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2013年01月31日
建築家・東京大学名誉教授の内藤廣氏にNarasia特別講義でご講演いただきました。

内藤廣氏.jpgのサムネール画像

1月25日(金)、学園前キャンパスで、「日本と東アジアの未来を考える委員会 NARASIA特別講義」を開催し、建築家で東京大学名誉教授の内藤廣氏に「住環境の変化と住生活の変化 ~これからの住まいと住宅設計を考える~」のテーマでご講演いただきました。

NARASIA(ならじあ)とは、NARAとASIAを組み合わせた造語で、奈良と日本、そしてアジアを重ねていくためのキーワードです。同委員会は、平城京誕生から1300年の節目に向けて、これからの100年を見通した日本と東アジアの進むべき道を構想するために、平成21年に設立されたものです。

東京大学の最終講義が、東日本大震災の当日であったという劇的な体験をされた講師の内藤廣氏。主な建築作品は、海の博物館、安曇野ちひろ美術館、牧野富太郎記念館、ちひろ美術館・東京、島根県芸術文化センター、日向市駅、高知駅、虎屋京都店、旭川駅など。数々の建築に関する賞を受賞されるという華やかなご経歴に加え、2007年から2009年にかけては、「グッドデザイン賞」の審査委員長を務められていました。現在は、国土交通省東日本大震災復興都市デザイン検討会委員、岩手県津波防災技術専門委員会委員として、東日本大震災の復興に尽力されています。

今回のご講演の中では、テーマである「これからの住まいと住宅設計」に寄せて、「東日本大震災被災地の復興」、そして「人、暮らし、街、環境、自然、生命」、「家族」を中心に話を展開され、本学からは100名を超える居住空間デザイン学科の学生らが聴講しました。

内藤氏は、「被災地である東北には、防潮堤をはじめとする、都市、土木などの関連性を総合的に考えられる人材が不足しており、復興の遅延は行政や産業界の縦割りの弊害による影響が大きい」と語られました。その上で、この分野におけるアカデミズムの協働の必要性についても触れられました。なかでも、福島原発の予備電源が海側に置かれていたことを例として挙げられ、「建築の常識からはあり得ない話で、システム設計のみを考えていたために招いた悲劇」であると説明。そういった事態を避けるためにも、同氏はそれぞれの学問領域のあり方を見直すべく、関係者と議論を重ねているそうです。

また、大震災で明らかになったのは、この半世紀で作り上げてきた社会システムが機能不全に陥っているということであると分析され、それゆえに、新しい価値を生み出すためには、パラダイムシフトをさせる必要があると強調されました。

具体的には、「親子や夫婦とは異なり、権利上は実は何も保証されていない『家族』は、『家』が支えているという幻想によって成り立っていたが、それらが震災によって失われた今、新しい『コミュニティ(住まい・場)、まち、家族』というものを、我々は意識的に作り上げていかなくてはならないのではないか」との認識を示され、これからのまちづくりには、人々が集い暮らすこと、公共のありようを考え、コミュニティや人とのかかわりと、その場所で暮らす人々がどのような時間を過ごしたいと思っているのかがポイントになってくると指摘されました。

Narasia特別講義.jpg

同氏は、何もかもが流されてしまった岩手・陸前高田には、生と死、人と自然、すべてが存在すると、語ります。そして、「だからこそ、若い人にはできるだけ震災の現場に行ってもらいたい」と強く訴えられました。更地に還ってしまったあの土地を見て、「そこで何かを感じてほしい。そしてその感じたことを未来に生かしてほしい」と被災地の人々は強く思っているのだと、かの地の人々の声を代弁される言葉の端々から、復興にかける同氏の想いがあふれているように感じました。

そして、ご講演の最後には、「それぞれが歴史的な時間を生きているのだということを感じてほしい。そしていろいろなことを学び、新しい価値は自らの手で作るのだということを心がけてほしい」と本学の学生に向けて熱いメッセージを頂きました。

内藤氏のお話は、建築士や人々の住まいに関わる分野を志す、居住空間デザイン学科の学生に、強い印象を残したことと思います。

「新しい価値」を自らの手で生み出すべく、学生には今この瞬間を大切にしてほしいと、心より願います。