[1頁]−論  説−

 

  改正されたアメリカ統一商事法典第五編(信用状)における
  受益者の瑕疵担保責任(warranty)

                          飯  田  勝  人

     目   次

     一 はじめに

      1 信用状取引の基本原理

      2 アメリカ統一商事法典第五編(信用状)の受益者の瑕疵担保責任とその改正

      3 本稿の目的

     二 改正前のアメリカ統一商事法典第五編における受益者の瑕疵担保責任

      1 改正前の条文および公式注釈

      2 改正前の条文・公式注釈の問題点

      3 改正前の条文に基づく判例の検討

     三 統一商事法典第五編調査特別専門委員会の報告書

      1 調査特別専門委員会の組成と任務

      2 受益者の瑕疵担保責任に関する報告書の提案

     四 改正後のアメリカ統一商事法典第五編における受益者の瑕疵担保責任

      1 改正後の条文および公式注釈

      2 改正後の条文の意義

     五 おわりに

 

[2頁]        はじめに                           目次に戻る

1 信用状取引の基本原理

 国際商業会議所(ICC)の制定した信用状統一規則(一九九三年改訂版(ICC Publication No.500)。以下、「UCP」という)においては、信用状および信用状を用いて行われる信用状取引は、信用状の原因となった売買契約等の原因契約(underlying contract)から独立しており(独立抽象性の原則―UCP三条)、またもっぱら信用状の定めにより呈示を要する書類の表示に依拠して行われるものである(書類取引の原則―UCP四条)。
 独立抽象性の原則および書類取引の原則という基本原理に支配される信用状取引では、信用状の発行銀行(issuing bank)および確認銀行(confirming bank)は、取消不能信用状(irrevocable credit)における主たる債務者(primary obligor)として、信用状条件を厳格に充足する(strict compliance)書類が自己または信用状面に支払い、買取り等を授権された指定銀行(nominated bank)に適時に呈示されることを停止条件として、信用状の受益者(beneficiary)に対し支払う義務を負う(UCP九条a項、b項)。また、指定銀行が適切に支払い、買取り等を行った場合には、発行銀行・確認銀行は、この指定銀行に対し補償義務(reimbursument obligation)を負うことになっている(UCP一○条d項、一四条a項)。そして、発行銀行・確認銀行・指定銀行は、書類の偽造や物品の荷送人等の誠実さ(good faith)、作為不作為等については免責されている(UCP一五条)。
 この基本原理は、物品売買取引の代金支払いのために用いられるいわゆる荷為替信用状(commercial credit, documentary credit)および、債務不履行の担保として利用されるスタンドバイ信用状(standby credit)の双方に共通して適用される(UCP一条)。
 
[3頁]また、信用状の発行銀行・確認銀行は、書類の受領日の翌営業日から起算して最長でも七営業日を超えない相応の時間内に、書類を点検し、仮に信用状条件を充足しない書類であると判断し、これを拒絶することにした場合には、書類の呈示人に対し、書類上の瑕疵(discrepancy)および、書類を呈示人の指図待ちとして保管していることまたは、呈示人宛に書類を返却中であることを遅滞なくテレコミュニケーションにより通知しなければならないことになっている(UCP一四条d項)。そして、仮に所定の時間内に所定の手続きをとることを怠った発行銀行・確認銀行は、もはや瑕疵のある書類を拒絶できない(…the Issuing Bank and/or Confirming Bank, if any, shall be precluded from claiming that the documents are not in compliance with the terms and conditions of the Credit.―UCP一四条e項)という、きわめて厳しい制裁を受けることになっており、このことをアメリカでは「自動排斥の準則(the rule of automatic preclusion)」と称している(1)(2)
 このようにユニークな、ある意味では取引通念に反するともいえる基本原理に基づく信用状取引(とくにスタンドバイ信用状を用いた取引)においては、これと類似の経済的目的を有する伝統的な保証状(letter of guarantee)を用いた取引が、附従性および書類の実質審査(書類の表示する内容が事実に合致するかどうかを調査すること)を旨とする点において、伝統的な保証状取引とは法律的性質が異なることになるが、これは、信用状が、銀行の信用を利用した安価で迅速な支払手段であることによるものである。

2 アメリカ統一商事法典第五編(信用状)の受益者の瑕疵担保責任とその改正

 アメリカでは、統一商事法典(Uniform Commercial Code.以下、「UCC」という)の第五編(信用状)(Article 5―Letters of Credit)において、合計一七か条の規定を設けることにより信用状・信用状取引の法律的骨格を定め、[4頁]これが全州で州法として立法化されてきたところである。 
 ところで、物品売買取引の売主が、信用状の受益者として信用状取引の基本原理を悪用し、船積みをいっさいしていないにもかかわらず、船荷証券等の書類を偽造して、信用状の条件を厳格に充足する書類であることを装い、偽造書類を発行銀行に呈示し支払いを請求した場合で、発行銀行が詐欺・書類の偽造を知らずに支払いに応じたときには、発行銀行は、信用状の発行依頼人(applicant)である物品の買主に対して補償請求権を取得することになる。この場合には、受益者の詐欺・書類の偽造の犠牲になった発行依頼人が、発行銀行に対する補償を余儀なくされる一方、原因契約である物品売買契約に基づき受益者(売主)に損害賠償を求めることになるはずである。
 このような受益者の詐欺・書類の偽造のケースにも、原則として信用状取引の基本原理および自動排斥の準則が適用されることとのバランスを考慮に入れて、一九九五年に改正される前のUCC(第五編)は、五―一一一条一項に、受益者が、発行銀行、確認銀行、発行依頼人等すべての利害関係人に対し、信用状の必要とする条件は充足されていることを担保する旨の、いわゆる受益者の瑕疵担保責任(warranty)を明記した。制定法上の義務(statutory obligation)とされる受益者の瑕疵担保責任は、受益者が、取引には詐欺が介在しておらず、また書類の偽造もないことをも請け合うものとされてきた(ただし、これについては、後述するように異論もある)。
 UCC第五編は、制定後約四○年ぶりに一九九五年に改正され、これが翌年の一九九六年に公表された
(3)(4)。この改正に伴い、受益者の担保責任についても、UCC五―一一○条a項において、信用状に基づき支払いを受けた受益者は、(i)発行銀行、確認銀行その他の指定銀行および発行依頼人に対し、詐欺・書類の偽造・詐欺を助長するような事態がないことを請け合うほか、(ii)発行依頼人に対し、受益者の支払請求が、信用状により担保しようとする発行依頼人と受益者との合意または、その他の合意に違反するものではないことを請け合うという趣旨に改められた。

[5頁]3 本稿の目的

 UCC第五編の定める受益者の瑕疵担保責任は、UCPにもない独特の規定であり、一見したところでは信用状の基本原理と矛盾するようにも思われる。また、わが国の銀行が信用状に基づく輸出手形の買取りに先立ち買取依頼人となる取引先から差入れを受けている「外国向為替手形取引約定書」(一九八三年に全国銀行協会連合会が制定したもの)(5)の五条に、「私[銀行に対し買取りを依頼する取引先]が貴行に提出する外国向為替手形および付属書類は、正確、真正かつ有効であり、信用状つき取引の場合は信用状条件と一致していることを保障します。これを前提として取り扱ったことにより、万一損害が生じた場合には、私が負担します。」として、改正前のUCC第五編の規定と類似の条文が設けられているので、UCCの条文の趣旨・解釈が、この約定書の条文を理解するうえで参考となりそうでもある。(6)
 そこで本稿では、アメリカの判例・学説をもとに、UCC第五編における改正前および改正後の受益者の瑕疵担保責任に関する条文とその意義を検討し、今後の判例の動向を探ることにしたいと思う。

 

   改正前のアメリカ統一商事法典第五編における受益者の瑕疵担保責任       目次に戻る

1 改正前の条文および公式注釈(7)

 (1) 改正前の条文
 受益者の瑕疵担保責任を定めた改正前のUCC五―一一一条一項の規定は、次のようになっていた。なお、参考
[6頁]までに同条二項をも掲げる。
「五―一一一条 譲渡および呈示に際しての瑕疵担保責任(Warranties on Transfer and Presentment)
 (一項) 他に異なる合意のない限り、受益者は、荷為替手形または支払請求を譲渡しまたは呈示することによって、すべての利害関係人に対し、信用状の必要としている条件が充足されていることを担保する。これは、第三編、第四編、第七編および第八編に基づき生じる瑕疵担保責任に付加されたものである((1) Unless otherwise agreed the beneficiary by transferring or presenting a documentary draft or demand for payment warrants to all interested parties that the necessary conditions of the credit have been complied with. This is in addition to any warranties arising under Articles 3,4,7 and 8.)。
 (二項) 他に異なる合意のない限り、買取銀行、通知銀行、確認銀行、取立銀行または発行銀行は、信用状に基づく為替手形または支払請求を呈示しまたは譲渡することによって、取立銀行が第四編に基づき担保する事項のみを担保するにすぎないものであり、書類を譲渡するこのような銀行は、第七編および第八編に基づき仲介銀行が担保する事項のみを担保するにすぎない((2)Unless otherwise agreed a negotiating, advising, confirming, collecting or issuing bank presenting or transferring a draft or demand for payment under a credit warrants only the matters warranted by a collecting bank under Article 4 and any such bank transferring a document warrants only the matters warranted by an intermediary under Articles 7 and 8.)。」

(2) 改正前の公式注釈
 本条の公式注釈(official comment)を訳出すると次のとおりであるが、この公式注釈は、事実上条文の繰返しに
[7頁]終わっており、これによっても、受益者の瑕疵担保責任の意義を十分に理解することはむずかしいと思われる。
 なお、文中の[ ]は、私が実務の観点から補ったものである。
「目的:
  本条の目的は、履行について受益者によりなされる独特の瑕疵担保責任を的確に述べるとともに、受益者から[信用状の発行依頼人である]顧客(customer)
(8)へ書類を移動させる者の仲介者的性質を明確にすることにある。第一項における信用状の条件を充足している旨の受益者の瑕疵担保責任は、他に異なる定めのない限り、明示的に全利害関係人に対して及ぶものとされている。
  為替手形または関連する書類に関する限り、受益者の瑕疵担保責任は、状況の変化により変更されることもあるが、通常は、普通の有償の譲渡人または裏書人の瑕疵担保責任と同じである。第二項で列挙された仲介銀行の通常の瑕疵担保責任は、第一義的には自己が誠実であることおよび権限を有することである。五―一一四条二項の注釈をも参照。」

2 改正前の条文・公式注釈の問題点

 (1) 文理解釈をしたときの問題
 受益者の瑕疵担保責任を定めた改正前のUCC五―一一一条一項の規定およびその公式注釈を文理解釈すれば、これは、受益者が、信用状の全利害関係人に対し、信用状の条件が充足されていることを担保することを意味するというのが普通の解釈であると思われる。
 しかし、たとえば、信用状の発行銀行は、書類が外観上信用状条件を充足していることを点検する義務を信用状
[8頁]の発行依頼人である顧客に対して負っているが(改正前の五―一○九条)、発行銀行が、受益者への支払後に発行依頼人に補償を請求したところ、書類が信用状条件を充足していないとして補償請求を拒絶されたときには、同行は、受益者に対し本条に定める担保違反をもとに、支払った資金の返還を求めることになるであろうが、そうだとすれば、発行銀行の書類点検義務は、事実上意味を失うという批判が生じる。
 また、発行銀行が、書類の受領日の翌営業日から三営業日以内に支払わないときは、支払いを拒絶したことになり(改正前の五―一一二条)、受益者に対しては債務不履行となって、損害賠償義務を負うことになるが、仮に書類が外観上信用状条件を充足しないことが立証された場合には、発行銀行としては、自己の損害賠償債務と受益者に対する本条の瑕疵担保責任に基づく債権との相殺を主張することになるであろう。そうであれば、発行銀行による三営業日以内の支払義務を定めた条文(改正前の五―一一二条)の意義がなくなるということにもなる。

(2) 目的論的解釈をしたときの問題
 さらに、文理解釈を離れ、目的論的解釈をとり、受益者の瑕疵担保責任とは、たとえば、信用状が物品売買の代金支払いのために発行されたものであれば、受益者は、いっさい船積みをしていないにもかかわらず、売買契約に合致した船積みを実行したことを装い、船荷証券等を偽造して信用状に基づく支払いを受けるといった詐欺・書類の偽造がないことを受益者が請け合う(warrant)ことの意味であるとしよう。そうすると、信用状の発行銀行は、受益者と発行依頼人間の原因契約や呈示された書類の真偽を調査し、詐欺・書類の偽造が発見されたときは、本条の受益者の瑕疵担保違反を理由として、支払いを拒むことができそうであるが、これは、信用状取引の基本原理である独立抽象性・書類取引性と矛盾することになるのではないかという疑問が生じてくる。また、受益者の瑕疵担保責任をこのような意味に解した場合には、本条と詐欺、書類の偽造等の存在する場合について定めた改正前の
[9頁]五―一一四条(9)との関係をいかに考えればよいのかといったことも問題になってくるはずである。

(3) 評価
 このように、改正前の条文における受益者の瑕疵担保責任については、以下で検討する判例の分裂状況および、後に引用する統一商事法典第五編調査特別委員会の報告書からも明らかなとおり、いろいろ問題が多く、統一的な解釈はないようであって、いわば、この規定は、「欠陥商品」であるということができる。
 なお、本条文は、一項および二項の冒頭における「他に異なる合意のない限り(Unless otherwise agreed)」という文言からみて、任意規定であることが明らかである。

3 改正前の条文に基づく判例の検討

 (1) 検討の手順
 判例を検討するにあたり、信用状の受益者の瑕疵担保責任に関しては、売買契約等の原因契約上の詐欺とも絡んでくるため、まず最初に、受益者による詐欺問題を取り扱った事案を含め、比較的最近のアメリカの合計四四の事案を選定した。次に、このうちから、改正前のUCC五―一一一条一項における受益者の瑕疵担保責任に明示的に言及した事案として、合計一八件(判決の時期についてみると、最も古いものは、一九八二年の事案であり、最近時の事案は、一九九六年のものである)を選別して、受益者の瑕疵担保責任について裁判所が打ち出した判旨を四つのグループに分けて示すことにした。各グループに記載した事案は、それがこのテーマに関する各グループにおける代表的な判旨であると判断されたものである。
 以下で示す事案の概要では、問題となった信用状が荷為替信用状であるかまたはスタンドバイ信用状であるかを
[10頁]明らかにするとともに、実務の見地から、信用状条件についてもできる限り引用した。
 改正前のUCC五―一一一条一項における受益者の瑕疵担保責任を正面から取り扱った事案がわずか一八件にすぎず(訴訟当事者が、この条文の存在自体を知らなかったという事態もありそうである)、しかもこれについての裁判所の判断が四つに分裂しているという事実(この事実を踏まえ、訴訟当事者が、この条文を持ち出すことは得策でないと考えたとしても、当然である)は、同条の規定が「欠陥商品」であることを如実に示すものと考えられる。
 なお、以下の文中の[ ] は、実務の観点から私が補足したものである。

 (2) 受益者の瑕疵担保責任は、条文の文言どおり、呈示された書類が外観上信用状条件を充足していることに関するものであるとした事案(10)
 @ Philadelphia Gear Corp. v. Central Bank, 717 F.2d 230 (5th Cir. 1983)
(11)
 (a) 事案の概要
 Central BankがPhiladelphia Gear Corp.(以下、Philadelphiaという)を受益者とし、一九七四年改訂版UCP(ICC Publication No. 290)に準拠して発行した四五○万米ドルの荷為替信用状により、Philadelphia が数回にわたり書類を呈示したが、Central Bankは、支払いを拒絶し、Philadelphiaに対し、その理由として「信用状条件を充足していないため」とのみ通知し、具体的な瑕疵を明示することなく、為替手形のみを返却したものの、運送書類等他の書類は、その旨を通知せずに、同行で保管した。ただし、後日、具体的な瑕疵の一部については、Philadelphia の知るところとなった。一審におけるPhiladelphiaの勝訴判決に不服なCentral Bankが控訴した。
 (b) 判示の内容
 連邦控訴裁判所は、「ルイジアナ州UCC一○:五―一一一条は、受益者は、呈示に際し、自己の為替手形が信用
[11頁]状の条件を充足していることを担保すると規定している。信用状条件を充足していない為替手形を故意に呈示したことにより、Philadelphia は、これらの規定の両方に違反したのである。ある当事者が、瑕疵のあることを承知している為替手形を呈示することができ、しかも瑕疵の通知を受けなかったことを理由に、財産回復を達成することができるというような準則(rule)(12)があるとすれば、それは、実に奇妙なものであろう。」(Id. at 238)と判示した(破棄差戻し)。
 A Delta Brands, Inc. v. MBank Dallas, N.A., 719 S.W.2d 355 (Tex. Ct. App. 1986)
(13)
 (a) 事案の概要
 MBank Dallas, N.A.(以下、MBankという)は、イタリアへのスチール・コイル処理装置の輸出のためにイタリアの銀行がDelta Brands, Inc.(以下、Deltaという)を受益者として発行した六九万八七三七米ドルの荷為替信用状に確認を加え、荷為替手形を買い取ったが、発行銀行からは、装置始動承認書に瑕疵があり、また信用状の期限切れであることを理由に、補償を受けることができなかった。このため、確認銀行であるMBankが、受益者の瑕疵担保責任に基づきDeltaに資金の返還を請求した。一審ではMBbankの勝訴となったので、Deltaが控訴。
 (b) 判示の内容
 テキサス州控訴裁判所は、装置始動承認書が信用状条件を充足していない旨を認定したうえで、次のように判示し、控訴を棄却した。
 (i)「テキサス州事業商事法典五・一一一条の公式注釈に照らし、当裁判所は、Klatzer事件[First National City Bank v. Klatzer, 28 U.C.C. Rep. Serv. 497 (N.Y. Sup. Ct. 1979)―書類の不注意な点検により受益者に支払ったが、発行銀行から信用状条件を充足していないとして書類を拒絶された取立銀行に対し、裁判所が、受益者の瑕疵担保
[12頁]責任に言及することなく、受益者から支払った資金を取り戻すことを認めた事案]で公表された意見が、五・一一一条の目的と首尾一貫したものであると考える。したがって、当裁判所は、信用状の発行銀行または確認銀行が、信用状に基づき支払ったが、補償を拒絶された場合には、その発行銀行または確認銀行は、五・一一一条の瑕疵担保責任の規定に基づき、支払った金銭を受益者から取り戻すことができるものであると判断する。」(Id. at 359)。
 (ii)「次に、当裁判所は、信用状に基づく呈示がなされる場合に、どのような瑕疵担保責任を受益者が負担するのかを決定しなければならない。五・一一一条a項は、受益者が信用状の必要としている条件は充足されていることを担保すると規定しているが、UCCは、『信用状の必要としている条件』という文言の範囲を定義していないのである。…当裁判所は、受益者が発行銀行または確認銀行に対し裏付けとなる書類を呈示する場合には、その受益者は、その書類が確かに信用状条件を厳格に充足していることを五―一一一条に基づき担保するものであると判断する。」(Id. at 359)。
 B Manufacturers Hanover International Banking Corp. v. Spring Tree Corp., 752 F.Supp. 522 (D. Mass. 1990)
 (a) 事案の概要
 香港へのココアの輸出のために発行された荷為替信用状に基づき、Manufacturers Hanover International Banking Corp.(以下、MHIBCという)は、受益者であるSpring Tree Corp.(以下、Spring という)から呈示された書類を買い取り、八万一八八六・六九米ドルを支払ったところ、信用状の発行銀行が書類上の瑕疵を理由に支払いを拒絶した。そこでMHIBCが、Springに支払金額の返還を求める訴訟を提起した。
 (b) 判示の内容
 連邦地方裁判所は、次のように述べてMHIBCの請求を認めた。
 
[13頁]「UCC五―一一一条により、原告[MHIBC]は、被告[Spring]の呈示した書類が信用状に記載された必要条件を充足している旨の被告の瑕疵担保責任を信頼する権利を有していた。買取銀行として原告は、発行銀行が裏付けとなる書類の瑕疵を理由に為替手形の支払いを拒絶した場合には、受益者に前払いした代わり金(proceeds)を被告受益者に遡求する権利をもつのである。発行銀行の支払拒絶が正当であったか否かについて発行銀行と被告との間にいかなる争いがあろうとも、被告は、原告により前払いされた代わり金を補償しなければならない。」(Id. at 523)。

(3)受益者の瑕疵担保責任は、呈示された書類が外観上信用状条件を充足しており、かつ詐欺、書類の偽造、その他書類の外観からは明らかではない瑕疵がないことに関するものであるとした事案(14)(15)
 @ First Arlington National Bank v. Stathis, 450 N.E.2d 833 (Ill. App. 1st Dist. 1983)
 (a) 事案の概要
 不動産の売主であるGus Stathis(以下、Stathisという)に差し入れられた買主の振り出した約束手形の支払いを担保するため、First Arlington National Bank(以下、FANBという)は、Stathisを受益者とする五七万五○○○米ドルのスタンドバイ信用状を発行した。約束手形の支払いが滞った等としてStathisがスタンドバイ信用状により支払いを請求したが、FANBは、支払請求が事実と異なる等として支払いを拒絶した。差戻しを受けた一審では、Stathisの勝訴となった。
 (b) 判示の内容
 イリノイ州の上訴裁判所は、一審判決を支持するに際し、傍論で次のように述べている。
 「これらの理由により、当裁判所は、五―一一一条一項に基づく基本的な瑕疵担保責任は、書類がその外観上信用状条件を充足していること、および五―一一四条二項b号に述べられた[詐欺、書類の偽造その他書類の外観か
[14頁]らは明らかではない瑕疵の]除外事由(exceptions)がいっさい存在しないことを意味するものであると確信する。瑕疵担保責任の規定は、[信用状の発行を依頼した]顧客が原因契約に基づいて有しているいるかもしれない抗弁を[信用状の]発行人が主張することを認めるものではない。」(Id. at 840)。

 (4) 受益者の担保責任は、原因関係の条件が充足されていることに関するものであるとした事案(16)
@ Barclay International, Inc. v. First Alabama Bank, 557 So.2d 1201 (Ala. 1989)
 (a) 事案の概要
工場の建設と購入資金の融資の担保の一部として、Barclay International, Inc.(以下、Barclayという)は、香港の銀行に依頼し、First Alabama Bank of Montgomery, N.A.(以下、FABMという)を受益者として七五万米ドルのスタンドバイ信用状を発行してもらった。
Barclayがリース料の支払いを滞らせたとして、FABMは、スタンドバイ信用状に基づいて七五万米ドルの支払いを受け、この金額を弁済期限の到来していた貸金二八万三○○○米ドルに充当したほか、他の期限未到来の貸金に充当したが、その際、FABMは、Barclay等関係者に対しては融資契約に規定された弁済期繰上げの通知をしなかった。
 融資契約上の不履行はなく、FABMが信用状により支払いを請求したことは不当であるとしてBarclayの提起した訴訟では、一審がBarclay敗訴の判決を下したので、Barclayは上訴した。
 (b) 判示の内容
 アラバマ州の最高裁判所は、破棄差戻しの判決に至る過程で、「むしろ、本件における争点は、信用状に基づく支払いの請求が受益者によって適切になされ、かつ[資金が]適切に充当されたか否かである。この争点は、信用
[15頁]状に基づく支払いが適切なものであった(that payment under a letter of credit was properly due.)という受益者の瑕疵担保責任を取り扱う一九七五年[アラバマ州統一商事]法典七―五―一一一条によって規制される。」(Id. at 1206)と述べた。
 A Mellon Bank, N.A. v. General Electric Credit Corp., 724 F. Supp. 360 (W.D. Pa. 1989))
 (a) 事案の概要
 Woodings Consolidated Industries, Inc.(以下、Woodingsという)は、同社とGeneral Electric Credit Corp.(以下、GECCという)との機械のリース契約を担保するため、GECCを受益者とする六○万米ドルのスタンドバイ信用状をMellon Bank, N.A.(以下、Mellonという)から発行してもらった。
 スタンドバイ信用状は、(i)GECCの振り出した為替手形の金額は、WoodingsがGECCに対して支払うべき債務の金額であることまたは、(ii)Woodings により、または Woodingsに対し、法律に基づく更正手続きの申立てがなされたことを記載した、タイプライターで作成した署名入りのGECCによる陳述書の提出を条件としていた。信用状の文言は、以下のようになっていた。
 We [Mellon]undertake to honor from time to time your[GECC's]draft or drafts at sight on us not exceeding in the aggregate U.S.$600,000.00 when accompanied by a signed typewritten statement by GECC stating either (i) that the amount of the accompanying draft is due and owing by Customer[Woodings]to GECC, or (ii) that a petition has been filed by or against Customer under Title XI of the United States Code or a similar or successor law.
 一九八七年二月一一日、GECCは、次のような陳述書を為替手形とともにMellonnに呈示し、六○万米ドルの支払
[16頁]いを受けた。
 「本書類により、貴行に対し、WoodingsがGECCとのある合意に違反したこと、および、したがって、Mellonの信用状番号五六五四○に基づきGECCにより振り出された一九八七年二月一一日付けの為替手形金額である六○万米ドルは、WoodingsがGECCに対して支払うべきものであることを通告する。」(Id. at 363)。
 後日に至り、Mellonは、GECCが信用状に基づき支払いを請求した時点では、GECCはWoodingsのリース料支払遅滞に伴う弁済期繰上げ宣言(declaration of acceleration of payments) をしておらず、支払請求の条件が充足されていなかったのであるから、GECCが受益者としての瑕疵担保責任を負うとして、支払った六○万米ドルの返還を求める訴訟を提起した。GECCは、リース契約に定めた弁済期繰上げ宣言を怠ったことを認めたが
(17)、スタンドバイ信用状が同宣言を支払請求の条件とはしておらず、また独立抽象性の原則により、GECCの支払請求は認められるべきであると抗弁した。
  (b) 判示の内容
 裁判所は、Mellonの返還請求を認めるについて、以下のように判示した。
 (i)「GECCは、独立抽象性の原則を正確に述べてはいるが、本件に対してこれを正しく適用していない。独立抽象性の原則および、上に引用した信用状の箇所は、なによりもまず第一に、一覧払の為替手形を支払うべき銀行の債務のみを証拠立てるにすぎない。これらは、その後の[=支払後の]調査および財産回復における努力を排斥するものではないのである(They do not preclude subsequent investigation and effeorts at recovery.)。」(Id. at 365)。
 (ii)「[弁済期繰上げ宣言を欠く状況下では]履行期前の契約違反(anticipatory repudiation)がないのである
[17頁]から、信用状に基づく為替手形の振出しを裏付けるための、六○万米ドルが支払われるべきである旨のGECCの主張は、誤っていたのであり、五ー一一一条に基づくGECCの瑕疵担保に違反したものである。」(Id. at 366)。
 B Sun Marine Terminals, Inc. v. Artoc Bank and Trust, Ltd., 797 S.W.2d 7 (Tex. 1990)
 (a) 事案の概要
 Sun Marine Terminals, Inc.(以下、Sunという)は、Uni Oil, Inc.(以下、Uniという)のために港にガソリンの貯蔵・タンカーへの積込用施設を構築してUniに使用させる契約を結んだ。一五年間にわたり効力をもつこの契約書には、Uniの使用料支払債務を担保するため、UniがSunを受益者とする金額二五万米ドルで、有効期間が六か月を下回らないスタンドバイ信用状を調達すること、Uniは信用状の期限が切れる二○日前に新しいスタンドバイ信用状を調達することおよび、Uniが所定のスタンドバイ信用状を調達しない場合は、この契約違反となり、Uniの負担する全支払債務の弁済期が到来し、Sunが直ちにスタンドバイ信用状により発行銀行に対し支払いを請求することができる旨が定められていた。
 Uniは、バハマのArtoc Bank and Trust, Ltd. (以下、Artocという)に信用状の発行を依頼し、ArtocがSoutheast First National Bank of Miamiに依頼することにより、所定のスタンドバイ信用状が発行された。信用状は、一覧払為替手形に次の書類を添付して支払いを請求することになっていた。
 「一―提供したサービスの料金で、期日に支払われなかったものを記載した[Sunの]商業送り状の写し。
  二―副社長および経理部長としての署名のある[Sun]の書状で、[Sunと][Uniとの間の]リースおよびターミナル施設提供契約の条件に従い、貯蔵庫およびターミナル施設使用にかかわるリースに関するサービス料を記載した送り状(前記一参照)の支払いを、Uniが怠った旨を記載したもの。」
 
[18頁]所定のスタンドバイ信用状が発行されてから約三年経過後、信用状の有効期限の直前に、発行銀行は、Sunに対し、信用状の更新をしない旨を通告した。そこで、Sunは、信用状の更新がなされないことは契約の不履行にあたるとUniに通知するとともに、信用状に基づき支払いを請求した。ただし、その時点では、Uniは、Sunへの支払いをきちんと行っていた。発行銀行は、Sunの請求に応じる一方、Artocから補償を受けた。
 Artocは、詐欺、契約違反およびUCCの瑕疵担保違反をもとに、Sunを相手方とする訴訟を提起した。
 一審判決はSunの勝訴、二審判決はArtoc勝訴となり、本件は、テキサス州最高裁判所で争われることになった。
 (b) 判示の内容
 同州の最高裁判所は、以下のように判示し、二審判決を破棄して、Sunの勝訴を申し渡した。
 (i)「[UCC五・一一一条a項の]この規定が、これまで裁判所から注目をされたことはほとんどなかった(より多くの場合に、信用状の訴訟は、支払いがなされた後に支払金を取り戻すことではなく、支払いを止めることを求めるが、それは、明白、実利的な理由による)。」(Id. at 11)。
 (ii)「信用状は、Sunがどのようなサービスを提供すべきであって、Uniがいつ支払うべきであったかを定めていないのであるから、信用状の条件だけを調べたたところで、Uniが、Sunの提供したサービスに対して実際に支払債務を負っていたか否かを確定することはできない。そうではなく、まさにSunおよびUniのそれぞれの相手方に対する債務を定めた合意書を参照しなければならない。このことは、信用状の条件のみが支払いをなすべきか否かを規制することを要件とする、独立抽象性の原則に反するものではない。本件においては、支払いがすでに行われているのである。つまり、信用状は、その目的を達成しているのである。残された問題は、Sunが虚偽の要求に基づき支払を得たのか否かであり、この質問に答えるためには、SunとUniとの合意書を調べなければならない。」(Id. at 11)。
 
[19頁](iii)「SunとUniとの合意書の条件は、Uniが更新された信用状の調達を怠ったときは、Uniは、直ちにSunに対し合意書の全残余期間について残金の支払債務を負うことを明記している。このため、Uniが自己の負担する債務の全部は支払わなかった旨のSunの陳述は、真実であった。…したがって、Uniが提供されたサービスに対する債務の全部は支払わなかったというSunの陳述もまた真実であった。
 呈示した書類におけるSunの陳述が偽りではなかったとの結論に達したので、当裁判所は、Sunは、UCC五・一一一条a項に基づくArtocに対する瑕疵担保に違反しなかったものと判断する。」(Id. at 11―12)。
 C Haines Pipeline Construction, Inc. v. Montana Power Co., 830 P.2d 1230 (Mont. 1991)
 (a) 事案の概要
 Haines Pipeline Construction, Inc.(以下、Hainesという)は、Montana Power Co.(以下、MPCという)から発注された天然ガス用パイプラインの敷設を請け負う契約を締結した。契約に基づき、MPCを受益者とするスタンドバイ信用状が発行された。
 ところが、敷設工事が順調には進まず、両社は種々の交渉により請負契約の内容を変更してきたが、MPCは、資金繰りの問題が生じたため、契約条項に従い契約を消滅させるとともに、スタンドバイ信用状の延長された有効期限の日である一九八五年五月一五日に、信用状に基づき支払いを請求した。
 このため、Hainesが訴訟を提起し、一審ではHainesは契約違反をしていないとして勝訴したので、MPCが控訴した。
 (b) 判示の内容
 モンタナ州の最高裁判所は、本争点に関する一審の判断は証拠により是認できるとして、次のように述べてMPCの上訴を棄却した。
 
[20頁]「モンタナ州法典三○―五―一一一条は、[信用状に基づき]支払いを請求することによって、当事者は、[書類の]呈示よりも前に、信用状の必要とする条件が充足されていることを担保する旨を規定している。本件では、MPCは、Hainesが契約の条件に違反していたことを確証することを求められていた。Hainesが、MPCの代理人であるWater Kelleyにより修正された契約の条件を充足していた旨を認定した地方裁判所は、MPCの呈示の前には、信用状の必要とする条件が成就していなかったと判断したのである。したがって、同裁判所は、MPCが受益者の呈示の瑕疵担保責任に違反し、Hainesは填補損害賠償を受ける資格があるとの判決を下した。加えて、同裁判所は、MPCの行為が、誠実かつ公正な取扱いの黙示の担保(the implied warranty of good faith and fair dealing)にも違反したと判断した。」(Id. at 1236)。

(5) 受益者の瑕疵担保責任は、呈示された書類が外観上信用状条件を充足しており、かつ真正であることに関するものであるとした事案
 @ Amwest Surety Insurance Co., v. Republic National Bank, 977 F.2d 122 (4th Cir. 1992), cert. denied, 113 S. Ct.1582 (1993)
 (a)事案の概要
ジョージア州運輸局から請け負った道路建設およびこれに付随する土砂の削掘・地ならし工事に関連し、Republic National Bank(以下、Republicという)は、顧客の依頼により、Amwest Surety Insurance Co.(以下、Amwestという)を受益者とする一六万米ドルのスタンドバイ信用状を発行した。一方、この信用状および顧客の差し入れたその他の担保に基づき、Amwestは、道路工事建設を請け負った業者に対し支払および履行保証状(payment and performance bond)を発行した。
 
[21頁]後日、Amwestに保証状の発行を依頼した顧客がサプライヤーへの支払いを延滞しており、このままでは付随工事の履行が危うくなり、自己の発行した保証状に基づき支払請求のなされるおそれがあると判断したAmwestは、この顧客の特定の複数のサプライヤーに対して三万八○○○米ドルを顧客に代わって支払った。Amwestとしては、同額をスタンドバイ信用状により回収するつもりであった。しかし、スタンドバイ信用状は、分割して使用することができず、一回に限り支払請求が許されるものと誤解したAmwestは、一九八九年五月八日にRepublicに対し、三万八○○○米ドルではなく、スタンドバイ信用状金額全額の一六万米ドルを請求し、Republicから全額支払いを受けた。
 これについて顧客側から苦情があったので、Amwestは、余分に支払いを受けた一二万二○○○米ドルをRepublicに返還することにより同額分について信用状金額を復活してもらうために、その旨を依頼する一九八九年五月三一日付けの書状を作成し、小切手を添えてRepublic宛に送付した。ところがRepublicは、Amwestに連絡することなく、この小切手金額をスタンドバイ信用状の発行依頼人である顧客が負担する他の債務の弁済に充当した。
 ところで、Amwestに保証状の発行を依頼した顧客の支払遅延が続いたため、同年八月二日にAmwestがRepublicに信用状に基づくものとして一二万二○○○米ドルの支払いを請求したところ、Republicは、当初の支払いによりすでに信用状の残高がなくなっているとして、支払いを拒絶した。
 そこでAmwestが、不当利得等を理由に訴えを提起し、一審で勝訴判決を得た。Republicは、これを不服として控訴した。
 (b) 判示の内容
 連邦控訴裁判所は、外観上信用状条件を充足する支払請求をもとにいったん支払われた信用状の金額は、発行銀行であるRepublicの同意がない以上、復活するものではないし、一二万二○○○米ドルについて新規に信用状が発
[22頁]行されたものとすることもできないが、スタンドバイ信用状の受益者であるAmwestは、受益者として瑕疵担保には違反していないのであるから、Amwestとの関係では、Republicが、同金額について不当利得をしているとして、本争点に関する一審判決を是認する判断を行った。
 受益者の瑕疵担保責任に関する連邦控訴裁判所の見解は、呈示された書類が真正なものであり、かつ外観上信用状条件を充足していることであるとし、原因契約にはいっさい言及せず、他の事案におけるとは異なり、受益者の瑕疵担保責任の範囲を狭く限定していることが特色である。
 なお、同裁判所が、その理由を詳しく述べているので、次に引用する。
 (i)「[受益者の瑕疵担保責任という]争点を論じてきた裁判所は、ひとたび[信用状の]発行人が信用状に基づく為替手形を支払ってしまえば、同人は、『利害関係人』となり、第五編に基づく受益者の瑕疵担保責任を利用することができる、ということでは意見が一致している。…しかし、裁判所は、受益者が発行人に対し実際にはいかなることを担保するのかについては、意見を異にしている。裁判所によっては、『受益者は、発行銀行に対し、[スタンドバイ]信用状に基づく為替手形の振出しに必要な陳述書が真実であることを担保する。』と判示している。…しかし、他は、受益者は、為替手形とともに呈示された書類および署名の真正性ならびに『書類が確かに信用状条件を厳格に充足していること』のみを担保するにすぎないと判示している。」(Id. at 128)。
 (ii)「受益者の担保責任を後者のように解することが正しいと考えるので、当裁判所は、信用状の受益者は、信用状に基づき為替手形を振り出すときには、同行[=信用状の発行銀行]に対し、呈示された書類が真正なものであり、信用状条件を充足していることだけを担保するものと判断する。言い換えれば、受益者は、同行が、為替手形に基づき支払いをしても、同行の顧客[=信用状の発行依頼人]に対する義務を怠ることにはならないことのみ
[23頁]を約束するのである。当裁判所が、このような結果が不可欠であると判断するのは、次の理由による。
 第一に、この責任を創設する法律を注意深く読めば、受益者が『充足されている』ことを担保するのは、『信用状の必要とされている条件』に他ならないことが明らかである。サウス・カロライナ州法典三六―五―一一一条一項。…同法典は、信用状を定義するために別の箇所でこれとほとんど同じ表現を用いている。…当裁判所は、三六―五―一一一条一項で言及された条件および充足が同じことを意味すること(that the conditions and compliance......are the same.)については、疑問の余地はありえないと考える。そうすると、一方では、この表現の最も自然な読み方は、受益者は、自己の為替手形が信用状に列挙された条件を充足していること―通常は、呈示を必要とする書類が呈示されており、なすべき陳述がなされていること―を担保するということである。他方、信用状における条件の一覧表が、真実性(veracity)を条件として含む場合に限って
(18)、信用状によって必要とされている受益者による主張が偽りであることが判明したときには、条件は充足されていないということができる。その結果、真実性を条件とする信用状(19)は、ごく少ないのであるから、条件を充足するためには、信用状によって必要とされるすべての主張もまた真実でなければならないという一般的な結論は、法典の表現からは支持されないのである。
 第二に、より重要なことであるが、受益者の瑕疵担保責任は、条件を充足する為替手形に対して[信用状の発行人が]支払った資金を、呈示された陳述書が[事実と照らし合わせた場合に]真実ではないことを理由として、[信用状の]発行人が取り戻すことを認めるものである、と解釈するのは、独立抽象性の原則、すなわち、信用状への受益者の道筋を確実、予見可能にするために、発行人は、信用状条件との厳格な充足のみを審査する義務を負わなければならず、当事者間における原因上の争いを調査する義務を負ってはならないことと衝突する。(以下、省略)
[24頁]最後に、受益者は、信用状に基づく為替手形の振出しに必要な陳述の真実性を担保するものであるとする見解を否認することは、ある裁判所が論じたように、受益者の瑕疵担保責任規定を無価値にしてしまうものではないであろう。Mellon Bankの事案[前掲]三六五頁参照。(以下、省略)」(Id. at 128―129)。

(6) 受益者の瑕疵担保責任に関するその他の事案
 @ Banco del Estado v. Navistar International Transportation Corp.,942 F.Supp. 1176 (N.D.Ill. 1996)
 連邦地方裁判所は、原告である荷為替信用状の発行銀行が先例として引用した事案は、すべて他州におけるものであり、イリノイ州では、五―一一一条における受益者の瑕疵担保責任の規定は、原因関係の条件が成就していないことを訴訟原因としては認めるものではないし、発行銀行が、発行依頼人の原因契約上の抗弁を援用することを認めるものでもないとしている。
 しかし、この見解は、いわゆる独自の見解であり、問題であると思われる。
 A Habib Bank Ltd., v. Convermat Corp., 554 N.Y.S.2d 757 (Sup. 1990)
一九八三年改訂版UCP(ICC Publication No. 400)に準拠して発行された荷為替信用状の発行依頼人が、船荷証券上に記載された船積日が信用状の条件を充足していないとして信用状発行銀行に対する補償を拒絶したので、発行銀行は、UCC五―一一一条一項に基づき受益者から支払い済みの金額を取り戻すために提起した本件訴訟において、ニューヨーク州の裁判所は、控訴を棄却した。
 同裁判所は、棄却理由の一つとして、同州のUCC五―一○二条四項が、UCPに準拠する信用状には第五編がいっさい適用されない旨の特例的な規定を設けているので
(20)、受益者の瑕疵担保責任を定めた五―一一一条の適用もないことをあげている。

 

      [25頁] 統一商事法典第五編調査特別専門委員会の報告書          目次に戻る

1 調査特別専門委員会の組成と任務

 UCC第五編(信用状)が制定されて約三○年が経過した一九八六年に、アメリカでは弁護士、法学者および銀行家合計一○名による「統一商事法典第五編調査特別専門委員会(Task Force on the Study of U.C.C. Article 5)」がアメリカ法律家協会統一商事法典委員会により組織された。この調査特別専門委員会は、信用状に関する判例、学説、実務等を広範囲にわたり調査・研究し、三年後の一九八九年に合計四九の項目に問題点をとりまとめ、報告書を作成して、信用状についての規定を定めたUCC第五編の改正を提案した(21)(22)

2 受益者の瑕疵担保責任に関する報告書の提案(23)

調査特別専門委員会は、改正前のUCC第五―一一一条に関して、SECTION 5―111. WARRANTIES ON TRANSFER AND PRESENNTMENNTという標題の下に、第二四項目から第二六項目までの合計三項目の提案をしているが、このうち受益者の瑕疵担保責任についての第二四項目および第二五項目を翻訳して引用すれば、次のとおりである。かなりの長さにはなるが、受益者の瑕疵担保責任を考えるうえで参考となるので、全文を訳出して引用する。
 この報告書の日付は、一九八九年九月二九日であるため、当然のことではあるが、報告書が、それ以降に公表された判例で、前記二3で触れたものを検討の対象外としていることに留意する必要がある。
 なお、本文中の[ ]は、実務の観点から私が補足したものである。

  [26頁](1) 受益者の瑕疵担保の主題
[第二四項目]課題a:[瑕疵担保責任の主題]
  
第一項に規定された瑕疵担保責任は、書類の外観上明らかな[信用状条件を充足しないことの]瑕疵とともに、詐欺および書類の外観からは明らかではない他の瑕疵にも及ぶものか(Does the warranty established by subsection (1) extend to defects in the documents which are apparent on their face and to fraud and other defects not apparent on the face of the documents?)。
 
現行条文[改正前の条文]
省略(前記1(1)のとおり)

現行法
 
五―一一一条一項の瑕疵担保責任(「信用状の必要としている条件が充足されている」こと)が、[書類の]外観上の充足および詐欺、書類の偽造または五―一一四条二項に定める他の瑕疵がないことの両方をカバーしているかどうかについては、その文言からは明白ではない。 

検討
   瑕疵担保責任が、書類の外観上明らかな瑕疵に適用されることに賛成する意見
  (1) 受益者は、譲渡または支払いが成功することによって第一義的に便益を受ける当事者なのであるから、外観上信用状条件を充足する書類を入手し、準備する責任を負うべきである。受益者に不利益が及ぶとき、または[27頁]以下で検討する他の『支払いの終局性(final payment)』の問題を別にすれば、支払人または譲受人が[信用状条件を充足しない]書類の外観上の瑕疵を発見できたはずであるということによって、外観上の[書類の信用状条件の]未充足から生じる[書類が拒絶されることによる]損害が、受益者から受益者の[書類の]呈示を買い取り、またはこれを支払う者に転嫁されるべきではない。
  (2) 第五編の別の箇所(たとえば、五―一○三条一項a号、五―一○八条三項a号、五―一○九条二項、五―一一四条一項および五―一一四条二項参照)で用いられるときは、『充足(compliance)』という用語は、外観上の充足を含めていることが明らかである。
  (3) 荷為替手形を流通させたが、その後[信用状条件を充足しない書類の]外観上の未充足を理由にして信用状の発行人(issuer)
(24)により同手形を拒絶された者は、受益者に対し第三編および第四編に基づき遡求権をもつであろう。五―一一一条一項の受益者の瑕疵担保責任は、これと類似の作用をすべきである。Northern Trust Co. v. Oxford Speaker Co., 109 Ill. App. 3d 443,440 N E.2d 968 (1st Dist. 1982)を参照。
  (4) いくつかの事案は、五―一一一条一項が外観上の瑕疵をカバーするものであると判示しており、それよりも多くの事案は、傍論でその旨を述べている。たとえば、次の事案参照。Philadelphia Gear Corp. v. Central Bank, 717 F.2d 230 (5th Cir. 1983); Pro-Fab, Inc. v. Vipa, Inc., 772 F.2d 847 (11th Cir. 1985).
(5) [書類の呈示人への]書類の返却の遅延およびこれと類似の場合には、五―一一一条一項の受益者の瑕疵担保責任を不公平に主張することから受益者を保護するものとして、権利放棄および禁反言の法理(waiver and estoppel doctrines)を使用することができる。

[28頁]瑕疵担保責任が、書類の外観上明らかな瑕疵に適用されることに反対する意見
  
(1) 五―一○九条(外観上の信用状条件の充足を点検すべき発行人の義務)、五―一一四条(書類がその外観上信用状条件を充足する場合の、発行人の支払うべき義務)、UCP一六条e項[一九八三年改訂版]および若干の事案、たとえば、Marino Indus. Corp. v. Chase Manhattan Bank, N.A., 686 F.2d 112 (2d Cir. 1982)([書類の呈示人に対し]通知のされない瑕疵を後日主張することに関する禁反言の準則)における準則は、書類点検の重要性を反映している。信用状の発行人または確認を加えた者(confirmers)(25)に[たとえば、呈示された書類に対し支払ったが、後日信用状発行依頼人に指摘されて書類を再点検したところ、信用状条件を充足しない書類上の瑕疵が発見されたので、受益者の瑕疵担保責任を追及するという]後知恵の便益(the benefits of hindsight)を許すような受益者の瑕疵担保責任であれば、書類を注意深く点検することについてのインセンティブを弱めることになるであろう。
  (2) 書類を注意深く点検すべき発行人または確認を加えた者の義務を強化する厳しい準則は、人によっては一方に片寄って厳しいと感じられる[書類の信用状条件との]厳格な充足の準則(the rule of strict compliance)
(26)とバランスをとることになり、議論の余地はあるものの、この準則をより好ましいものにするといってよい。
Paramount Export Co.v. Asia Trust Bank, Ltd., 193 Cal. App. 3d 1474, 238 Cal Rptr. 920 (1987)を参照
  (3) 信用状の発行人または確認を加えた者が自己の義務の履行を怠った場合に、同人に損害を転嫁することを許すような準則は、信用状に基づく支払いの終局性(the finality of payment)を揺るがすことになるであろう。

[29頁]瑕疵担保責任が、書類の外観上明らかではない瑕疵に適用されることに賛成する意見
  (1) 五―一一四条二項(27)においては、詐欺、書類の偽造等は、支払いについての単なる積極的抗弁(affirmative defenses)(28)ではない。したがって、このような瑕疵が存在しないことは、『信用状の必要としている条件が充足されている』ことの一例である。五―一一四条の公式注釈二は、詐欺、書類の偽造およびこれと類似の事由が未充足『(non-conformance)』の事項であり、信用状の発行人が、五―一一四条二項によれば瑕疵がある支払請求に応じた場合には、[信用状の発行依頼人である]顧客は、五―一一一条一項の受益者の瑕疵担保違反により受益者を訴えると述べている。
  (2) [詐欺、書類の偽造のような]隠れた瑕疵(hidden defects)に対する救済手段(remedy)が利用できることになれば、それは、差止命令を求める訴訟(an action for injunctive relief)に対する現実的な代案を提供することができる。
  (3) この争点について判断した数少ない事案は、五―一一一条一項の受益者の瑕疵担保責任が隠れた瑕疵をカバーすることに賛成している。たとえば、First Arlington Nat'l Bank v. Stathis, 115 Ill. App. 3d 403, 450 N.E.2d 833 (1st Dist. 1983)参照。

  瑕疵担保責任が、外観上明らかではない瑕疵に適用されることに反対する意見
  (1) 五―一一一条一項の文言は、詐欺、書類の偽造等が存在しないことが、「信用状の必要としている条件」とみなされるのかどうかについては明確ではない。 
  (2) 詐欺を行った受益者に対する財産回復(recovery)についての不法行為理論に照らせば、瑕疵担保責任理
[30頁]論が五―一一四条二項で定める瑕疵を取り扱うことは、不必要である。 

  調査特別専門委員会の意見
 瑕疵が受益者によって治癒できる(curable)もの[たとえば、商業送り状面の文言のタイプミス]であるときは、受益者の瑕疵担保責任に基づき請求する者は、禁反言の積極的抗弁に服することになるであろう。一方、瑕疵が治癒不能で、訴訟の他の要件が立証されたときには、買取人(purchaser)は、書類の瑕疵担保責任に基づき財産回復をすべきである。外観上の瑕疵についての担保責任は、五―一一二条で提案された自動排斥の準則(the rule of automatic preclusion)(29)に対する必要な釣り合いおもり(counterbalance)であり、その理由は、同条の検討において述べたとおりである(30)。この枠組みは、受益者に対する信用状の発行人または確認を加えた者による支払後の瑕疵担保責任訴訟の関連において、事実上、UCC第一編の禁反言、権利放棄および錯誤による支払いの法理を維持することになるであろうが、しかし、[書類の呈示人に対し]書類上の瑕疵を迅速に通知することなく支払いを拒絶した信用状の発行人または確認を加えた者に対しては、抗弁および瑕疵担保責任を否定することになるであろう。
 [書類の]外観上明らかな瑕疵について受益者の瑕疵担保責任を問うことができるとすることの主要な危険は、支払人に同人の[書類点検の]基準を緩めさせてしまうことである。五―一一二条に基づき提案された[支払いの]終局性(finality)についての準則によれば、所定の時間内に支払わない銀行は、いっさい[後になって書類上の]瑕疵を主張することを排斥されることになるであろう。支払いを行った銀行についていえば、受益者の瑕疵担保責任に基づく訴訟が可能となるであろう。
  調査特別専門委員会の委員の大部分は、五―一一一条一項の受益者の瑕疵担保責任が、書類の外観上明らかな
[31頁]瑕疵および外観上は明らかではない瑕疵の両方に適用されるものであり、また適用されるべきであると考えてきた。彼らは、受益者の瑕疵担保責任から生じた支払いの終局性の問題(the final payment problems)を次項の課題で提案された方法で取り扱うことになるであろう。他の者は、Philadelphia Gear Corp. v. Central Bank, 717 F.2d 230 (5th Cir. 1983)および Delta Brands, Inc. v. MBank Dallas, N.A.,719 S.W.2d 355 (Tex. Ct. App. 1986)における判断に反対する論評を加え、受益者の書類の外観からは明らかではない瑕疵に限って、受益者の瑕疵担保責任を適用するものとしている。」

 (2) 受益者の瑕疵担保責任の存続および範囲
 「
[第二五項目]課題b :[受益者の瑕疵担保責任の存続および範囲]
  五―一一一条一項の瑕疵担保責任は、信用状の発行人または確認を加えた者による不作為の支払拒絶または錯誤による支払い、もしくは買取銀行による買取りの後であっても存続するか。もし存続するとすれば、その瑕疵担保責任は、UCC第一編および[一九八三年改訂版]UCP一六条における権利放棄、追認、禁反言および排斥の諸法理によって十分な程度に制限されているか(Does the section 5-111(1) warranty survive dishonor by inaction or mistaken honor by an issuer or confirmer, or negotiation by a negotiating bank, and if so, is it sufficiently limited by doctrines of waiver, ratification, estoppel, and preclusion as found in U.C.C. Article 1 and U.C.P. Article 16?)。

  現行条文[改正前の条文]
  省略(前記1(1)のとおり)

[32頁]現行法
 
 五―一一一条一項は、受益者の瑕疵担保責任が買取りまたは支払いの後にどのような状況下で存続するかについては沈黙しており、また、仮にそれが存続するとした場合に、受益者の瑕疵担保責任が、[UCCの]一―一○三条に基づく権利放棄および禁反言のような法理により、どの程度まで制限されるのかについては、沈黙している。この論点は、[一九八三年改訂版]UCP一六条が、錯誤による支払いおよび不作為による支払拒絶の両方のケースに適用される絶対的排斥の準則(a rule of absolute preclusion)(31)を創設しているとみられる事実により、一層複雑化している。
  信用状に基づいて振り出された為替手形を買い取る当事者に関しては、買取銀行が、信用状の発行人から書類に外見上の瑕疵があると主張され、発行人から補償を受けることができなくなった後に、その買取銀行が受益者から買取金額を取り戻すことを認めることに賛成する次のような若干の先例がある。Northern Trust Co. v. Oxford Speaker Co.,109 Ill. App. 3d 433, 440 N.E.2d 968 (1982); First Nat'l City Bank v. Klatzer, 28 U.C.C. Rep. Serv. 497 (N.Y. Sup. Ct. 1979).[手形小切手等の流通証券に関するUCC第三編は、一九九○年に改正されたが、その改正前のUCC] 三―四一三条二項(振出人の契約)および三―四一四条一項(裏書人の契約)は、財産回復理論の代案として遡求を定めている。[一九八三年改訂版]UCP一○条の下では、買取銀行は、遡求権付きで書類を買い取る(to purchase documents with recourse)ものと解されている。
 遡求権または錯誤の法理と同様に、受益者の瑕疵担保責任を追及する権利の行使が、権利放棄および禁反言の積極的抗弁により制限されることおよび、遡求権の行使もまた、適時に行為することに服するとの主張に賛成する先例も存在する。Northern Trust Co. v. Oxford Speaker Co., 109 Ill. App. 3d 433, 440 N.E.2d 968 (1982)参照。

[33頁]検討
  瑕疵担保責任の存続について
  存続に賛成する意見

  (1) 五―一一一条一項がなんらかの意味をもつためには、受益者の瑕疵担保責任は、受益者に対する支払後にも存続しなければならない。存続しないと主張することは、五―一一一条一項を廃止することに等しい。本条は、これまで誤用されてはこなかったし、受益者の瑕疵担保違反による財産回復のための訴訟の関連において生じる立証責任、因果関係および損害の争点と同様に、権利放棄、禁反言およびUCPの排斥の法理の適用によって抑制されている。 

  存続に反対する意見
  (1) 支払後に[書類の]外見上の瑕疵に基づいてこの受益者の瑕疵担保責任を主張することは、五―一一二条の課題a(32)で述べた理由により信用状についてのより良い政策を反映している[一九八三年改訂版]UCP一六条の排斥の準則と調和しない。 

 権利放棄、禁反言および排斥による瑕疵担保責任の制限について
 支払後の瑕疵担保違反の訴訟に対する現行のUCCの積極的抗弁に基づき、受益者の権利を保持することに賛成する意見
  (1) 現行のUCCにおける権利放棄および禁反言の抗弁は、受益者の瑕疵担保責任についての訴訟の提起を、[34頁]錯誤による支払いがあり、かつ受益者に対しては重大な不利益がない場合に効果的に限定してきている。
  (2) 受益者は、[一九八三年改訂版]UCP一六条の排斥の準則に準拠して発行された信用状に基づき、[自己の権利を]主張することができる。 

  不作為により支払いを余儀なくされた信用状の発行人または信用状に確認を加えた者により瑕疵担保責任による請求がなされた場合に、権利放棄および禁反言の積極的抗弁に代えて[一九八三年改訂版]UCP一六条c項の自動排斥の準則を用いることに賛成する意見
  (1) 排斥の準則が、支払いに対する抗弁を阻却するときは常に、[支払拒絶の理由となった瑕疵と]同じ瑕疵に基づく受益者の瑕疵担保責任による請求もまた排斥されるべきである。
  (2) 錯誤による支払いは、不作為による支払拒絶から区別することができる。後者は、すべての場合に制裁を受けるべきである。錯誤による支払いは、[たとえば、その支払いを信頼して行動し(具体例を挙げれば、物品の仕入先に仕入代金を支払ってしまうこと)、不利益を被ったというような]不利益的信頼または他のエクイティ(detrimental reliance or other equity)を受益者が立証した場合に限って、制裁を受けるべきである。

  調査特別専門委員会の意見
 外観上明らかな瑕疵に関する受益者の瑕疵担保責任(五―一一一条、課題a)および抗弁の排斥(五―一一二条、課題a)についての調査特別専門委員会の意見に示されているとおり、調査特別専門委員会の委員の大半は、治癒可能な瑕疵、返却されない書類およびこれと類似の場合における受益者の瑕疵担保責任に基づく請求を制限する禁[35頁]反言の原則が利用できる限りは、五―一一一条一項の受益者の瑕疵担保責任を保持することに賛成である。彼らはまた、不作為により外観上[信用状条件を]未充足の書類の支払いを拒絶した信用状の発行人または確認を加えた者によってなされることのある、受益者の瑕疵担保責任に基づくいっさいの請求を自動的に排斥することにも賛成している。しかし、彼らは、外観上[信用状条件を]未充足の書類を錯誤により支払った信用状の発行人または確認を加えた者による、受益者の瑕疵担保違反に基づく請求を現在制限している権利放棄の準則に代えて、[UCPの規定するような]自動排斥の準則を用いることはしないであろう。つまり、彼らは、ここでは solve et repete (書類を受領したときは、まず支払い、後日物品の瑕疵担保違反に基づき請求せよ)の原則の適用に賛成しているのである。調査特別専門委員会の委員によっては、錯誤による支払いおよび不作為による支払拒絶の場合に同一の準則を適用することを好むであろうが、しかしながら、その準則が、自動排斥の準則であるべきか、それとも禁反言の準則であるべきかに関しては、意見を異にするであろう。いずれにしても、五―一一一条一項に基づく論点は、以下で論じられる五―一一二条に基づく論点と関連して検討されるべきであり、「支払いの終局性(final payment)」の問題を考慮に入れるべきである。
 [書類の]呈示または譲渡に際してなされる五―一一一条一項の受益者の瑕疵担保責任が、支払後または買取後にも存続するか否かという問題は、受益者の瑕疵担保責任が主張されるであろうほとんどの場面において、その永続性にとって根本的なものである。商事法に基づく一般的なアプローチは、売却された[手形、小切手等の]支払手段(item)(ただし、ここでは書類)の売りおよび買いに関連した瑕疵担保責任の創設を規定することであり、それが、売買の最終手続後にも存続することとするが、権利放棄および禁反言の原則ならびに[容易に]発見可能な瑕疵に関しての終局性(finality)によって制限されるものとすることである。UCC二―六○五条参照。受益者の瑕
[36頁]疵担保責任の存続は、このように、UCC五―一一一条と同様に五―一一二条に存在する終局性の問題(questions of finality)と密接に結びついているのである。信用状に基づく買取銀行による買取りは、買取人が遡求権を保持している点で、一般的には「終局的(final)」であるとは解されていないのであるから、終局性の問題のみで、買取後には受益者の瑕疵担保責任を存続させないものとすべきではない。信用状の確認および発行が、一層密接な問題を投げかけている。UCP、とりわけ一九八三年改訂版の一六条e項は、信用状の発行人および確認を加えた者に適用される終局性(finality)を是認しているが、しかし同項は、信用状の発行人または確認を加えた者による行為についての弾力的な『相応の時間(reasonable time)』との関係で是認しているのである。UCCは、終局性および受益者の瑕疵担保責任の存続についての論点に関しては、明確には述べていない。」

 

   改正後のアメリカ統一商事法典第五編における受益者の瑕疵担保責任        目次に戻る

1 改正後の条文および公式注釈(33)

 (1) 改正後の条文
 瑕疵担保責任に関する改正後の条文は、五―一一○条であり、これを翻訳すれば、以下のとおりである。
五―一一○条 瑕疵担保責任(Warranties)
 (a項) 受益者は、自己の呈示が支払われた場合には、次の瑕疵担保責任を負う。
  (1) 発行人、呈示のなされたその他のすべての者および発行依頼人に対しては、第五―一○九条a項に記述された性質をもつ詐欺または書類の偽造がないこと、および
  
[37頁](2) 発行依頼人に対しては、為替手形の振出しが、信用状を付加することによって強化することが発行依頼人と受益者により意図された、発行依頼人と受益者とのすべての合意またはその他のすべての合意に違反していないこと((a)If its presentation is honored, the beneficiary warrants: (1) to the issuer, any other person to whom presentation is made, and the applicant that there is no fraud or forgery of the kind described in Section 5-109(a); and (2) to the applicant that the drawing does not violate any agreement between the applicant and beneficiary or any other agreement intended by them to be augmented by the letter of credit.)。
 (b項) a項における瑕疵担保責任は、これらの諸編のいずれかの適用範囲となる書類の呈示または譲渡の故に、第三編、第四編、第七編および第八編に基づき生じる瑕疵担保責任に付加されたものである((b) The warranties in subsection (a) are in addition to warranties arising under Article 3, 4, 7, and 8 because of the presentation or transfer of documents covered by any of those articles.)。」

 (2) 改正後の公式注釈
 新しい公式注釈は、以下の訳文からもうかがわれるとおり、条文の趣旨をきわめて具体的に説明しており、適切なものと思われる。
 「1.a項における受益者の瑕疵担保責任は、信用状が支払われない限り、与えられないのであるから、本項に基づく受益者の瑕疵担保責任は、[信用状の]発行人による支払拒絶の抗弁となることができない。すべての抗弁は、[発行人の権利および義務について定めた]五―一○八条または、[詐欺および書類の偽造について定めた]五―一○九条に基づかなければならない。同時に、a項における受益者の瑕疵担保責任は、発行依頼人の[信用状の発行人に対する]補償義務を免除することもできないのである。
 
[38頁]2.五―一一○条a項二号における受益者の瑕疵担保責任は、信用状に基づく支払いが終局的であること(final)を想定している。それは、発行人に対しては及ばず、発行依頼人だけに及ぶのである。大部分の場合には、発行依頼人が原因契約違反による直接の訴訟原因を有する。この受益者の瑕疵担保責任は、発行依頼人が受益者との原因契約当事者ではないスタンドバイ信用状またはその他の状況に対して第一義的に適用がある。それは、書類の呈示に際してなされた陳述が真実である旨の受益者の瑕疵担保責任ではないし、書類が、[外観上信用状条件を厳格に充足する場合に支払うべき信用状の発行人の義務を定めた]五―一○八条a項に基づき厳格に[信用状条件を]充足している旨の受益者の瑕疵担保責任でもない。それは、原因となる合意に基づき受益者が支払いを受ける資格を得るために明示的・黙示的に必要なすべての行為を、受益者が履行したことの受益者の瑕疵担保責任なのである。たとえば、原因となる売買契約が、『適切な履行』がなされたときに限り、受益者が為替手形を振り出すことを認めている場合で、瑕疵のある物品を引き渡したことによりその原因契約に違反したにもかかわらず、受益者が為替手形を振り出したときには、同人振出しの為替手形を支払うことは、この受益者の瑕疵担保に違反することになるであろう。同様に、原因契約が、実際に不履行があり、または、受益者もしくは第三者により発行依頼人の不履行が認定された場合に限って、受益者が為替手形を振り出す権限を与えている場合であって、受益者がこの授権に反して為替手形を振り出したときは、同人振出しの為替手形を支払うと、この受益者の瑕疵担保に違反することになるであろう。このため、多くの場合は、発行人に呈示された書類は(引き渡された物品に関し、または不履行もしくは他の事項に関し)不正確な陳述を含むものであるが、受益者の瑕疵担保責任は、その陳述が真実でないからではなく、受益者による為替手形の振出しが、原因取引における明示のまたは黙示の義務に違反したために発生するのである。
 
[39頁]3.受益者の瑕疵担保違反による損害賠償額については、五―一一一条には規定されていない。裁判所は、第二編の[物品を受領した買主の売主に対する損害賠償請求について定めた]二―七一四条における損害賠償額のほか、第三編および第四編に基づく瑕疵担保責任の事案における損害賠償額を類推することができる。
  損害賠償額が、通常は為替手形の振出金額に等しい[書類が信用状条件を充足しているにもかかわらず、発行人がなす]不適切な支払拒絶(wrongful dishohor)の場合とは異なり、受益者の瑕疵担保違反に対する損害賠償額は、為替手形の振出金額を大幅に下回ることがしょっちゅうあり、時にはゼロであることもある。売主が、自己の売買契約を適切に履行したときに限り、為替手形の振出しを認められるとしよう。買主に損害賠償請求権は付与するが、物品の拒絶権を付与しない形で、売主が売買契約に違反するものとしよう。a項二号における瑕疵担保違反についての発行依頼人の取得する損害賠償額は、発行依頼人が売買契約違反により回復することができる損害賠償額に限定される。これとは別に、『債務不履行金額』についてのみ受益者が為替手形を振り出すことを認める旨の、原因となる合意があるとしよう。二○万米ドルの債務不履行があり、五○万米ドルの為替手形の振出しがあるとしよう。受益者の瑕疵担保違反の損害賠償額は、三○万米ドルが限度となるであろう。」

(3) 評価
 改正された条文は、「欠陥商品」ともいうべき旧条文を判例、学説、前記の調査特別専門委員会の報告書等を参考にし、UCCの他の条文との整合性をも念頭において、大幅に書き換えたものであり、合理的なものと評価することができる。新条文が、スタンドバイ信用状に関する訴訟が比較的多いことを考慮し、スタンドバイ信用状に対して十分な配慮をしていることも、見逃すことができない点である。
 また、新条文の公式注釈は、条文の趣旨を明確、具体的に説明しており、有益なものとして評価できる。 

[40頁]2 改正後の条文の意義(34)

 (1) 受益者の瑕疵担保責任の発生時期
 受益者の瑕疵担保責任について規定する新条文のa項は、受益者の瑕疵担保責任が、信用状に基づく「呈示(presentaion)」、すなわち、「信用状に基づく支払いまたは対価の支払いを受けるために、書類を発行人または指定された者に対して交付すること(五―一○二条a項一二号)」がなされ、これと引換えに「支払い(honor)」、つまり、「信用状に記載された、支払うことまたは対価の支払手段を交付することについての発行人の確約の履行(同条同項八号)」が行われた後に、初めて生じることを明らかにしている。なお、具体的には、この「支払い(honor)」は、一覧払信用状のときは、支払時に、引受信用状のときは、引受時に、また後日支払信用状のときには、後日支払債務の負担時に、それぞれ発生し、後二者については、満期における支払時にも生じる(同条同項八号)。
 これにより、たとえば、書類が外観上信用状条件を厳格に充足しないことの理由で、または裁判所による差止命令(injunction)のために、信用状による支払いが行われない場合には、本条における受益者の瑕疵担保責任も発生しないことになる。

 (2) 受益者の瑕疵担保責任の相手方および内容
 本条a項での受益者の瑕疵担保責任の相手方および責任の内容は、次の二つに分かれることが明記されている。 
@ 発行人、呈示のために書類を交付すべき相手である支払銀行、確認銀行等の「指定された者(五―一○二条一一号)」および発行依頼人に対しては、受益者は、「必要とされている書類が偽造され、または重大な詐欺によるものであり、もしくはその呈示と引換えに支払いに応じることが、発行人または発行依頼人に対する重大な詐欺を助長
[41頁]するような事態(五―一○九条a項)」が存在しないことを担保する。
A 発行依頼人に対しては、受益者は、上記@に加え、書類の呈示が、発行依頼人と受益者との原因契約の条件を充足してなされたことをも担保する。
 この受益者の瑕疵担保責任は、とくにスタンドバイ信用状取引において威力を発することが公式注釈2に述べられているが、前記二3でとりあげた合計一一の事案のうち、六つがスタンドバイ信用状に絡んだ事案であることからしても、意義のあることといえる。

 (3) 受益者の瑕疵担保責任の法的性質
 本条の規定は、強行規定か否かを定めた五―一○三条c項には強行規定として列挙されていないので、改正前の条文と同様、当事者の合意により変更ができる任意規定であり、改正後の条文における受益者の瑕疵担保責任は、制定法上の黙示の責任と解される。
 なお、受益者の瑕疵担保責任を原因とする訴訟は、新設された五―一一五条の出訴期限(statute of limitations)の規定により、信用状の有効期限から一年または訴訟原因の発生後一年のうち、いずれか遅いほうの期間内に提起すべきことになる。

(4) 実務への影響
 以上のことからすると、新条文の下では、呈示された書類が外観上信用状条件を厳格に充足しないにもかかわらず、支払いに応じてしまい、発行依頼人からも補償を受けられなくなった発行銀行、確認銀行およびその他の指定銀行は、本条による受益者の瑕疵担保責任を追及することができなくなるわけである
(35)
 また、受益者の瑕疵担保責任を追及しようとする発行銀行、確認銀行、その他の指定銀行および発行依頼人は、
[42頁]前に引用した五―一一○条a項における事項を立証しなければならない。もっとも、発行依頼人は、これによらずに、受益者との売買契約等の原因契約に基づいて、受益者の債務不履行責任を問うこともできるはずである。
 なお、前に検討した一部の判例でも指摘された、受益者の瑕疵担保責任を認めることは、信用状取引における独立抽象性を無視することに等しい旨の見解に対しては、いったん信用状に基づき支払いがなされた場合には、それにより信用状の目的が達成され、信用状取引が終了したのであるから、発行銀行・確認銀行・その他の指定銀行・発行依頼人が、書類の外観からは識別することのできない詐欺、書類の偽造等の実体的事由を立証して、受益者の責任を問うことは、一向に差し支えないことであり、むしろ合理的なことだと考えられる。
 ただし、詐欺的な行為をするような受益者(国際取引では、受益者は外国に所在することが普通)は、支払いを受けると直ちに姿をくらますことが通例であるから、本条の規定が実効性をもつかどうかは一概にはいえない。

 

       おわりに                               目次に戻る

 受益者の瑕疵担保責任の問題は、UCC第五編の改正作業において、最も議論の多かったテーマの一つであった。国際取引用の信用状を発行するアメリカの銀行は、ヨーロッパやアジアでは、信用状における受益者の瑕疵担保責任がなじみのないものであり、受益者の瑕疵担保責任の規定によってアメリカの銀行の信用状では支払いの確実性が危うくなるとの悪印象を与えることになり、アメリカの信用状の国際競争力が阻害されるとして、これを削除するよう主張したのに対し、信用状の発行依頼人側は、発行銀行に対して補償を行うのは発行依頼人であって、銀行ではないのであるから、発行依頼人は、不適切な手法で支払いを受けた受益者から金銭を取り戻す必要があるため、[43頁]受益者の瑕疵担保責任に関する規定の維持に賛成し、発行依頼人が、この規定の主要な受益者であることを強調した(36)
 いずれにせよ、曲折を経て成立したUCC五―一一○条a項における受益者の瑕疵担保責任についての規定は、これまでみてきたとおり、信用状に基づく支払いがなされた後に初めて生じること、この責任の内容として、書類の外観上信用状条件を充足しない瑕疵には及ばないこと、受益者が、発行依頼人に対し、売買契約等の原因契約の要件を充足していることを請け合うこと等を明確に定め、「欠陥商品」ともいうべき旧条文の規定から合理的・明確な規定へと大きく変身した。
 本条では、受益者の瑕疵担保の違反に伴う損害賠償額には触れておらず、救済(remedy)に関する五―一一一条にも明文規定はないが、前に引用した本条の公式注釈3を参照することにより、問題の正しい解決が図られるものと考えられる。
 結論としては、受益者の瑕疵担保責任に関する今後の訴訟においては、装いを新たにした本条の下で、統一的で合理的な判決が期待できるものと思われる。
 これにより、アメリカの各法域間における信用状の法の統一を目的としたUCC第五編の意図は、少なくともこの「受益者の瑕疵担保責任」に関しては、実現が見込まれるが、これについては、引き続き今後の展開を注意深く見守ることが必要である。

 

(1)「準則(rule)」は、「principle(原則)、doctrine(法理、理論)、policy(法の目的)などと異なり、具体性が高く、それぞれの法律問題の解決にそのまま役立つような基準を指す」(田中英夫編集代表『英米法辞典』東京大学出版会(一九九一年)。
(2) 改正前のUCC(統一商事法典)五―一一二条では、UCP一四条e項に匹敵する厳しい規定は設けられておらず(たとえば、信用状の発行銀行は、信用状条件を充足しないとして最初にあげた書類の拒絶理由としての瑕疵に、後日別の瑕疵を加えるこ[44頁]とができた)、発行銀行がUCPと同じように書類の拒絶の権利を失うのは、発行銀行が受益者に対し迅速に拒絶の通知を行わなかったので、受益者が、発行銀行により無事に支払いがなされたものと考え、商品の仕入先に代金を支払ったというような不利益的信頼(detrimental reliance)、禁反言(estoppel)等を受益者が立証した場合に限られるとするのが判例の大勢であった。この意味では、旧UCCでは、発行銀行の書類拒絶権は、「自動的(automatic)」または「絶対的(absolute)」に「排斥(preclusion)」されていたわけではなかったのである。しかし、改正後のUCC五―一○八条c項でUCPと同趣旨の規定を導入し、the rule of automatic(absolute) preclusionが確立することになった(後掲注(4)の拙稿参照)。
(3) UNIFORM COMMERCIAL CODE 1995 OFFICIAL TEXT (14th ed. 1996).
(4)UCC第五編(信用状)の改正については、拙稿「改正されたアメリカ統一商事法典第五編(信用状)の概要」ジュリスト一一二五号八六頁(一九九七年)参照。なお、改正後のUCC第五編の条文で、UCPの条文と同じ事項を取り扱ったものは、UCPの条文と同じになるよう努力が払われている。
(5) 「特集 輸出取引約定書ひな型の制定とその実務」金融法務事情一○二四号二頁以下(一九八三年)参照。
(6) 拙稿「荷為替信用状取引における買取依頼人の瑕疵担保責任(warranty)」金融法務事情一二二二号六頁(一九八九年)は、私が銀行で実務を担当していた当時、同約定書のこの条文と改正前のUCCの受益者の瑕疵担保責任の規定の文言上の類似性に興味を抱き、確認銀行が受益者から支払金額を取り戻したアメリカの事案 Delta Brands, Inc. v. MBank, N.A.,719 S.W.2d 355(Tex. Ct. App. 1986)(後掲)をとりあげたものである。
(7) UNIFORM COMMERCIAL CODE 1990 OFFICIAL TEXT (12th ed. 1991).
(8) 改正前のUCC五―一○三条一項g号では、信用状の発行を取引銀行等に依頼する者を「顧客(customer)」と称していたが、改正後のUCC五―一○二条a項二号で「発行依頼人(applicant)」の語を用いることになり、UCPと同一歩調をとることになった。
(9) 改正前のUCC五―一一四条については、拙稿「アメリカにおける信用状の差止命令(injunction)」金融法務事情一○八八号四八頁、五七頁(一九八五年)参照。
(10) このグループに属する他の事案としては、荷為替信用状およびそれに基づくback-to-back letter of creditに関連したPro-Fab, Inc. v. Vipa, Inc., 772 F.2d 847(11th Cir. 1985)がある。なお、この事案は、ジョージア州における訴訟原因[45頁]となる詐欺の要素として五つを明示している(Id. at 851)。
(11) John F. Dolan, Letters of Credit, Article 5 Warranties, Fraud, and the Beneficiary's Certificate, 41 BUS. LAW. 347 (1987)は、受益者の瑕疵担保責任が書類の外観上明らかな瑕疵(patent defects)にも及ぶものとすれば、信用状の発行銀行は書類の点検義務を負わないことと同じになるとして、Philadelphia Gearの事案を批判するとともに、受益者の瑕疵担保責任は、隠れた瑕疵(latent defects)のみを担保するものだとしている(Id. at 351)。また、信用状の発行依頼人が受益者のコモン・ロー上の詐欺(Dolanは、その構成要件は五つあるとする)を立証することは容易ではないが、受益者の瑕疵担保違反を立証することは比較的容易であるとしている(Id. at 358)。
 なお、荷為替信用状に関連したHyosung America, Inc. v. Sumagh Textile Co., Ltd., 934 F.Supp. 570 (S.D.N.Y. 1996)は、ニューヨーク州におけるコモンロー上の詐欺の構成要件として、これと類似の内容をもつ五項目をあげている(Id. at 578)。
(12) 前掲注(1)
(13) 前掲注(6)の拙稿は、この事案を詳細に扱ったものである。
(14) Henry Harfieldは、ニューヨーク州のUCC五―一一一条のpractice commentaryにおいて、「受益者の黙示の担保責任は、信用状に記載された条件と同様に、商取引上の条件に対しても関係すると判示されることになるであろう(......the implied warranty may well be held to relate to mercantile conditions as well as to those specified in the letter of credit.)。」として、同条文の解釈上、このグループに属する事案が生まれることを、すでに一九六四年の時点で示唆していた(THE CONNSOLIDATED LAWS OF NEW YORK ANNOTATED,BOOK 62 1/2 Part 2 at 677(1964))。
(15) Dolan(前掲注(11))によれば、受益者の瑕疵担保責任は、呈示された書類が外観上信用状条件を充足することには及ばず、書類の外観上からは明らかではない瑕疵(latent defects)に対してのみ及ぶものであるとしている。
(16) Dolanの見解(前掲注(11))は、このグループに区分けすることができる。その他の事案としては、スタンドバイ信用状に関するPubali Bank v. City National Bank, 672 F.2d 1326 (9th Cir. 1982)および、これもスタンドバイ信用状に絡んだBrown v. United States National Bank of Omaha, 371 N.W.2d 692 (Neb. 1985)がある。
(17) 債権者による弁済期繰り上げ宣言(declaration of acceleration of payments)を不要とする仕組みの原因契約に基づくスタンドバイ信用状に関する事案としては、Philips College, Inc. v. Riley, 844 F. Supp. 808 (D.D.C. 1994)がある。こ[46頁]の事案では、受益者は、この宣言を要しない形での契約を締結し、発行依頼人の不履行が発生したので、スタンドバイ信用状により発行銀行から約二百万米ドルの支払いを受けたが、受益者は、そのような原因契約のおかげで、Mellon Bankにおけるような事態を回避することに成功している。
 銀行が原則として、附従性のある伝統的な保証状を発行することができないというアメリカにおけるno-guaranty ruleの下で、アメリカの銀行は、法律的な性質は異なるが、経済的には伝統的な保証状と同じ機能をもつスタンドバイ信用状を発行することにより、顧客のニーズに応えるとともに、伝統的な保証状を発行するボンド会社に業務上対抗してきたわけである。
 スタンドバイ信用状は、本文中の事案でも引用したように、受益者が、為替手形および債務者が不履行となった旨の受益者による陳述書を呈示することにより、この信用状を発行した銀行等から支払いを受けることができる仕組みになっていることが普通であるため、受益者による不当な支払請求がなされることがあり、このためにスタンドバイ信用状が、「自殺信用状(suicide letter of credit)」と呼ばれることもある。
 一九七○年代からヨーロッパの銀行が発行ししている「請求払(無因)保証状(demand guarantee)」は、その標題に保証状という語が用いられてはいるが、伝統的な保証状とは異なり、附従性をもたない、いわば、ヨーロッパ・ブランドのスタンドバイ信用状である。
 国際商業会議所(ICC)は、スタンドバイ信用状は明示的にUCPの適用範囲内であるが(UCP一条)、demand guaranteeが通常はUCPの適用外であるところから、demand guaranteeを規制するものとして、一九九二年に「請求払保証に関する統一規則(URDG)(ICC Publication No.458)」を制定した(これに関連した日本の銀行の対応等については、拙稿「請求払無因保証取引約定書試案の制定について」ジュリスト一○五六号一○五頁(一九九四年)およびそこで引用された文献参照)。
 なお、一九九五年一二月には、国際連合国際商取引法委員会(UNCITRAL)により「独立保証状およびスタンドバイ信用状に関する条約(United Nations Convention on Independent Guarantees and Standby Letters of Credit)」が制定され、またこれとの関連で国際商業会議所が、スタンドバイ信用状のみに関する統一規則の制定に向けて作業中であるので、スタンドバイ信用状を巡る今後の国際的な動向が注目される。
(18) このような内容の信用状の条件とは、たとえば、「確かに受益者が約定品を船積みしたこと」を条件とすることである。  
(19) この種の信用状は、書類の形式審査(たとえば、約定品が船積みされたことを示す船荷証券の形式上の審査をすること)によ[47頁]るのではなく、書類の実質審査(船積みされた物品が、確かに約定品であることを実際に調査すること)を意図することに他ならないから、たとえ「信用状」という標題が付されていても、それは、実質上は伝統的な「保証状」である。
(20) GRANT GILMORE & CHARLES L. BLACK, Jr., THE LAW OF ADMIRALTY 117―18 (2nd ed. 1975)およびKazuaki Sono, Why Not Uniform Commercial Code Article 5?:Some Aspects of Fundamental Principles of Letter of Credit, 4&5 THE LAW REVIEW OF KANSAI UNIVERSITY 881, 910―16 (1963)ならびに前掲注(9)拙稿五七頁参照。  
(21) An Examination of U.C.C. Article 5 (Letters of Credit) by The Task Force on the Study of U.C.C. Article 5 (James E. Byrne chair. Sept. 29, 1989), 45 BUS. LAW. 1521 (1990).
(22) この報告書のうち、信用状のサイレント・コンファメーションに関するものを紹介したものとしては、拙稿「信用状のサイレント・コンファメーション(silent confirmation)の法的問題と銀行実務上の留意点(中)」金融法務事情一四八九号二六頁(一九九七年)がある。
(23) Note (21), supra, at 1590―99.
(24) 改正前のUCC五―一○三条一項c号は、信用状を発行する者を、UCPとは異なり、銀行に限定せず、誰でもよいとしているので、「発行銀行(issuing bank)」とはせずに、「発行人(issuer)」とした。これは、改正後のUCC五―一○二条a項九号にも受け継がれている(ただし、消費者としての個人は、信用状の発行人にはなることができないことになっている)。
(25) 改正前のUCCでは、銀行以外の者も信用状に確認を加えることができるので、「確認銀行(confirming bank)」といわずに、「確認を加えた者(confirmer)」という用語を用いる。このことは、改正後にも維持され、具体的には、改正後のUCC五―一○二条a項四号において明らかにされている。
(26) 「厳格な充足の準則」については、拙稿「書類が信用状条件を充足しているかどうかの判断基準に関する準則―アメリカ法の考え方―」手形研究四四六号四頁(一九九○年)およびそこで引用された文献参照。
(27) 前掲注(9)
(28) 「積極的抗弁(affirmative defense)」とは、「訴訟において請求を根拠づけるために主張されている事実を前提としたうえで、新たな事実を主張して請求を理由づけること。通例、新事実の主張者側にburden of proof(証明責任)がある。」田中英夫編集代表『英米法辞典』東京大学出版会(一九九一年)。
[48頁](29) 前掲注(2)参照。
(30) 調査特別専門委員会の本報告書の一五九九頁から一六○三頁において、改正前のUCC五―一一二条の規定を、UCP一四条e項の規定と同じように、「自動排斥の準則(the rule of automatic preclusion)」を明記したものに変更すべきか否かという問題が検討されている。ただし、本稿では、これには触れない。
(31) 前掲注(2)参照。
(32) 前掲注(30)参照。本稿では、この問題には立ち入らない。
(33) Note (3), supra.
(34) これについては、JOHN F. DOLAN, THE LAW OF LETTERS OF CREDIT, Commercial and Standby Credits, 6-77―6-92 (revised ed. 1996)およびJAMES J. WHITE & ROBERT S. SUMMERS, UNIFORM COMMERCIAL CODE, Pracitioner Treatise Series, Volume 3 at 161―65 (4th ed. 1995)ならびにGerald T. McLaughlin & Paul S. Turner, A Walk Through the New UCC Article 5: The Warranty Provisions, Section 5-110, THE LETTERS OF CREDIT REP. 1 (July/Aug. 1996)を参照した。
(35) この場合には、発行銀行、確認銀行およびその他の指定銀行は、改正されたUCC五―一一七条における代位(subrogation)によることができる。なお、代位に関する条文は、第五編の改正に伴い新設されたものである。
(36) WHITE & SUMMERS, note (34), supra, at 163.

 

(本稿は、(財)全国銀行学術研究振興財団の一九九七年度研究助成による研究成果の一部である。)

 

 

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  における受益者の瑕疵担保責任(warranty)―飯田勝人― 』の目次に戻る

 

 

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