、論理的には循環論であるとも批判される指定実質法説を採用した理由としては、統一条約という性格から各締約国における統一的な解釈・適用を確保するためであるともいえる
(131)。メキシコ条約(第12条)は、「条約の第二章に従い適切な規則により規律される」と定め、第2章の原則規定である第7条によれば当事者が指定した法律によるとされているため、指定実質法説を採用しているとも解し得る。しかし、ここで留意すべきは、メキシコ条約の第2章で lex mercatoria の適用可能性が広範に認められていることである。「適切な規則により規律される」という文言の解釈いかんでは、例えば、「UNIDROIT国際商事契約原則」によって判断されることもあり得よう(132)。この考え方は、我が国の解釈論・立法論にとって参考とはならないで[187頁]あろうか(133)。2 準拠法の分割
当事者による分割指定については、ローマ条約(第3条第1項第3文)、新ハーグ条約(第7条第1項第3文)、メキシコ条約(第7条第1項第3文)のいずれもが揃ってこれを認めている。これに対して、客観的連結の場合の準拠法の分割については、三条約ともに、かなり限定した範囲でしか認めない。ローマ条約(第4条第1項但書)およびメキシコ条約(第9条第3項)は、分離可能な部分であって別の国とより密接な関連を有する場合に限って、例外的に、別の国の法を準拠法とすることを認めるに過ぎない。また、新ハーグ条約では、客観的連結の場合の準拠法の分割については明文の規定が置かれておらず、これを否定する見解も多い"。我が国の立法論としては、疑義を避けるためにも、分割指定および客観的連結のいずれの場合においても準拠法の分割が可能である旨を、明文によって定めるべきであろう
(135)。3 準拠法の事後的変更
準拠法の事後的変更については、ローマ条約(第3条第2項)、新ハーグ条約(第7条第2項)、メキシコ条約(第8条)の三条約がいずれも認めている。ハーグ会議、欧州、米州の条約が揃って同一の立場を採用したことは、事実上の世界標準(de fact standard)として大きな意義を有するし、我が国の解釈論・立法論にも十分参考となろう
(136)。4 第三国の国際的強行法規
ローマ条約(第7条)では第三国の国際的強行法規の適用可能性が認められていたが、新ハーグ条約ではこれを認める提案が僅差で否決され、結局、規定は置かれなかった
(137)。この相違の理由としては、新ハーグ条約の適用範囲が国際売買契約という限定された類型であって、かつ、消費者売買が除外されていたため特に弱者保護等の考慮が不要であったとも考えられる。メキシコ条約の適用範囲[186頁]は、ローマ条約と同様に広範なものであり、消費者保護等の考慮から、第三国の国際的強行法規の適用可能性を認めている(第11条)。我が国の立法論においても、適用範囲を広く取る限りは、このような一般規定が必要となろう(138)。 目次に戻るメキシコ条約を実務的観点から評価すれば、国際契約をできる限り有効と解し、より市場志向的な解決を目指す条約であるといえよう
(139)。また、理論的側面に関しても、十分な比較法的な検討と慎重な議論の後に、時代の流れを見据えた種々の進歩的な考えを提示した点は、過小評価されるべきではない(140)。とりわけ、国際取引社会の現実を認識した上で、メキシコ条約が lex mercatoria の準拠法適格性を認めた点は特筆すべきであろう。これは、国際取引紛争の規律において国家法の間の法選択という伝統的な方法論をとることに対する不信の表明でもある。超国家的法規範である lex mercatoria の成文化・明確化が進んでいる国際契約法の分野において、抵触法的正義と実質法的正義の峻別に果たしてどれほどの意味があるのであろうか。確かに、各国の貿易・為替管理法や消費者保護法等のいわゆる国際的強行法規については、別途の考慮が必要であろう。しかし、メキシコ条約のように、これらについての特別の考慮を払えば、あとは当事者に最大限の自由を与えてもかまわないのではなかろうか。すなわち、当事者が lex mercatoria を準拠法として指定した場合には、これを認めることに不都合がないのではなかろうか。また、当事者が準拠法を指定していない場合には、両当事者にとって中立的で国際取引を固有の規律対象とする lex mercatoria を適用することも、適正かつ公平な紛争解決という観点から見る限り、あながち不当ともいえないのではなかろうか。メキシコ条約は、国際私法学に対してこのような問題を提起しているといえよう。
[185頁]
[付記]本稿の執筆に際し、関西国際私法研究会および帝塚山大学法政策学部研究会の諸先生方から貴重な御意見を頂戴した。この場を借りて心より深く御礼申し上げる次第である。
(1) 米州機構(Organization of American States; Organizaci
このメキシコ条約は、スペイン語、英語、フランス語およびポルトガル語によって作成されており、これらはいずれも等しく正文とされている(第30条)。なお、英文の条文は 33 I. L. M. 733 (1994) に、仏文の条文は Rev. crit. d. i. p. , 84 (1995) p.173 に、それぞれ掲載されている(英語条文については本稿の末尾に【資料】として添付している)。また、メキシコ条約に関する邦語文献として、曽野和明「国際契約」ジュリ1126号119頁(1998年)がある。
(4) 拙稿「国際物品売買契約に関する適用法規決定と法例七条、ウィーン条約およびハーグ条約の相互関係」香川13巻4号139頁(1994年)、同「ヨーロッパ契約法原則について」香川16巻1号132頁(1996年)などを参照。 (5) 但し、現時点においては締約国が少ないためにメキシコ条約が適用されることは殆どない(後出・註(28)を参照)。しかし、今後、締約国数が増加するにつれ、実務上もメキシコ条約の重要性は高まってこよう。また、国際商事仲裁において適用される可能性もある。 (6) ローマ条約については、野村美明=藤川純子=森山亮子(訳)「契約債務の準拠法に関する条約についての報告書(一)〜(六・未完)」阪法46巻4号165頁、5号109頁(1996年)、6号263頁、47巻1号125頁、2号293頁、3号223頁(1997年)、岡本善八「国際契約の準拠法 ―EEC契約準拠法条約案に関して― 」同法32巻1号1頁(1980年)[184頁]などを参照。 (7) ローマ条約がメキシコ条約の多くの規定のモデルとされたことにつき、Burman, International Conflict of Laws, The 1994 Inter-American Convention on the Law Applicable to International Contracts, and Trends for the 1990s, 28 Vand. J. Transnat'l L. 367 (1995), at 377. また、ローマ条約と比べると程度は低いものの、新ハーグ条約も同じくモデルとされた。Ibid. (8) Juenger, The Inter-American Convention on the Law Applicable to International Contracts : Some Highlights and Comparisons, 42 Am. J. Comp. L. 381 (1994) [hereinafter cited as "Juenger-1994"], at 382. (9) 新ハーグ条約については、松岡博=高杉直=多田望「国際物品売買契約の準拠法に関するハーグ条約(1986年)について」阪法43巻1号1頁(1993年)、Arthur Taylor von Mehren /松岡博=高杉直=多田望(訳)「国際物品売買契約の準拠法に関するハーグ条約についての報告書」香川13巻3号160頁(1993年)および同158頁所掲の文献一覧を参照。 (10) Arroyo, La Convention interam(18) アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ、エクアドル、エルサルバドル、ホンジュラス、メキシコ、ニカラグア、パナマ、パラグアイ、ペルー、アメリカ合衆国、ウルグアイ、ベネズエラ。
(19) イタリア、ルーマニア、ロシア連邦、スペイン。
(20) Juenger-1997, supra note 17, at 203.
(21) Juenger-1994, supra note 8, at 382.
(22) Parra-Aranguren, supra note 15, at 319 によれば、トゥーソン会議で既に実質的な合意に達していたからであるという。なお、メキシコ・シティ会議における唯一の重要な変更は、客観的連結に関して特徴的給付の理論の採用が拒絶された点であろう(後出・第三章三2)。
(23) 1998年1月16日現在。米州機構の国際法務担当者への照会による。
(24) 但し、各章の表題とは異なる性質の規定が置かれているように思われる部分も散見される。例えば、「条約の適用範囲」と題する第一章において、条約の適用・解釈の規定(第3条・第4条)が置かれている。従って、以下では、筆者なりに条文の順序を一部再構成して論述する。
(25) 但し、米州機構の加盟国以外(例えば我が国)でもメキシコ条約に加入することは可能である。この点につき、Parra-Aranguren 教授は、米州諸国だけではなく世界中の国が当事国となるよう期待されると述べている。Parra-Aranguren, supra note 15, at 320.
(26) 条約の時間的適用範囲については、第19条が「この条約の規定は、当事国において、当該国家において条約が発効した後に締結された契約に、適用される」と規定している。
(27) 但し、起草過程において、一方的な意思表示も適用範囲にあるとの了解がなされている。Parra-Aranguren, supra note 15, at 305.
(28) このように、複数の「当事国」に客観的な関連を有する場合でなければならないため、現在のところ、メキシコおよびベネズエラと関連を有する契約だけにしか条約は適用されないことになる。また、Arroyo 教授は、事実上、いずれかの当事国の法が準拠法として指定されることが多くなるであろうと述べる。Arroyo, supra note 10, at 182.
(29) 第1条第3項本文は、国家契約への条約の適用につき、「契約当事者が明示的に条約の適用を排除していない限り、国家または国家の代理人もしくは機関が当事者である契約に適用される」と明定している。
(30) 「但し、いずれの国家も、この条約の署名、批准または加入の時に、当該国家または[182頁]当該国家の代理人もしくは機関が当事者である全てまたは一定の種類の契約に条約が適用されないことを宣言することができる」(第1条第3項但書)。
(31) この規定は、アメリカ合衆国の要請に基づいて挿入された。Parra-Aranguren, supra note 15, at 305. また、この規定によって国家契約の適用除外宣言をすることも可能である。その意味では第1条第3項但書は不要ともいえよう。
(32) 第21条第1項を参照。Parra-Aranguren, supara note 15, at 305.
(33) Juenger-1997, supra note 17, at 204.
(34) 第5条を参照。
(35) 第2条は、「この条約により指定される法律が当事国でない国家の法律であったとしても、当該法律が適用される」と定める。
(36) Arroyo, supra note 10, at 181. 但し、メキシコ条約の適用される国際契約は、あくまでも複数の「当事国」に関連性を有するものでなければならない(第1条第2項)ため、これ以外の国際契約に対しては従来通りの国家法である国際私法規則の適用があり得る。
(37) 第20条の規定は、条約の抵触に対する解決方法の通知を保証するために、長時間の議論の後に、米国の要求に基づき挿入されたものである。Burman, supra note 7, at 380.
(38) Parra-Aranguren, supra note 15, at 312.
(39) See, Burman, supra note 7, at 380.
(40) Arroyo, supra note 10, at 181.
(41) Burman, supra note 7, at 380; Juenger-1997, supra note 17, at 204. なお、この点についてJuenger 教授は「大きな前進」と評価する。Juenger-1994, supra note 8, at 386.
(42) 従って、契約とは全く関連のない国の法を準拠法として指定することができる。Juenger-1997, supra note 17, at 204.
(43) Uniform Commercial Code, Sec.1-105(1).
(44) Restatement, Second, Conflict of Laws, Sec.187.
(45) Burman, supra note 7, at 380.
(46)「この選択に関する当事者の合意は、明示されるか、または、明示の合意のないときには、全体を考慮に入れて、当事者双方の態度および契約条項から明らかでなければならない」(第7条第1項第2文)。
(47) つまり、この文言によって、裁判所は、契約が有効となる法を当事者が準拠法として指定した、という結論を導き出すであろう。Juenger-1994, supra note 8, at 389.
(48)「(1) ……準拠法の選択に関する当事者の同意の実質的有効性は、この条約の第二章に従い適切な規則により規律される。/ (2) 前項にかかわらず、当事者の一方が正式に同意していなかったことを証明するため、裁判官は、常居所または主たる業務地を考慮して、準拠法を決定する」(第12条)。 (49) 但し、lex mercatoria の適用可能性があること(第12条第1項に基づく第10条の準用)や、一方が沈黙の場合については当該当事者の常居所地法等によって判断される可能性があること(第12条第2項)に、注意が必要である。 (50) 「当事者による特定の法廷地の選択は、必ずしも準拠法の選択を伴うものではない」(第7条第2項)。この規定については、第5条e号で「法廷地選択の合意」が条約の適用除外事項とされていることから、メキシコ会議での議論においては削除すべきとの意見も出された。Parra-Aranguren, supra note 15, at 307. なお、Juenger 教授によれば、この規定は、否定的に表現されているが、実は、法廷地が自国法を適用することを認めるという英国法上の「法廷地選択は法選択(qui elegit judicem elegit ius)」という推定を導入するものであって、外国法の調査に伴う費用の増加および時間的な遅延を回避することに役立つと主張される。Juenger-1994, supra note 8, at 388 (51)「この選択は、契約の全部または一部に関するものでもよい」(第7条第1項第3文)。 (52)「当事者は、それまで契約を支配する法が当事者により選択された法であったかどうかにかかわらず、それ以外の法に当該契約の全部または一部を服させることを、いつでも、合意できる。但し、当該変更は、当初の契約の方式に関する有効性および第三者の権利に影響しない」(第8条)。 (53)「当事者が準拠法を選択しなかった場合、または、当事者の法選択が無効となる場合、契約は、最も密接な関連を有する国家の法律により規律される」(第9条第1項)。 (54) Juenger-1997, supra note 17, at 205. (55) Ibid. (56)「前二項にかかわらず、契約の一部が残余部分から分離可能である場合、および、当該部分が別の国家とより密接な関連を有する場合、例外的に、契約の当該部分には当該国家の法律が適用される」(第9条第3項)。 (57) Arroyo, supra note 10, at 182. (58) Juenger 教授の他に、特にメキシコ・シティ会議の第一委員会の議長であった Parra-Aranguren 教授が、明確に lex mercatoria の指定を認めたものであると断言している。Parra-Aranguren, supra note 15, at 308. (59) 第9条第2項第2文の「国際的組織」には、 lex mercatoria の作成母体を全て含む[180頁]ものと理解されている。Parra-Aranguren, supra note 15, at 308. 「国際的組織によって承認されている国際取引法の一般原則」としては、特に「UNIDROIT国際商事契約原則」(後出・註(63)を参照)や国際商業会議所(ICC)の「信用状統一規則」などが含まれるであろう。Burman, supra note 7, at 381. また、既に多数の締約国を得ているウィーン条約なども含まれ得る。さらに、多数の国の加盟を得る前の条約であっても、広範な合意を得て採択された国際規則も含み得ると言えるかもしれない(例えば、50以上の国と多数の国際機関の参加による外交会議で採択された「UNIDROIT国際ファクタリング条約」や「UNIDROIT国際ファイナンス・リース条約」など)。See, ibid., footnote 36. (60)「当事者が準拠法を選択しなかった場合、または、この選択が有効でないと判明した場合、契約は、国際的組織によって承認されている国際取引法の一般原則によって規律される」という規定であった。Arroyo, supra note 10, at 183. (61) Ibid.; Juenger-1997, supra note 17, at 206. (62) 従って、具体的事件において、必ずしも空間的に位置づけられる密接な国家法の適用によって解決されるとは限らない。Arroyo, supra note 10, at 184. なお、Juenger 教授は、「伝統的な『法律関係の本拠』という考え方と lex mercatoria という全く相容れない考え方を混在させるものであると非難され得る」といい( Juenger-1997, supra note 17, at 206)、また「純正主義者にとっては不満であろうし、乱暴な折衷主義と映るかも知れない」とも述べている。 (63)「UNIDROIT国際商事契約原則」については、廣瀬久和「ユニドロア(UNIDROIT)国際商事契約原則(仮訳)」中川ほか編『日本民法学の形成と課題(下)』(有斐閣・1996年)1373頁を参照。ジュリ1131号65頁以下の特集も参照(校正時に接した)。 (64) Juenger-1994, supra note 8, at 391. 賢明な裁判所および仲裁人は、独特の国家法規則よりも高名な国際的な専門家集団によって作成された原則を選好するものと期待され得るし、準拠法指定をしなかった当事者がより高品質の法の適用に不満を持つことはないであろう、と Juenger 教授は述べる。Juenger-1997, supra note 17, at 206. (65) Burman, supra note 7, at 381. (66) Parra-Aranguren, supra note 15, at 308. (67) Arroyo, supra note 10, at 183. これに対して、Burman, supra note 7, at 381は、この規定の目的を、国際取引で普通に認められる取引慣習の発展および当事者の意思を認める範囲を増大しようとするものである、と捉えている。しかし他方で、Burman, supra note 7, at 381によれば、第10条の規定は第7条に基づく当事者の明示の準拠法指定よりも優先すると読み得るとし、この結果は、当事者自治を認めない中南米諸国の代表に[179頁]とって、合理的な均衡点と考えられたとする。 (68) Juenger-1994, supra note 8, at 392; Parra-Aranguren, supra note 15, at 309. (69) Juenger-1994, supra note 8, at 389-390. (70)「(1)前四条の規定にかかわらず、法廷地の法律の規定が強行的な適用を要求する場合には、当該規定は必ず適用される。/ (2)契約が密接な関連を有する別の国家の法律の強行規定を適用するかどうかを決定することは、裁判所の裁量に委ねられる」(第11条)。 (71) 国際強行法規については、松岡=高杉=多田・前掲註(9)54頁を参照。 (72) Juenger-1994, supra note 8, at 392. (73) 前出・註(33)の部分を参照。 (74) 第18条は、「この条約により指定される法律の適用は、法廷地の公序に明らかに反する場合にのみ、排除されうる」と規定する。 (75) Burman, supra note 7, at 382. (76)「UNIDROIT国際商事契約原則」は、契約の成立の問題について第二章(第2.1条〜第2.22条)で、契約の有効性の問題について第三章(第3.1条〜第3.20条)で、それぞれ詳細な規定を置いている。規定内容については、廣瀬・前掲註(63)1379頁を参照。 (77) Burman, supra note 7, at 382. (78) ローマ条約第9条や新ハーグ条約第11条と比較して、より有効視の機能が強まっている。 (79)「第10条の規定は、代行者が本人または代理人、会社もしくは法人を拘束しうるかどうかを決定するときに、考慮される」。 (80) Burman, supra note 7, at 382. (81) Parra-Aranguren, supra note 15, at 311. (82) 第3条は、「この条約の規定は、国際取引の発展の結果として利用される新たな契約態様に対して、必要かつ可能な調整をした上で、適用される」と規定する。これは、トゥーソン草案をそのまま引き継いだもので、インターネット上における取引など、科学技術の進歩に関連する問題の処理を念頭に置いたものである。Parra-Aranguren, supra note 15, at 306. (83) 第4条は、「この条約の解釈および適用において、この条約の国際的性格および適用における統一性の促進の必要性を考慮する」と定める。これは、最近の多くの国際条約(例えば、ローマ条約第18条、新ハーグ条約第16条、ウィーン条約第16条、ジュネーブ代理条約第6条第1項など)に従ったものである。 (84) 第17条は、「この条約において、『法律』とは、抵触法に関する規則を除く、ある国家の現行法を意味するものと解される」と定め、反致の排除を定める。但し、当事者が明示に抵触規則を選択した場合には、当該抵触規則が適用される。Parra-Aranguren, supra note 15, at 311. (85) 前出・註(74)を参照。 (86) 米国の支持を得た、カナダの提案に基づき、第22条から第24条までのいわゆる連邦条項が採択された。 (87) 例えば、Lando, Some Issues Relating to the Law Applicable to Contractual Obligations, 7 King's College L. J. 55 (1996), at 60. (88) DICEY & MORRIS, CONFLICT OF LAWS, 12th ed. (1993), at 1218 [Collins]. (89) See, KASSIS, LE NOUVEAU DROIT EUROPEEN DES CONTRATS INTERNATIONAUX (LGDJ,1993), p.374. (90) ローマ条約が lex mercatoria の準拠法適格性を認めないことを理由として、Juenger 教授は、ローマ条約が時代遅れの遺物であると評している。Juenger-1994, supra note 8, at 384. (91) Arroyo, supra note 10, at 182; Lagarde, Le nouveau droit international priv(92) 外交会議では、当事者による lex mercatoria の指定を許容するための提案は、僅差で否決されている。しかし、このことが lex mercatoria の指定を認めない趣旨であると反対解釈されるべきかについては見解の分かれるところであり、新ハーグ条約の報告書によれば、この問題は条約の射的範囲外であるとされている。松岡=高杉=多田・前掲註(9)52頁を参照。
(94) この条約については、曽野和明=山手正史『国際売買法』(青林書院・1993年)を参照。
(96) Parra-Aranguren, Conflict of law aspects of the Unidroit Principles of International Commercial Contracts, 69 Tulane L. Rev. 1239 (1995), at 1250.
(97) これらはいずれも、lex mercatoria を仲裁判断の基準とすることを認める。See, Berman & Dasser, The "New" Law Merchant and the "Old": Sources, Content,and Legitimacy, in CARBONNEAU (ed.), LEX MERCATORIA AND ARBITRATION (Transnational Juris, 1990) 21, at 33. また、拙稿・前掲註(4)香川16巻1号104頁を参照。1965年に作成された「投資紛争解決条約」(第42条第1項)、1985年の「UNCITRAL国際商事仲裁モデル法」(第28条)なども非[177頁]国家法の適用可能性を認めたものと解されている。曽野・前掲註(3)121頁。
(99) Juenger-1997, supra note 17, at 203. 例えば、当事者の準拠法選択がない場合に、国際私法規則によって指定される準拠国家法に優先してウィーン条約を適用した国際商業会議所(ICC)の仲裁判断がある。山手正史「ウィーン売買条約の展開 ――適用可能性の拡張―― 」東北学院48号234頁(1996年)227頁を参照。
(100) 当事者は、仲裁に付することによって、国際取引のニーズに合致するよう定められた法規則(lex mercatoria)を選択することができるのに、訴訟を選択すれば国家法の選択に追いやられてしまうのはどうしてだろうか、と Juenger 教授は問いかける。Juenger-1997, supra note 17, at 205.
(101) Juenger-1997, supra note 17, at 205. 当事者に非国家法の指定を禁止することによって得られる利益は、学理上の利益を除き、何もない。
(102) 曽野・前掲註(3)121頁。なお、前出・註(69)も参照。
(103) See, Juenger-1997, supra note 17, at 195.
(104) See, Juenger-1997, supra note 17, at 195 and 203. この後進性の原因の分析として、id., at 196.
(105) Burman, supra note 7, at 378. もっとも、このような方針は、Juenger 教授の考えが反映されたものかもしれない。Juenger 教授は、「国際標準として不十分で、時代遅れで不公正であり得る国家法によるよりもむしろ、取引実務および取引のニーズに応じた、現代的で十分に考慮された法によって解決される方が、契約当事者にとって幸せであるに違いない」とか、「一方当事者に対して本拠地法適用という利益を与えるよりも、超国家的標準を適用する方が一層公正である」と主張されている。
(106) 「消費者契約や労働契約よりもむしろ商取引契約に関心を置いた規定とすべきこと」という方針を米国は取っていた。Burman, supra note 7, at 378.
(107) これに対して、ローマ条約においては、欧州の地域統合の進展および地理的近接性等の理由から、消費者契約など非商人が関与する国際契約の比重はメキシコ条約よりも一層高くならざるを得ないであろう。
(108) 我が国の契約準拠法に関する判例の分析からも、このような判断が可能であろう。詳細な判例分析として、奥田安弘「わが国の判例における契約準拠法の決定 ――契約類型毎の考察―― 」北大法学論集45巻5号695頁(1994年)を参照。従って、この意味では地域統合の進んだ欧州のモデル(ローマ条約)よりも米州のモデル(メキシコ条約)の方が参考になるともいえよう。
(109) 曽野・前掲註(3)120頁。 (110) Arroyo, supra note 10, at 185. これに対して、当事者による法選択がない場合(客観的連結の場合)に lex mercatoria を適用することは、場合によっては、法的安定性を害することがあり得るかもしれない。Ibid. (111) 法例第7条の解釈論については、畑口紘「援用可能統一規則の適用」澤木敬郎=(134) 松岡=高杉=多田・前掲註
(9)46頁を参照。 (135) 藤川純子「契約準拠法の分割について」国際公共政策研究1巻1号87頁(1997年)101頁。立法研試案も、双方の場合において準拠法の分割を認める明文規定を置いている(第1条第3項および第2条第3項)。国際私法立法研究会・前掲註(112)277頁および282頁。 (136) 準拠法の事後的変更が認められる理由については、松岡・前掲書註(118)175頁などを参照。 (137) 松岡=高杉=多田・前掲註(9)54頁を参照。 (138) 立法研試案(第4条)も、消費者契約や労働契約などの各則的規定を置かずに、「…消費者契約、労働契約その他当事者の一方に特別の保護を与えるべき契約について、その保護に最も重大な利害関係を有する地の強行法上の保護を奪うものではない」という一般規定の形式で、経済的弱者保護に関する規定に限って、第三国の強行法規の適用可能性を認めている。国際私法立法研究会・前掲註(112)291頁〜294頁。 (139) Burman, supra note 7, at 377. (140) もちろん、メキシコ条約にも種々の欠陥はある。例えば、スペイン語条文、英語条文、フランス語条文の間には、かなりの文言・内容の相違があって統一的な解釈・適用は困難である。この点については、作業言語であったスペイン語の正文が事実上、重要となってこよう。Juenger-1994, supra note 8, at 393, footnote 53; Parra-Aranguren, supra note 15, at 306, footnote 20. また、lex mercatoria の準拠法適格性に関しても、「国際的組織によって承認されている国際取引法の一般原則」(第9条第2項第2文)と「国際取引法に関する規範、慣習および原則」(第10条)との関係、「国際的組織」(第9条第2項第2文)の範囲、「承認されている」(同)の意義など、不明確な部分が多い。See, Lando, supra note 87, at 63.
※ 本稿は、1997年度全国銀行学術研究振興財団および平成9年度帝塚山学園特別研究費
の助成に基づく研究成果の一部である。
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