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2015年02月05日|文学部ニュース
【日本文化学科】学生による教員インタビュー─杉﨑貴英准教授に聞く─


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今年度より日本文化学科の専任教員として着任した杉﨑貴英准教授(美術史)に、学生がインタビューしました。インタビュアーを務めたのは、杉﨑先生の文献演習を受けている、日本文化学科2年の沢本彩果さんです。

─お仕事は研究室でされることが多いですか。

杉﨑:そうですね。専門の本もできるだけ研究室に持ち込んであるもので。こないだは、大学を出る最終のバスに乗り遅れてしまい、大慌てでした(笑)。

─先生の研究室の本棚には、展覧会カタログがたくさんありますね。

杉﨑:これらは大切ですよ。展覧会カタログは本屋さんでは販売されませんから、図書館にはなかなか入ってこないのです。学生時代に買っておいたカタログが、ずっと後になって役に立つこともよくありますね。

─私も高校のときに買ったカタログを見て、「この展覧会に行ったな」と思い出しています。

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杉﨑:いいですね。とくに高校や大学の時に観た記憶というのは、鮮明に残っていくことでしょう。たとえ薄れていったとしても、作品に出会った印象は残っていくものです。再会したときに「これは前に観たことがある」というように記憶がよみがえってきます。

 

─私は再会というのはまだないですが、「これ、教科書で見たことある」と思うことはよくあります。

杉﨑:それもうれしいでしょうね。

─うれしいです。「テレビに出ていた、あれだ!」と感動したりします。

杉﨑:本物に出会えた時、「あっ、これ、あれだ!」(笑)という感激がわいてくるというのは、美術を学ぶ喜びの一つですね。いろいろな作品を知れば知るほど、そういう感動の種が増えていくわけですから。

─先生はいつ頃から日本美術に関心を持たれたのですか。

杉﨑:よく覚えていませんが、中学生ぐらいからでしょうか。私は伊豆出身なので、大学生になって京都に来てから、寺院や展覧会を盛んに見て回るようになりました。

─大学はどのように決められたのですか。

杉﨑:奈良に近い大学に行きたいということと、日本史と美術と民俗学が全て勉強できるところがあるといいなと思って探しました。何となくですが文献だけ、美術だけではなくて、いろいろな角度から学びたいと思っていたのです。ところが入学してみてわかったのは、民俗学の授業は一科目だけで、ゼミはなかったのです。ある先生が言うには「ずっと前には、うちにも民俗学が専門の先生がおられたんだ。帝塚山の赤田光男先生(本学名誉教授)って知ってる?そのゼミのご出身なんだよ」。

もし当時の自分が帝塚山大学の日本文化学科を知ったら、大いに魅力を感じたかもしれません。一つの学科の中で、日本文化をこれほど多角的に学べるというところは、他にはなかなかないでしょう。日本史も美術史も民俗学も、それから古典文学や近現代文学も勉強できるのですから。

─大学時代の勉強はどうでしたか。

杉﨑:2、3回生の頃は、教職課程や博物館学芸員課程の授業に追われていました。優先せざるをえない科目が同じ時間割にぶつかって、関心がある授業がとれなくなったりして、欲求不満がたまっていましたね(笑)。それで、博物館や美術館の公開講座を聴きにいくのが楽しみになったのです。2回生の時には正倉院展の期間中、当時は奈良国立博物館におられた関根俊一先生(本学名誉教授)のお話を聴いたこともあったんですよ。帝塚山大学との縁を感じますね。

最近になって思うのですが、展覧会をじっくり見るというのは、一冊の本を読むのと似たような、いやそれ以上の価値があります。展示の構成にはストーリーがあって、そのなかで本物を見ることができるのですから。学生の頃はたいして本を読みませんでしたけれど、展覧会を見て、そのカタログを何度もひもとくことで、専門書を読むような効果があったのかもしれません。

─学生で展覧会を観て、カタログまで買うのは金銭的に大変ではなかったですか。私はよほどこれはと思ったとき以外は、泣く泣くカタログをあきらめて帰ることが多いです。

杉﨑:下宿代が安かったとはいえ、よくやっていけたものです。京田辺に下宿していた頃は、電車代を惜しんで奈良まで自転車で行くこともよくありましたけれど。とにかく本物をすぐ見に行ける環境で、大学時代を過ごせたことはよかったですね。

今まで観た展覧会の中で、印象に残っているものはありますか?

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─高校のときに観た「長谷川等伯」の展覧会(2010年4月・京都国立博物館)です。とても感動して、お財布と相談しながらカタログも買いました。

杉﨑:長谷川等伯展を観に行ったんですか!あのカタログ、高校生には高い買い物だったと思うけれど、ずっと大切にするといいですよ。

─先生は学芸員もなさっていたそうですが、どのような展覧会を担当されたのでしょうか。

杉﨑:美術館を離れてから10年以上もたってしまいましたが、最近では、富山県の立山博物館から企画展委員を委嘱され、「立山と帝釈天」という展覧会に関わることができました。

主人公にすえたのは、「銅造男神立像」という名前で、重要文化財になっている作品(立山博物館所蔵)です。鎌倉時代につくられたこの作品をとらえ直していき、失われた持ち物を復元し、本来は帝釈天という仏教の天部の像だったことを明らかにしました。コンビを組んだ学芸員は宗教民俗学がご専門で、そういう方と一緒に展覧会をつくるチャンスそのものが喜びでした。展示の構想からはじまって、開幕前夜の展示設営まで、協力しながらさまざまに工夫するのは、たいへんななかにも楽しかったです。

─カタログの印象は、写真一枚でもがらっと変わってしまいそうです。

杉﨑:そうですね。展示のストーリーをできるだけ効果的に伝えようと、写真をどんな大きさで、どんな順序で載せるかなども考えました。さらに展示室では、そのストーリーをいかに立体的に表現するかということが、課題になります。展示というのは、論文とは違ったかたちでの、研究成果のアウトプットなのだということを改めて感じました。

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本学の日本文化学科では、卒業研究として仮想の展覧会を企画し、立体模型まで作りあげた学生があったそうですね。国宝の鳥獣戯画の模写にとりくんだ学生もあったと聞きます。論文にこだわらないアウトプットが卒業研究で認められているのも、たまらなくいいなと思います。

─日本画を模写したことがあるのですが、「どうやったらこの色が出るんだろう」と苦労しました。

杉﨑:模写にとりくむ時は、対象の作品をじっくり観察するでしょう。やはり模写という学習の意味は大きいと思います。授業で模写や写仏をするのも面白いかもしれませんね。また、展覧会を何人かで観に行ったなら、作品の前で言葉を交わすといいですね。まなざしを補い合って見落としに気づかされたりもします。そして、言葉とともに作品の印象が記憶に定着していきますから。

─先生に解説してもらいながら観ると、「そうなんだ」と記憶に残ります。

杉﨑:学外実習やゼミでは、そうやって、言葉を交わしながら観るということを実践していけたらと思います。奈良は奥深いです。観光地になっているところ以外にも、たくさんの文化財が残されています。ですから展覧会だけではなく、ガラスケースを隔てずに文化財を見るという機会も、これから多くもつことができたらと考えています。